Neetel Inside ニートノベル
表紙

見開き   最大化      

『遊戯王M 第十話』

「ところで、おまえの方は調子はどうだ?」
 俺はいつの間にかデュエルを見ていた遊参に尋ねた。
「お陰様で、何とか今まで連戦連勝です。ただ……」
「ただ?」
 そこまで言いかけて、遊参の表情が曇った。しかし、その続きが遊参の口から発せられる前に邪魔が入った。
「や! こんにちは! 一緒に、やってみようよ☆」
「何だ、この気持ち悪い道化師は……」
「大会の参加者でしょうか……」
「ド○ルドはデェエルに夢中なんだ☆ 一緒に、やってみようよ☆」
「何か、いちいちイライラする野郎だな……いいぜ! 俺が相手になってやる!」
 俺がデュエルディスクを構えると、遊参がそれを制した。
「待って下さい、遊鎧さんは今デュエルをしていたばかりです。相手に戦法がバレている可能性もある。セカンドステージは同じ相手と何度も戦う可能性がありますから、いずれ戦法がバレる可能性はありますが、今は控えた方がいいでしょう……。ここは、僭越ながら僕が相手をします」
「おまえが? 大丈夫なのか? こいつ、ちょっとヤバそうな相手だけど……?」
 俺は心配するが、遊参はにっと笑って答えた。
「大丈夫ですよ。僕だって、ここまで自力で勝ち残ってきたデュエリストです。さぁ、僕が相手になります」
「ゴ-☆アクティブ!」
「「デュエル!」」

遊参 LP:4000 VS 道化師 LP:4000

(遊参のタクティクスは俺も知らねぇ……。一体どんなデッキなんだ……?)
「僕の先攻! ドロー! 僕はモンスターをセット、そしてカードを1枚セットしてターンエンドです!」
(裏守備でセットして終わり……? 随分ゆっくりしたデュエルだな……)

「いくよ。うーん。コレか?」

『バンズ・ウォリアー』☆4 ATK:2000/DEF:0

「“コレか?”じゃねぇよ! ちゃんと宣言しやがれ!」
「仕方ないなぁ。ド○ルドは『バンズ・ウォリアー』を召喚。そして手札から『フィッシュ・オブ・パティ』を装備するよ」

『フィッシュ・オブ・パティ』☆4 ATK:0/DEF:2000

「このカードは自分フィールド上の『バンズ』と名の付いたモンスターに装備できるんだ。このカードが装備されたモンスターのレベルは、このカードのレベル分だけ上がるよ。そして、『バンズ・ウォリアー』をリリース。『パティ』と名の付いたモンスターが装備された『バンズ』と名の付いたカードをリリースすることで、自分のデッキからレベルの同じ『ハンバーガー』と名の付いたモンスターを特殊召喚できるんだ! ド○ルドは『ハンバーガー・オブ・チーズ』を特殊召喚」

『ハンバーガー・オブ・チーズ』☆8 ATK:2300/DEF:1800

「そして手札から魔法カード『バーガー解体』を発動するよ。自分の場の『ハンバーガー』と名の付いたモンスターを選択して、デッキからレベルの合計が同じになるように『バンズ』と『パティ』を墓地に送るのさ! 『バンズ・ウィザード』と『ビーフ・オブ・パティ』を墓地に」

『バンズ・ウィザード』☆4 ATK:0/DEF:2200
『ビーフ・オブ・パティ』☆4 ATK:1900/DEF:1300

(墓地を肥やしてやがる……アレは警戒した方がいいだろうな……)
「行くよ、バトルフェイズ。『ハンバーガー・オブ・チーズ』で裏守備モンスターを攻撃するよ」
「リバース! 僕のカードは『PK(ピースキーパー)-エンジェル』!」

『ハンバーガー・オブ・チーズ』ATK:2300 VS 『PK-エンジェル』DEF:1800

「つい、やっちゃうんだ☆」
「『PK-エンジェル』の効果を発動! このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた時、デッキから『PK』と名の付いたモンスターを1体墓地へ送ることで、手札から『PK』と名の付いたモンスターを特殊召喚する! 僕は手札から『PK-セイント』を特殊召喚!」

『PK-セイント』☆2 ATK:0/DEF:1600

「うーん……。ターンエンドかな?」

「僕のターン、ドロー! モンスターを裏守備でセット。そしてバトルフェイズ。『PK-セイント』で『ハンバーガー・オブ・チーズ』に攻撃!」
「攻撃力の低いモンスターで攻撃? 自爆特攻か!?」
「攻撃宣言時、罠カード発動! 『平和の代償』! このターン、戦闘によるダメージを0にする代わりに、手札とデッキからレベルの合計が8になるようにモンスターを墓地に送る! その後、墓地のモンスターをレベルの合計が6になるように除外する! 僕は4体のモンスターを墓地へ。その後、3体のモンスターを除外! そしてダメージ計算後、戦闘によって破壊された『PK-セイント』の効果を発動! 墓地の『PK』と名の付いたモンスターを特殊召喚し、デッキから『PK』を墓地に送る! 僕は『PK-シャイニング』を特殊召喚……ぐっ……!」

『PK-シャイニング』☆2 ATK:700/DEF:100

「おい! 遊参! 大丈夫か!? どうした!?」
「だ、大丈夫です……。僕はカードを1枚セットしてターンエンド……!」
(このデュエルからおかしな力は感じられねぇ……遊参、一体どうしたんだ……?)

「ド○ルドのターン、ドロー。ド○ルドは『バンズ・アーチャー』を召喚」

『バンズ・アーチャー』☆4 ATK:800/DEF:1200

「そして手札の『ポーク・オブ・パティ』を装備するよ」

『ポーク・オブ・パティ』☆4 ATK:1200/DEF1200

「そして『パティ』が装備された『バンズ』をリリースして、デッキから『ハンバーガー・オブ・テリヤキ』を特殊召喚」

『ハンバーガー・オブ・テリヤキ』☆8 ATK:2200/DEF:2400

「手札に2種類のカードが揃ってれば、デッキからレベル8モンスターがポンと飛んできやがる……恐ろしいけど、その代わりステータスは低めみたいだな……」
「レベル8のモンスター2体でオーバーレイ! ヘッハッハッハッ! エクシーズ召喚! 『MNo.12 猛獲竜 ハンター』!」

『MNo.12 猛獲竜ハンター』★8 ATK:3000/DEF:0

「いくよ、バトルフェイズ。『ハンター』で裏守備モンスターを攻撃するよ。『ハンター』が裏守備モンスターを攻撃する時、ダメージ計算を行わずにそのモンスターを破壊するんだ☆ そして、破壊したモンスターは墓地で効果を発動できないんだ☆」

『MNo.12 猛獲竜ハンター』ATK:3000 VS 『PK-ホーリー』DEF:1200

「くっ……!」
「そして『ハンター』の効果発動。このカードが戦闘でモンスターを破壊した時、1ターンに1度、エクシーズ素材を1つ取り除くことで相手の場のモンスター1体の攻撃力分このカードの攻撃力を上げるか、守備貫通のどちらかを選んでその効果をエンドフェイズまで得ることができるんだ。そして、もう1度攻撃ができるよ。ド○ルドは守備貫通を選択して、『PK-シャイニング』を攻撃☆」

『MNo.12 猛獲竜ハンター』AKT:3000 VS 『PK-シャイニング』DEF:100

「がぁぁっ!!!」

遊参 LP:4000→1100

「つい、やっちゃうんだ☆」
「遊参!」
「……墓地に5体以上の『PK』が存在する時に、2000ポイント以上の戦闘ダメージを受けた時、このカードを手札から特殊召喚できる……! 僕が特殊召喚するのは……『PB(ピースブレイカー)-デスティニー』!」

『PB-デスティニー』☆10 ATK:4000/DEF:0

「よっしゃあ! 大型モンスターだぜ!」
「アラーッ!? うーん……。カードを1枚セットしてターンエンド」

「僕のターン、ドロー! メインフェイズ、『デスティニー』の効果発動! 1ターンに1度、墓地の『PK』を2体除外することで、このカード以外の場のモンスターを全て破壊する! 墓地の『PK』2体を除外し、『ハンター』を破壊する!」
「うーん……」
「よしっ! このままダイレクトアタックが通れば……!」
「つい、やっちゃうんだ☆ 罠カード『偽装錬金-廃棄回収-』発動! 墓地の『バンズ』または『パティ』を効果を無効にして可能な限り特殊召喚して、2000ポイントのダメージを受けるよ」

『バンズ・ウォリアー』☆4 ATK:2000/DEF:0
『フィッシュ・オブ・パティ』☆4 ATK:0/DEF:2000
『バンズ・ウィザード』☆4 ATK:0/DEF:2200
『ビーフ・オブ・パティ』☆4 ATK:1900/DEF:1300
『バンズ・アーチャー』☆4 ATK:800/DEF:1200

「墓地を肥やしてたのはこれが狙いか……! 壁を立てやがった……!」
「なら、『デスティニー』で攻撃!」

『PB-デスティニー』ATK:4000 VS 『バンズ・アーチャー』DEF:1200

「うーん……」
「これでターンエンドだ……」

「ド○ルドのターン、ドロー。いくよ、ハンバーガー4個分くらいのレベルのモンスター4個分くらいでオーバーレイ! ヘッハッハッハッ! エクシーズ召喚! 『MNo.48 圧殺竜プレッシャー』!」

『MNo.48 圧殺竜プレッシャー』★4 ATK:2500/DEF:1800

「いくよ、『プレッシャー』の効果発動。エクシーズ素材を1つ取り除くことで、相手の手札を1枚捨て、場のカードを1枚破壊するよ。破壊する対象は、もちろん『デスティニー』」
「しまった! 今度は遊参の場がガラ空き……手札もねぇ!」
「1枚カードが伏せてあるよね? それは使わないのかな?」
「…………」
「どうしたんだ、遊参……? それはただのブラフか!? 勝てる可能性があるなら使え!」
「…………僕は……場に伏せておいた速攻魔法を発動! 『平和の終焉』! 自分のライフより攻撃力の高いモンスターの直接攻撃宣言時、自分の墓地の『PK』と名の付いたモンスターを2体除外して発動する。除外されている『PK』と名の付いたモンスターでエクシーズ召喚を行い、攻撃対象をそのモンスターに移し替える……」
「なんだ! 逆転のチャンスじゃねぇか!」
「……遊鎧さん……できれば僕は……『デスティニー』で勝ちたかった……。でも……このカードを使うしか、もう僕が勝つ手段は残されてない……。さようなら、遊鎧さん。それと、ごめんなさい……。漆黒の闇が、希望の光を喰らい尽くす! 邪悪な心で世界を恐怖に染め上げろ! エクシーズ召喚、『MNo.96 邪染竜スポイルド』!」

『MNo.96 邪染竜スポイルド』★2 ATK:0/DEF:0

「何だ……? この禍々しい雰囲気は……? 遊参? おい、遊参!?」
「……はぁぁぁぁあああ……やっと“外”に出て来れたよ……。全く、つまらねぇ意地を張りやがって……。どうせテメェは自分じゃ何もできねぇんだ、さっさとオレを呼べってんだよ……」
「おまえは……遊参? 遊参なのか……?」
「あ? ああ……。オレは遊参だよ。間違いなく、な。そんなことはどうでもいいんだよ。ほら、デュエルを続けるぞ。『スポイルド』の効果を発動! このカードが戦闘を行う時、エクシーズ素材を1つ取り除いて発動する! 相手のモンスターの攻撃力を0にし、その数値の半分、このカードの攻撃力をアップする!」

『MNo.96 邪染竜スポイルド』ATK:0→1250
『MNo.48 圧殺竜プレッシャー』ATK:2500→0

「更に! ライフを100の倍数で支払うことで、『スポイルド』の攻撃力をアップさせる! オレはライフを1000ポイント払う! 『スポイルド』の攻撃力が1000アップ!」

遊参 LP:1100→100
『MNo.96 邪染竜スポイルド』ATK:1250→2250

「さぁ! バトルだァ!」

『MNo.96 邪染竜スポイルド』ATK:2250 VS 『MNo.48 圧殺竜プレッシャー』ATK:0

「アラーッ!!!」

道化師 LP:2000→0

「ケッ……オレの勝ちだァ……。手こずらせやがってよぉ……。賭け金は決めてなかったなァ……。っつーわけで、勝った方の総取りだァ。オラ、財布全部寄越しな!」
「よせ遊参! いくらなんでもそれはやりすぎだろ!」
「うるせぇんだよっ! 引っ込んでな!」
 遊参の肘が俺の腹にめり込んだ。喧嘩などさっぱり弱い俺は思わず尻餅を付いた。
「ぐぇっ……!」
「ついでだから教えてやるよ。“コイツ”はかわいそうに、心も体も弱くて学校にも行けない、行ってもいじめられるだけ……。同級生にお小遣いをやってた身分だったんだぜェ……。そのまま腐っちまった心に、俺が救いの手を差し伸べたのさ……。この大会でコイツに出会った時、オレは運命を感じたね。ついでだから、お礼もしてやったさァ……! こいつからお小遣いをもらってた奴等を木刀でボッコボコにしてやったよ……! カッカッカ……あの時は楽しかったなァ……。喧嘩の強い弱いなんて関係ねぇんだ……大事なのは思い切り、過剰防衛もクソもねぇ、それが大事なんだよ。覚えときな」
「テメェは……『MNo.』自身なのか……? 遊参の心を乗っ取ってるのか……?」
「平たく言やぁそうなるなァ……。まあ、乗っ取られる豆腐メンタルな野郎が悪いんだよ。そんじゃ、あばよ。いつまでもテメェに付き合う義理もねぇや」
 そう言って、遊参は倒れている俺の腹を蹴飛ばした。
「ゲホッ!」
 衝撃で、俺の腕のデュエルディスクのカードが散らばった。
「ケッ……これが“コイツ”との友情の証かァ……?」
「それは……『虚眼の独龍』のカード……!」
「ボッチには友情なんて要らねぇんだよ、ほぉらァ!」
「あ……!」
 遊参は『虚眼の独龍』のカードを破り捨てた。
「テメェの財布は勘弁してやる。じゃあな。せいぜい長生きしな」
 そして、遊参は俺の前から姿を消した。

第十話・完






       

表紙
Tweet

Neetsha