Neetel Inside 文芸新都
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信じること、逆らうこと
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「王太子さま?」
 少し時間が経ってから、ぼくはようやく自分が話しかけられていることに気が付いた。
「ん?どうしたの?」
「いえ、何かお考えですか?」
「うん、ちょっとね」
「もしかして、例の件ですか?」
「……」
 ぼくは黙ってしまった。その通りだったからだ。
「教会のことは教皇が考えることです。王太子さまはあまりお気になさらない方が……」
「分かってるよ、右大臣。でも、ぼくは将来この国を担うんだ。考えておかないといけない」
 ぼくの言葉に、右大臣は顔をしかめた。そして、ゆっくりと近づいて来て、怖い顔で「王太子さま」と言った。
「残念ながら現在、我が国において王族の持つ力は教会よりも劣っています。滅多なことはなさらない方が身の為です。さもなくば……」
「王太子さまは王さまになれなくなりますよ」
「分かってるよ」
 こんなことを君に言われることが、王族の力が弱まっている証拠だね。
「それでは、失礼します」
 右大臣はにっこりと笑い、ぼくの部屋から出て行った。

 ぼくはここレデリ王国の王太子だ。レデリ王国は絶対王政を敷いているんだけど、最近は教会の力が強くなっている。これは隣の国と長いこと戦争をしているせいなんだ。戦争をすると、国は疲れてしまう。その疲れを少しでも癒すために、ぼくの父である今の王さまは宗教の力を使った。
 でも、それは間違いの始まりだったのかもしれない。ぼくの国は結構長い歴史を持っているんだけど、不思議とあんまり宗教が育たなかった。だから、王さまはよその大陸から宗教を輸入したんだ。この宗教はモト教っていうんだけど、とっても分かりやすくて、みんなの不安を紛らわせるのにぴったりの教えだった。だから、モト教はあっという間に広まった。宗教が広まると、その宗教を司っている教会はどんどん力を持っていく。
 ……そうなんだ、ぼくの国では王さまより教皇の方が強くなってしまったんだ。今や国民は、王族の命令より教会の命令を聞くようになった。もし、教皇がクーデターを起こすと宣言したら、国民は喜んでぼくたちを殺しに来るだろうね。だから、王さまは教会に逆らえなくなっちゃった。もはや、王族は、教会のいいなり成り下がった。

 窓から見える王立広場は、この国で最も賑わっている場所だ。かつては、黒を基調とした王国旗がそこら中ではためていた。でも、今見えるのはモト教のシンボルマークが記された白い旗だけだ。
 この国の未来は、どうなるんだろう。そんなことを考えると、溜息が出てしまう。王太子として、ぼくは何をするべきなんだろう。

       

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