Neetel Inside ニートノベル
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遊戯王M
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『遊戯王M 第一話』

 やあ、俺の名前は図画 遊鎧(ずが ゆうがい)。
 デュエルが大好きな二十八歳、無職だ! 今は働かずに親の金で買ったカードでデュエルしてる。
 もうすぐこのハロワシティで、大規模なデュエル大会があるってネットで見て、すげぇ楽しみにしてるんだ。大会参加はネット応募の抽選らしい。参加発表はもうすぐだ。
 さっきから俺は大会運営の公式サイトを開いてF5キーを連打してる。
「お……! あった!」
 発表予定時間から十分ほどして、参加者番号一覧が表示された。十分も遅れるなんて、運営仕事しろ! 今は個人情報がどうのこうのってうるさいから、名前じゃなくて番号表示だ。受験の合格発表もそだろ? まあ俺は大学受験に失敗してそのまま永遠の浪人生だけどな。
「何々……?」
 俺は大会の参加要綱を見た。
「大会は、アンティルールで行われます。なお、このアンティルールに使われるのは大会運営があらかじめ参加資格として配布した特別なカードなので賭博行為には該当しません。ふーん……。大会の概要は……バトルシティルールです。なるほどな」
 俺は大体察した。最後の一文を読む。
「大会参加資格の証明、かつアンティルールの対象となるカードは、大会開催前までに郵送されます、か……」
 俺は数年ぶりに玄関から出て、ポストを見た。
「ナイスタイミング! でも書留じゃねぇのかよ、ケチだな」
 ポストには俺宛の名前で、封筒が届いていた。今現在、デュエルに関するライセンスを持っている『KC(海馬コーポレーション)』……の子会社、『KC(こんなはずじゃなかったコーポレーション)』のロゴが入ってる。
 今度の大会であるバトルタウンは、この会社が運営してる。俺は親とバッティングする前に、急ぎ足で部屋に戻った。
 ワクワクしながら封筒を開ける。
 中には、一枚のカードと便箋。便箋にはさっきネットで見たような内容の文章と、公式サイトのURLが書いてあった。
 それよりもカードだ。
「黒い枠……エクシーズモンスターか」
 今度の大会に使われるアンティカードは、全て『MNo.』というカテゴリらしい。この『No.』というのは、アニメで見たことがあるし、ルビが振ってある。あの有名な『ナンバーズ』のカードだ。
 ただ、『M』にはルビが振ってない。
「どういう意味なんだろう……?」
 このアンティカードは、全部で何枚あるかは秘密らしい。アニメ通りなら、99枚以上あるんだろうけど。
 一応、バトルタウンも町ひとつが大会の舞台になる。期間は無駄に長くて一ヶ月もある。
「ま、いっか」
 俺はデッキを調整しながら、大会が始まる日を待った。

 やがて大会の開催日になった。今日から一ヶ月間、この町は戦場と化すわけだ。
 俺みたいなデュエルを本業にしてる奴らが、対戦相手を求めて町をさまよってるに違いない。
 俺は小鳥ちゃんのイラストがプリントされたTシャツに、ジャージのズボン、それから一番大事なデュエルディスクという格好で、数年ぶりに家を出た。
 親には適当に「ハロワを見学に行ってくる」と言ってある。
「さぁ来い! デュエリスト!」
 俺がデュエルディスクのデュエリストセンサーを起動させる。近くにデュエリストがいれば、これが反応するはずだ。
「お!」
 早速、センサーが反応した。俺が辺りを見回すと、老婆が一人いる。
「よお、ばあちゃん! あんた、デュエリストか?」
「そうだよ……。坊やもデュエリストだね? ヒッヒッヒ」
 老婆が俺のデュエルディスクを見て言った。
「大会に参加してるのか? 俺とデュエルしようぜ!」
「いいよ。ヒッヒッヒ」
 デュエルディスク、セット! 以下略、
「「デュエル!」」

遊鎧 LP:4000 老婆 LP:4000
「先攻は若い子に譲ろうかねぇ……」
「後悔すんなよ、ばあちゃん! 俺のターン! ドロー! 『不況に翻弄されるニートの剣士』を召喚!」

『不況に翻弄されるニートの剣士』☆4 ATK:1400/DEF:1200

「更にカードを1枚セットして、ターンエンド!」

「お婆ちゃんのターン、ドロー。お婆ちゃんは、『ババーリアン1号』を召喚」

『ババーリアン1号』☆2 ATK:600/DEF:800

「『ババーリアン1号』の効果発動! このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、手札・墓地・デッキから『ババーリアン2号』を特殊召喚するよ!」

『ババーリアン2号』☆2 ATK:800/DEF:600

「更に『ババーリアン2号』の効果発動! このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、手札・墓地・デッキから『ババーリアン1号』を1枚手札に加える!」
「すげぇ展開力だぜ……! まあぶっちゃけ【ガジェット】とか【ギアギア】の劣化版だけどな」
「更に『ババーリアン』の共通効果発動! 1ターンに1度、ババアカウンターを乗せ、ババアカウンター1つにつき攻撃力を200ポイントアップさせる!」

『ババーリアン1号』ATK:600→800
『ババーリアン2号』ATK:800→1000

「しょっぺぇ効果だな! そんなんじゃ、俺の『ニートの剣士』は倒せないぜ!」
「ヒッヒッヒ、だからお婆ちゃんはカードを3枚セットしてターンエンドだよ」

「俺のターン! ドロー!」
(カウンターが乗って攻撃力が上がってるとはいえ、俺の『ニートの剣士』より攻撃力の低いモンスターを出してる……ここは罠カードを警戒した方がよさそうだけど、まずはあの邪魔なカードを破壊するぜ!)
「いくぜ! 速攻魔法『大嵐』を発動! あんたのセットカードを破壊させてもらうぜ!」
「そうはさせないよ! 罠発動! 『もたつく権利』! 相手の魔法・罠カードの発動を無効にし、デッキに戻す! そして自分はカードを1枚ドローするよ!」
「汚ねぇぞ!」
「ヒッヒッヒ、これが高齢化社会デッキの恐ろしさだよ……!」
「なら、俺は『自宅という砦を守るニート』を召喚!」

『自宅という砦を守るニート』☆4 ATK:1400/DEF:800

「バトルフェイズ! 『ニートの剣士』で『ババーリアン1号』を攻撃!」
「おっと、永続罠カード発動! 『優先席』! このカードがある限り、お婆ちゃんのコントロールする最も攻撃力の高いモンスターより高い攻撃力を持つ相手モンスターは攻撃できないよ!」
「なるほど、道理で。それなら俺のモンスターは両方とも攻撃できねぇ。更にカードを1枚セットして、ターンエンドだ」
(あの永続罠を除去するまで動けねぇが……それは相手も同じはずだ)

「お婆ちゃんのターン! お婆ちゃんは『ババーリアン・ガードナー』を召喚するよ! このカードは召喚に成功した時、守備表示になるよ!」

『ババーリアン・ガードナー』☆3 ATK:0/DEF:1600

「そして『ババーリアン』たちの共通効果を発動! ババアカウンターを1つ乗せ、攻撃力を200ポイントアップするよ!」

『ババーリアン1号』ATK:800→1000
『ババーリアン2号』ATK:1000→1200
『ババーリアン・ガードナー』ATK:0→200

「しまった、その効果があったか……! これじゃあ、ターンが経過するごとに俺が不利だ……!」
「更に『ババーリアン・ガードナー』の効果を発動! エンドフェイズ時までこのカードの守備力を0にし、その分自分の場のモンスターの攻撃力をエンドフェイズ時までアップさせる! 対象は『ババーリアン2号』!」

『ババーリアン2号』ATK:1200→2800

「な!? や、やべぇ……!」
「バトルフェイズ! 『ババーリアン2号』で『ニートの剣士』を攻撃!」

『不況に翻弄されるニートの剣士』ATK:1400 VS 『ババーリアン2号』ATK:2800

「がぁぁぁああ!」

遊鎧 LP:4000→2600

「くっ、速攻魔法発動! 『小遣い』! このターン減少したライフポイントの半分だけ、俺のライフを回復する!」

遊鎧 LP:2600→3300

「おやおや、いいカードを持ってるじゃないかい。だけど、お小遣いならおばあちゃんもあげるよ……速攻魔法『ババーリアン・ギフト』発動! このカードは相手フィールド上のモンスター1体のコントロールをエンドフェイズまで得るよ。その代わり、坊やのライフは500ポイント回復するからねぇ……! 坊やの『砦を守るニート』を借りようかねぇ……!」
「このっ……! 人のモンスターをこき使っておいて、たった500ポイントかよ……! ってか、ダイレクトアタックを喰らったら損じゃねぇか!」
「そうだねぇ……だからこうするのさ! 手札から魔法カード発動! 『ババーリアンの老化促進』!
 このカードを発動した時、自分の場のモンスターは全て『ババーリアン』として扱い、ババアカウンターを4つ乗せるよ! そして、『ババーリアン』の最後の共通効果を発動!」
「な……まだあったのか!」
「ババアカウンターを全て取り除き、取り除いた数だけレベルを上げるよ! つまり、場のモンスターのレベルは全て8になる!」
「レベル8のモンスターを3体揃えた……? まさか!?」
「いくよ! お婆ちゃんはレベル5のモンスター3体でオーバーレイ! エクシーズ召喚! 『MNo.88 時限竜オールドラゴン』!」

『MNo.88 時限竜オールドラゴン』★8 ATK:2900/DEF:2200

「こ、攻撃力2900……!? あんなののダイレクトアタックを喰らったら……!」
「ヒッヒッヒ、亀の甲より年の功……坊やはこのターンで終わりだよ! 『時限竜オールドラゴン』の効果を発動! このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、エンドフェイズ時まで相手とのライフポイントの差だけ攻撃力をアップさせるよ!」

『MNo.88 時限竜オールドラゴン』ATK:2900→3600

「させるか! カウンター罠! 『攻撃の無職化』! 自分フィールド上に他のカードがない場合、相手のバトルフェイズを終了させる! そして、カードを1枚ドローする!」
「おやおや……生き残ったかい。しぶといねぇ……。『時限竜オールドラゴン』の効果、残念ながらこのカードがフィールド上に存在する限り、エンドフェイズに自分の魔法・罠を全て破壊しなくちゃならないんだよ……」
「よし、『優先席』が消えた。しかも、これで罠も怖くないぜ! 充分逆転はできる! 俺のターン、ドロー!」
(よし……来たぜ!)
「俺は、このままターンエンドだ!」

「おやおや……サレンダーした方がいいんじゃないかい? お婆ちゃんのターン、ドロー! 今度こそ止めだよ……エクシーズ素材を取り除き、『時限竜オールドラゴン』で攻撃!」
「手札からモンスター効果発動! 『ムショクリボー』! 自分がダイレクトアタックを受ける時、このカードを手札から墓地に送り、受けるダメージを100の倍数で0まで減らす事ができる! 俺は受けるダメージを3200に減らす!」

遊鎧 LP:3300→3200

「0にしなかった……? どうしてだい……?」

「すぐに教えてやるよ! 俺のターン、ドロー! 魔法カード発動、『最低賃金』! 自分の墓地からライフポイントよりも攻撃力の高いモンスターを2体まで選んで特殊召喚する! 『ニートの剣士』と『砦を守るニート』を特殊召喚するぜ!」
「レベル4モンスターが2体……? まさか……?」
「残念だけど、あんたに俺のMNo.は見せてやれないな! 2体のモンスターをリリースして、『ムショック・マジシャン』をアドバンス召喚!」

『ムショック・マジシャン』☆8 ATK:2500/DEF:2100

「な……アドバンス召喚!? そんなの、お婆ちゃんが若い頃見た召喚方法だよ……!」
「悪かったな! けどこいつは通常モンスターじゃないぜ! 『ムショック・マジシャン』の効果発動! このカードは相手の場の融合・儀式・シンクロ・エクシーズモンスターを1体選択して発動し、そのモンスターを特殊召喚するために使用したモンスターの数×1000ポイント攻撃力を下げる!」
「何だかわけがわからないよ!」
「要するに、あんたの『時限竜』は攻撃力が2000ダウンするぜ! ちなみに、エクシーズ効果を使うと更に1000下がる。使っても使わなくても、俺の『ムショック・マジシャン』は倒せないぜ!」
「何だって!?」
「いくぜ! バトルフェイズ!」

『ムショック・マジシャン』ATK:2500 VS 『MNo.88 時限竜オールドラゴン』ATK:900

「ぎゃぁぁぁぁああ!」

老婆 LP:4000→2400

「悪いが、こいつで止めだ! 速攻魔法! 『親の死』! 俺のターンをスタンバイフェイズに戻し、このターン相手はカードを発動できない! ……その代わり、このカードを発動したエンドフェイズに俺は敗北するけどな! さぁ、最初で最後の仕事の時間だ! 『ムショック・マジシャン』でダイレクトアタック!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁああああああ!!!」

老婆 LP:2400→0

「俺の勝ちだぜ! 今は高齢化社会だけど、就職難の時代でもあるんだぜ。それを忘れないことだな、ばあさん!」
「負けたよ……。このカードを持っていきな……」

遊鎧 『MNo.88 時限竜オールドラゴン』 ゲット!

「さぁ、次も勝ってやるぜ!」

第一話・完

     

『遊戯王M 第二話』

 やあ! 俺は図画 遊鎧! デュエル大好きな二十八歳だ!
 今、バトルタウンっていう大会に参加してる。
 さっきばあちゃんのデュエリストに勝って、アンティカードを一枚手に入れたところだ。
 それから次の対戦相手を探して、平日の昼間から町を徘徊してるんだが……。
「お、デュエリストセンサーが反応してる」
 辺りを見回すと……。
「げ……」
 そこには、どう見ても通学途中の、独特な形の赤い鞄を背負った子供の姿しかない。
 いくらなんでも、これはスルーしたほうが安全そうだ。デュエリスト相手に背中は向けない主義だけど、通報されちゃデュエルどころじゃないからな!
 俺が逃げ出そうとすると……。
「そこのキモいの、あんたデュエリストでしょ?」
 うわっ、マジかよ。逆声かけ事例じゃんか!
 誤魔化そうにも、俺の腕にはバッチリデュエルディスクが装着されてる。
 俺が走って逃げようとすると、ARシステムが作動した。
 しまった、センサーをオンにした状態で相手もセンサーをオンにすると、デュエルに合意したとみなされちまうんだった……。
 俺は仕方なく振り向いた。くそう、こうなったら、堂々と「俺はただデュエルをしてるだけです。何も悪いことはしてません!」って雰囲気を作った方がいいな。
「「デュエル!」」

遊鎧 LP:4000 少女 LP:4000

「あたしの先攻、ドロー! あたしは永続魔法『監視する地域』を発動。そして『幼精(アリスフェアリー)ツンデロリ』を召喚! ターンエンド」

『幼精ツンデロリ』☆1 ATK:0/DEF:2000

(レベル1のモンスター……だからって舐めてかかっていい環境じゃないぜ。おそらく、何らかのコンボがあるはず……)
「俺のターン! ドロー! 俺は『ロスト・ジョブ・ガーディアン』を召喚!」

『ロスト・ジョブ・ガーディアン』☆4 ATK:1900/DEF:0

「『ロスト・ジョブ・ガーディアン』の効果を発動! このカードは墓地にカードがない場合、攻撃力が1000ポイントアップする!」

『ロスト・ジョブ・ガーディアン』ATK:1900→2900

(どう見ても守備専門のモンスターを攻撃表示で通常召喚……何かあるに決まってるが、仮にここで返り討ちにされてもそれほど痛くはないぜ……)
「バトルフェイズ! 『ロスト・ジョブ・ガーディアン』で攻撃!」
「永続魔法『監視する地域』の効果! このカードがある限り、レベル2以下のモンスターを攻撃する事はできない。けっ、雑魚め」
「永続魔法の効果くらい教えてくれっての! 俺はカードを2枚セットして、ターンエンド!」

「あたしのターン……いちいちドローとか叫ぶの、ウザいんだけど。『幼精ツンデロリ』を守備表示に。更に『幼精クーデロリ』を召喚!」

『幼精クーデロリ』☆1 ATK:200/DEF:500

「そして永続魔法『禁断の聖域』を発動! 自分の場のレベル2以下のモンスターの数が相手の場のモンスターより多い場合、自分のモンスターは破壊されない」
「ロックデッキか!」
「うっせーな、カードを1枚セットしてあんたのターンだ」

「俺のターン、ドロー!」
(相手のロックを突破できるカードがまだ来ない……。悔しいが、守りに徹するか……)
「俺はモンスターをセット! ターンエンド!」

「あたしのターン。『幼精ヤンデロリ』を召喚」

『幼精ヤンデロリ』☆1 ATK:2000/DEF:0

「罠カード発動! 『通報される不審者』! 相手フィールド上にセットされたモンスターを破壊して、その元々の攻撃力分のダメージを与える!」
「くそっ、俺の『岩石のように自室に鎮座するニート』が……!」

『岩石のように自室に鎮座するニート』☆3 ATK:1300/DEF:2000

「だぁぁぁあああ!」

遊鎧 LP:4000→2700

「『幼精ツンデロリ』を攻撃表示に。バトルフェイズ。『幼精ヤンデロリ』の効果を発動。このカードの攻撃力を倍にする。その代わりエンドフェイズ時にこのカードは破壊される。バトル、『ロスト』ナントカに攻撃!」
「しまった! 墓地に『岩石のニート』がいるから、攻撃力が上がらねぇ!」

『ロスト・ジョブ・ガーディアン』ATK:1900 VS 『幼精ヤンデロリ』ATK:4000

「痛ってぇっ!」

遊鎧 LP:2700→600

「更にバトルフェイズ。『幼精ツンデロリ』の効果を発動。このカードの攻撃力と守備力を入れ替える。エンドフェイズ時に……察しなさい。ダイレクトアタック!」
「させるか! 手札から『帰郷するニート』をの効果発動! このカードを相手フィールド上に特殊召喚し、バトルフェイズを終了させる!」

『帰郷するニート』☆1 ATK:1800/DEF:1800

「あたしの場にキモいモンスターを……!」
「さぁ、ターンエンドか? おまえのモンスターは……あぁ!? まさか、『禁断の聖域』で自壊効果を無効化する気か!?」
「バーカ、『禁断の聖域』は相手フィールド上にモンスターがいない場合は発動しないんだよ! キモいけど、この際だわ。メインフェイズ2、4体のレベル1モンスターでオーバーレイ」
「エクシーズ召喚!」
「『MNo.5 幼聖竜エンジェル』をエクシーズ召喚」

『MNo.5 幼聖竜エンジェル』★1 ATK:0/DEF:4000

「強そうなMNo.だけど、俺は負けないぜ! 罠発動『嫉妬の暴走召喚』! 相手が融合・儀式・シンクロ・エクシーズ召喚に成功した時、その召喚のために使用したモンスターの数だけデッキから攻撃力1000以下のモンスターを特殊召喚する! 俺はこの4体のモンスターを特殊召喚!」

『ムショクリッター』☆3 ATK:1000/DEF:600
『ムショクリボー』☆1 ATK:300/DEF:200
『ニート・エルフ』☆4 ATK:800/DEF:2000
『ニート・シールド・ガードナー』☆4 ATK:100/DEF:2600

「小賢しい……返しのターンでぶっ潰してやるけど」

「俺のターン、ドロー! 俺は永続魔法『緊急避難@自室』を発動! 1ターンに1度、場のモンスターを2体まで手札に戻すことができる! 『ムショクリボー』を手札に。そして『ハタラカナイト』を召喚!」

『ハタラカナイト』☆2 ATK:300/DEF:700

「更に手札から速攻魔法『アドバンス・シンクロ』を発動! 場のモンスターをリリースし、そのレベルの合計と同じレベルを持つ通常モンスターをデッキから特殊召喚する! 『ニート・エルフ』と『ハタラカナイト』をリリースして、『デーモンのニート』を特殊召喚!」

『デーモンのニート』☆6 ATK:2500/DEF:1200

「まだだ! 『アドバンス・シンクロ』は場にモンスターがある限り、何度でも特殊召喚できる! 俺は『ムショクリッター』と『ニート・シールド・ガードナー』をリリース。『暗黒騎士ニート』を特殊召喚!」

『暗黒騎士ニート』☆7 ATK:2300/DEF:2100

「……って、バニラモンスターじゃない。だっさ、古っる! そんなの環境じゃないわ」
「うっせぇー! バトルフェイズ。『暗黒騎士ニート』で攻撃!」
「『MNo.5 幼聖竜エンジェル』の効果発動! エクシーズ素材を任意の数だけ取り除き、取り除いた数×1000ポイント攻撃力をアップする! 取り除く数は4つ!」

『MNo.5 幼聖竜エンジェル』ATK:0→4000

「環境じゃねぇのはそっちだ! 速攻魔法『ロスト・ジェネレーション』! このターン、全てのモンスターの効果を無効化する! そして元々効果モンスターでないモンスターは罠カードの効果を受けない!」
「っ……!」

『暗黒騎士ニート』ATK:2300 VS 『MNo.5 幼聖竜エンジェル』ATK:0

「きゃあ!」

少女 LP:4000→1700

「更に『デーモンのニート』でダイレクトアタック!」

少女 LP:1700→0

「きゃぁぁぁぁあああ!!!」

「よっしゃあ! 確かにこれから成長する奴には、可能性が秘められてる。けどな……守ってくれる人も、失うものも何もない、そんな状況から立ち上がった奴の方がもっと強いんだ!」

遊鎧 『MNo.5 幼聖竜エンジェル』 ゲット!

第二話・完








     

『遊戯王M 第三話』

 やあ! 俺は図画 遊鎧。無職という名のデュエリストだ!
 バトルタウンの大会に参加して、順調にアンティカードを手に入れてる。
 次の決闘相手を探してセンサーをオンにして歩いていると……。
「お、反応あり、か」
 辺りを見回すと……。一応、人はいた。ただ、その格好。
 全身タイツだ。その上に、無理やりプレートで武装強化したような、巨大同人誌即売会にたまーにいる残念なコスプレみたいな感じだ。
 俺が慌ててセンサーをオフにしようとしたが、遅かった。
「そこのオマエ……デュエリストだな? オレとデュエルしてくれよォ……! オレに生きてる実感をくれ! オレを満足させてくれ!」
 うわ、こいついろんな意味で危ねぇぞ! けれど、既にARシステムは作動しちまってる。
「しょうがねぇな……」
「「デュエル!」」

遊鎧 LP:4000 忍者 LP:4000

「オレの先攻ォ! オレはフィールド魔法『地雷原の死闘』を発動! このカードが存在する限り、お互いのカードはカードの効果では破壊されず、戦闘によるダメージは2倍になる! 更にお互いのプレイヤーは毎ターンの自分のエンドフェイズに自分の手札を全て捨てる! さぁ、オレと極限の死闘を楽しもうぜぇ……! オレは『煉獄忍者クナイ』を召喚!」

『煉獄忍者クナイ』☆4 ATK:1600/DEF:1200

「そして手札の『煉獄忍者クサリガマ』の効果を発動! 手札の罠カードを墓地に送り、このモンスターを特殊召喚する!」

『煉獄忍者クサリガマ』☆3 ATK:1400/DEF:800

「自分の場に『煉獄忍者』が2体以上存在するので、手札から『煉獄忍者マキビシ』を特殊召喚!」

『煉獄忍者マキビシ』☆4 ATK:1800/DEF:400

「エンドフェイズ、『地雷原の死闘』の効果で手札から墓地に捨てる『煉獄忍者センリン』の効果ァ! 墓地に捨てられた場合、このカードは特殊召喚できる!」

『煉獄忍者センリン』☆3 ATK:0/DEF:2000

「い、1ターンで4体のモンスターを展開だと……!? ガチじゃねぇか!」
「さぁ……この状況をどう覆す? オレを満足させてくれよぉ……! オレに生きてる実感をくれよォ……!」

「俺のターン! ドロー!」
(エンドフェイズに手札を全て捨てさせられる……なら、出し惜しみはなしだな……)
「魔法カード『次元転送』を発動! 手札のレベル2以下のモンスターを2体まで除外し、除外したモンスターと同じレベルのモンスターをデッキから効果を無効化して特殊召喚する! 俺は手札の『シューカツ・リベンジャー』と『ナイテイナイト』を除外し『シューカツ・ビートル』と『就職ブリザード』を特殊召喚!」

『シューカツ・ビートル』☆2 ATK:1200/DEF:0
『就職ブリザード』☆2 ATK:1300/DEF:0

「更に魔法カード発動『ネトゲ掛け持ち』! 手札を1枚捨て、このターン2度の通常召喚が可能になる! 俺は2体のモンスターをリリース、『ニート・オブ・ドラゴン』と『デーモンのニート』をアドバンス召喚!」

『ニート・オブ・ドラゴン』☆6 ATK:2000/DEF:1200
『デーモンのニート』☆6 ATK:2500/DEF:1200

(これなら勝てる……!)
「バトルフェイズ! 『ニート・オブ・ドラゴン』で『煉獄忍者クサリガマ』を攻撃!」

『ニート・オブ・ドラゴン』ATK:2000 VS 『煉獄忍者クサリガマ』ATK:1400

「てめーのフィールド魔法の効果で戦闘ダメージが2倍になるぜ!」
「くわっ! かかかかかかかぁーっ!」

忍者 LP:4000→2800

「更に『デーモンのニート』で『煉獄忍者クナイ』を攻撃!」

『デーモンのニート』ATK:2500 VS 『煉獄忍者クナイ』ATK:1600

「ぐげごががげご!」

忍者 LP:2800→1000

「どうした? もうやばいんじゃねーの?」
「ふへ、ふへはへほへははは!! 気持ちいいぜぇ! オレは今、サイコに生きてるって実感してる! 『煉獄忍者』の共通効果発動! 『煉獄忍者』と名のついたカードが手札が0枚の場合に戦闘で破壊された時、デッキから『強化装甲』と名のついた装備魔法カードを装備させ効果を無効化し墓地から特殊召喚できる!」
「な、何っ!?」
「オレは破壊された『煉獄忍者クサリガマ』と『煉獄忍者クナイ』に装備魔法『強化装甲ライデン』を装備させ、墓地から効果を無効化して特殊召喚! 『強化装甲ライデン』の効果。このカードが装備されているモンスターは自分の手札が0枚の場合、攻撃力は3000に、守備力は0になる!」

『煉獄忍者クサリガマ』ATK:3000/DEF:0
『煉獄忍者クナイ』ATK:3000/DEF:0

「チッ……『煉獄』って何か嫌な名前だと思ったら……『インフェルニティ』のギミックじゃねぇか! 俺はカードを1枚セットして、ターンエンドだ!」

「オレのターン! カードを1枚セットし、手札を0にする。いくぜぇ! 『煉獄忍者クサリガマ』で『ニート・オブ・ドラゴン』を攻撃だぁ!」
「させねぇよ! 罠カード発動『許し乞い』! 相手の攻撃宣言を無効化し、相手はカードを1枚ドローする!」
「こけきくけこか!? 手札が増えちまったら『煉獄忍者』は攻撃力が0に……!」
「へっ! どうした?」
「ターンエンドだ、が、『地雷原の死闘』の効果で手札はまた0だァ!」

「俺のターン、ドロー!」
(しょっぱなからかっ飛ばしたせいで、俺も手札がねぇ……。だが、逆転のカードを引けたぜ……!)
「魔法カード発動『ハリケーン&リバース』! 相手フィールド上の魔法・罠カードを任意の枚数選択し、デッキに戻す! その後相手はデッキに戻した枚数だけ好きなカードを選択し、セットする! ただし、セットしたカードが罠または速攻魔法の場合はこのターン発動可能になるけどな。俺はあんたの『強化装甲』2枚とセットカード1枚、更に『地雷原の死闘』の4枚を選択する!」
「何っ……!? クソォォォオオオ! オレはデッキから4枚カードを選び、3枚を魔法・罠ゾーンにセット、1枚をフィールドカードゾーンにセット……」
「よし! バトルフェイズ、『ニート・オブ・ドラゴン』で『煉獄忍者クサリガマ』に攻撃だぜ!」
「罠カード発動『煉獄忍法・煙幕の術』! 手札が0枚の場合、自分フィールド上の『忍者』と名のついたモンスターを全て除外し、バトルフェイズを終了させる! 次のスタンバイフェイズ時に除外したモンスターを特殊召喚する代わりに、自分はバトルフェイズを行えない……」
「チッ! 『ハリケーン&リバース』でいいカードを引いてきたな! ターンエンド!」

「オレのターン。『煉獄忍法・煙幕の術』で除外されていた『忍者』を特殊召喚。まずセット状態だったフィールド魔法を発動『地雷原の死闘』! そして魔法カード発動『煉獄忍法・星変化の術』! 手札が0枚の場合、自分フィールド上の『忍者』と名のついたモンスターを1体選び、自分フィールド上の『忍者』と名のついたモンスターのレベルを選択したモンスターと同じにする! オレは『煉獄忍者クサリガマ』を選択し、4体の『忍者』のレベルを4に!」
「……!? 来るか、エクシーズ召喚!」
「4体のモンスターでオーバーレイ! エクシーズ召喚『MNo.23 殲滅竜メタルギアドラゴン』!」

『MNo.23 殲滅竜メタルギアドラゴン』★4 ATK:2000/DEF:1000

「『メタルギアドラゴン』は手札が0枚の場合、相手ターン攻撃力を2000ポイントアップする! そしてこのカードは手札が0枚の場合相手プレイヤーに直接攻撃することができる! 更にィ! このカードが直接攻撃に成功した時、エクシーズ素材を2つ取り除くことで2000ポイントのダメージを与える! よかったなァ……! 『煉獄忍法・煙幕の術』の効果でオレはこのターンバトルフェイズが行えねェ……。さァ! ラストターンだァ!」

「オレのターン! ドロー! ……へっ!」
(来たぜ……必殺逆転のカード……!)
「待たせたな! このターンでおまえを満足させてやるよ! 速攻魔法『親の雷-ハタラケ-』を発動! 自分フィールド上の『デーモン』と名のついたモンスターを選択して発動する! 選択したモンスターはこのターン攻撃力が500ポイントアップし、戦闘では破壊されない。更に選択したモンスターの攻撃で相手モンスターが破壊されなかった場合、攻撃力を300ポイントアップして相手モンスターが破壊されるまで攻撃することができる! そしてこのカードとの戦闘によって発生するダメージは効果ダメージとして扱い、カードが破壊される場合それは効果破壊として扱う!」
「いいい言ってる意味がわからねェよォ!」
「こうするんだよ! 『デーモンのニート』で『殲滅竜メタルギアドラゴン』に攻撃!」

『デーモンのニート』ATK:3000 VS 『MNo.23 殲滅竜メタルギアドラゴン』ATK:4000

遊鎧 LP:4000→3000

「くっ……! 『親の雷』の効果で戦闘ダメージは効果ダメージとして扱うから『地雷原の死闘』の効果は適用されないぜ! そして『メタルギアドラゴン』が破壊されなかったので、『デーモン』は攻撃力を300ポイントアップして再度攻撃するぜ!」

『デーモンのニート』ATK:3300 VS 『MNo.23 殲滅竜メタルギアドラゴン』ATK:4000

遊鎧 LP:3000→2300

「まだだっ!」

『デーモンのニート』ATK:3600 VS 『MNo.23 殲滅竜メタルギアドラゴン』ATK:4000

遊鎧 LP:2300→1900

『デーモンのニート』ATK:3900 VS 『MNo.23 殲滅竜メタルギアドラゴン』ATK:4000

遊鎧 LP:1900→1800

「よぉし……。これで『デーモン』の攻撃力が『メタルギアドラゴン』を上回ったぜ……!」
「だだだからどうなるってんだよォ!?」
「こうなるのさっ!」

『デーモンのニート』ATK:4200 VS 『MNo.23 殲滅竜メタルギアドラゴン』ATK:4000

「ごげげげげごごごご!?」

忍者 LP:1000→800

「だがこれで『メタルギアドラゴン』は破壊され……」
「忘れたのか? 『親の雷』の効果で『デーモン』の攻撃によるダメージは効果ダメージとして扱い、破壊は効果破壊として扱う! おまえの発動したフィールド魔法には何て書いてあったっけ!」
「『このカードが存在する限り、お互いのカードはカードの効果では破壊されず』……な、何ィッ!? つ、つまり……!」
「そうさ! 破壊されなかったので、『デーモン』は更に攻撃力を上げて攻撃を続行する!」

『デーモンのニート』ATK:4500 VS 『MNo.23 殲滅竜メタルギアドラゴン』ATK:4000

忍者 LP:800→300

「ま、まさかァァァッ!!!!」
「止めだ!」

『デーモンのニート』ATK:4800 VS 『MNo.23 殲滅竜メタルギアドラゴン』ATK:4000

忍者 LP:300→0

「ごげげげががげごごごぎご!!!! ごげっ……ま……満足したゼェェェェエエエエ!!!!」
「見たか! 追い詰められた状況で必ずしもフェアな勝負ができるとは限らないってことを覚えておきな!」

遊鎧 『MNo.23 殲滅竜メタルギアドラゴン』 ゲット!

第三話・完





     

『遊戯王M 第四話』

 やあ! 俺は図画 遊鎧! デュエル大好き、28歳(無職)だ!
 今、俺の住んでるハロワシティで開催されてるデュエルの大会、バトルタウンに参加してる。
 特別なアンティルールで行われるこの大会の参加資格でもあるカード、『MNo.』を自分が元々持っていた分も合わせて四枚集めたけど……いつになったら準決勝とかそういうのに進めるのかさっぱりわからないぜ……。もちろんちゃんとググったし、本スレでも質問したけどわからねぇ。
「はぁ……」
 俺が手に入れたカードを見ながら歩いていると……。
 ドンッ!
「うわっ!」
「アッー!」
 しまった、人とぶつかっちまった! 謝罪と賠償を要求される!
「す、すみません! 土下座しますからデッキと通報と訴訟と親に言うのだけは勘弁してください……!」
 俺はとっさに下座って謝った。
「いえいえ、こちらこそ不注意でした。ほらほら、顔を上げてください」
「ホントにすみません……」
「うわぁ、ホントに酷い顔……何でもありません。おや、あなたもデュエリストですか?」
 ぶつかった相手は何か爽やかな感じで、攻めか受けかで言えば受けって感じ全開な感じだ。今さらりと酷いことを言われたような気がするけど、気にしない。慣れてるしな。
「ああ、って……あんたもか」
 お互いに腕にはめられたデュエルディスクを見る。けど、俺は頭を掻いた。何日も風呂に入ってないからフケが飛ぶ。
「っつっても……ぶつかった相手とデュエルはしたくねぇなぁ……。何となく申し訳ねぇよ」
「何を言ってるんですか、あなたごときにデュエル万能説を否定する資格は……おっと失礼、デュエルは仲の良い人とも悪い人とも別け隔てなくするものですよ」
「そっか。その前に、あんたの名前を教えてくれよ」
「ボクは牛城 聖刃(うしじろ せいば)です」
「中々のDQNネームだな! 俺は図画 遊鎧! よろしくな!」
「あはは! あなたも人のこと言えませんね」
「恨みと小遣い値上げは親に言えってな! そんじゃ……」
「「デュエル!」」

遊鎧 LP:4000 VS 聖刃 LP:4000

「ぶつかったお詫びだ、先攻はくれてやるよ!」
「偉そうですね! ではボクの先攻。『無職魔導プリースト』を召喚!」

『無職魔導プリースト』☆4 ATK:0/DEF:2200

「更に1ターンに1度、デッキから『無職芸』と名の付いた魔法カードを1枚手札に加えます。ボクは魔法カード、『深夜アニメの無職芸』を手札に」
「まさか、あんたも【無職】使いなのか!?」
「あれ? ボクはともかく、あなたは見た目通り……いえ、何でもありません。まあ隠しても仕方ないですからね。そうです、求職中です。ただし、結構名前のある大学を卒業してますよ。あなたは見るからに中卒っぽいですけど」
「うるせぇ! 高卒だっつっーの!」
「ターンを続行しますよ。ボクは先程サーチした『深夜アニメの無職芸』を墓地に捨て、手札から『無職魔導ウォリアー』を特殊召喚します」

『無職魔導ウォリアー』☆4 ATK:2200/DEF:0

「そして墓地の『深夜アニメの無職芸』を除外して効果を発動します。デッキから『無職芸』と名の付いた魔法カードを手札に。『音ゲーの無職芸』を手札に。そして手札の『無職芸』と名の付いた魔法カードを2枚相手に見せることで手札から『無職魔導ビースト』を特殊召喚します。『音ゲーの無職芸』と『ネトゲの無職芸』を見せます」

『無職魔導ビースト』☆3 ATK:1600/DEF:800

「『音ゲーの無職芸』の効果発動。『無職』と名の付いた自分の場のモンスターの攻撃力を自分の場『無職』と名の付いた一番高いモンスターに合わせます」

『無職魔導プリースト』ATK:0→2200
『無職魔導ウォリアー』ATK:2200→2200
『無職魔導ビースト』ATK:1600→2200

「更にカードを1枚セットしてターンエンドです」
「何か……すげぇガチ臭くねぇか?」
「気のせいでしょう? それより早くターンを進めないとジャッジキルですよ?」

「俺のターン!」
(とりあえず打点2200を突破するのが先か……)
「俺は速攻魔法『自宅からの緊急テレポート』を発動! デッキからレベル3以下の通常モンスターを特殊召喚する! 『岩石のように自室に鎮座するニート』を特殊召喚!」

『岩石のように自室に鎮座するニート』☆3 ATK:1300/DEF:2000

「おや? 通常モンスターという割には……なるほど、そういうことですか。失礼しました。どうぞ、続けてください」
「手札から魔法カード発動! 『親の扶養』! このカードが場に存在する限り、自分が通常モンスターのアドバンス召喚に成功した時、カードを1枚ドローする! そして『岩石のニート』をリリースして『デーモンのニート』をアドバンス召喚!」

『デーモンのニート』☆6 ATK:2500/DEF:1200

「『親の扶養』の効果で1ドロー!」
「ははっ! 今時アドバンス召喚ごときでアドを取るのに必死ですねぇ!」
「うるせぇ! バトルフェイズ、『デーモンのニート』で『プリースト』を攻撃!」

『デーモンのニート』ATK:2500 VS 『無職魔導プリースト』ATK:2200

「まあいいでしょう。それくらい通してあげますよ!」

聖刃 LP:4000→3700

(あのセットカードはあえて使わなかったのか……それともブラフか……)
「カードを1枚セットしてターンエンドだ!」
「エンドフェイズ! 速攻魔法発動! 『始発の無職芸』! 墓地の『無職』と名の付いたモンスターを特殊召喚します。このターン、ボクは召喚・特殊召喚ができませんが……」
「俺のターンだから関係ねぇ、ってか……」
「まあ、このくらいデュエリストなら定石ってことくらい、頭の悪そうなあなたでもわかりますよね?」

「ボクのターン、ドロー。魔法カード『ネットの無職芸』発動。デッキから『無職芸』と名の付いた魔法カードをサーチします。『DTMの無職芸』を手札に加えます。そのまま『DTMの無職芸』の効果発動。自分の場のモンスターを1体リリースし、レベルが1つ高い『無職』と名の付いたモンスターをデッキから特殊召喚します。『無職魔導ビースト』をリリースし、『無職魔導ウィザード』を特殊召喚」

『無職魔導ウィザード』☆4 ATK:1900/DEF:200

「更に墓地に送られた『無職魔導ビースト』の効果発動。デッキから『無職』と名の付いたカードを1枚手札に加えます。『MADの無職芸』を手札に」
「今だ! 罠カード発動、『メンタルクラッシュ』! カード名を1つ宣言し、相手の手札にそのカード名を含むカードが3枚以上ある場合、そのカードを全て墓地に捨てる! 俺が宣言するのは」
「『無職』でしょう? 簡単ですよね」
「勝手に言うんじゃねぇよ! 『無職』!」
「ははっ、自分の恥さらしな職業を公言してるようで滑稽ですねぇ! ではボクはお望み通り『ネトゲの無職芸』『MADの無職芸』『SSの無職芸』の3枚を墓地に。それでは不本意ですがそろそろ本気を出しましょうか! 3体のレベル4モンスターでオーバーレイ!」
「エクシーズ召喚……来るか!?」
「エクシーズ召喚! 『MNo.62 魔導竜プロフェシー』!」

『MNo.62 魔導竜プロフェシー』★4 ATK:1000/DEF:0

「出やがったな……『MNo.』……! しかも露骨に怪しいステータスだぜ……!」
「行きますよ、バトルフェイズ! 『魔導竜プロフェシー』の効果発動! このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、このカードの攻撃力をエンドフェイズまで攻撃対象に選択したモンスターの攻撃力分アップします!」
「『アバター』の効果じゃねぇか! それで元々の攻撃力が1000だと!?」
「この効果で『デーモン』の攻撃力分、攻撃力がアップします!」

『MNo.62 魔導竜プロフェシー』ATK:1000→3500

「さぁ! バトルです!」

『デーモンのニート』ATK:2500 VS 『MNo.62 魔導竜プロフェシー』ATK:3500

「がぁぁぁあああ!!!」

遊鎧 LP:4000→3000

「くっ……速攻魔法発動! 『損害賠償』! 自分がダメージを受けた時、そのダメージ以下の攻撃力を持つモンスターを1体デッキから特殊召喚する! 『ムショクリッター』を特殊召喚!」

『ムショクリッター』☆3 ATK:1000/DEF:600

「ならボクは『魔導竜プロフェシー』の効果を発動! エクシーズ素材を1つ取り除き、もう1度攻撃ができます! 更にこの効果で攻撃する時、守備貫通が付与されます! ちなみに、先ほどの攻撃力アップ効果はエンドフェイズまで有効なので攻撃力は上昇したままですよ!」
「インチキ効果もいい加減に……」
「『魔導竜プロフェシー』で攻撃します!」

『ムショクリッター』DEF:600 VS 『MNo.62 魔導竜プロフェシー』ATK:3500

「うわぁぁぁああああ!!!」

遊鎧 LP:3000→100

「はははははっ! しぶとく生き残りやがりましたねぇ!」
「『ムショクリッター』の効果を発動……! このカードが破壊され墓地に送られた時、デッキから攻撃力1000以下の通常モンスターを1体特殊召喚する……! 『自宅に封印されしニートの右腕』を特殊召喚……!」

『自宅に封印されしニートの右腕』☆2 ATK:200/DEF:300

「おやおやぁ? 顔に諦めの色が浮かんでますよぉ? そうですねぇ、ボクの『魔導竜』は3体のモンスターを使ってエクシーズ召喚されたモンスター……即ち、エクシーズ素材は3つ。もう一度連続攻撃効果を使えますからねぇ……! し・か・も! あなたのライフは残りたったの100!」
「…………」
「けれど安心してください。ボクはバトルフェイズを終了します。そしてメインフェイズ2。『魔導竜』の最後の効果を発動します。エクシーズ素材を1つ取り除き、墓地の『無職芸』と名の付いた魔法カードを3枚までエクシーズ素材としてこのカードに重ねてエクシーズ素材とします。あなたが先程墓地に送ってくれた『無職芸』のカード3枚でねぇ……!」
「このターンで勝てるのに余計な真似を……!」
「ボクは慎重な性格でしてねぇ。誰かさんと違って、ちゃんと人生設計をしてるものですから。さあどうぞ、あなたのラストターンですよ」
「……後悔すんなよ……!」

「俺のターン、ドロー! 『ニートの右腕』をリリース! 『ニート・オブ・ドラゴン』をアドバンス召喚!」

『ニート・オブ・ドラゴン』☆6 ATK:2000/DEF:1200

「『親の扶養』の効果で1ドロー! ただし、墓地のカードが5枚以上になったから『親の扶養』は破壊される」
「ははは! 親のすねかじりもできなくなったニートがどうやって逆転するか見ものですねぇ!」
「俺はカードを1枚セットしてターンエンドだ……」
「ははっ! 諦めたようですねぇ! いいんですよ、それで!」

「ボクのターン、ドロー! さぁ、止めを刺してあげましょうか! 『魔導竜』の効果を発動!」
「その瞬間を待ってたぜ……。あんた、褒めてやるよ。この俺に……クソッタレな召喚方法を使わせたことをな! 行くぜ! 速攻魔法発動! 『アドバンス・チューニング』!」
「チューニング……?」
「自分の場にアドバンス召喚されたモンスターが存在する場合、そのアドバンス召喚のためにリリースした墓地のモンスターをチューナーとして、アドバンス召喚したモンスターとシンクロ召喚を行う! 集わない職歴が、新たな生活を生み出さない! 無駄飯食らう社会の屑となれ! シンクロ召喚! 『ソーシャルダスト・ドラゴン』!」

『ソーシャルダスト・ドラゴン』☆8 ATK:2500/DEF:2000

「はっ、そんなモンスターじゃ、ボクの『魔導竜』は……」
「おまえの『魔導竜』の効果にチェーンして『ソーシャルダスト・ドラゴン』の効果発動! 相手がエクシーズ素材を取り除く効果を発動した時、『ソーシャルダスト・ドラゴン』をリリースし、相手のエクシーズ素材を全て除外する!」
「なっ……! なら、直接攻撃するまで!」
「罠カード発動! 『年金追納』! 相手の攻撃宣言時、墓地の通常モンスターを特殊召喚する。そして手札を任意の枚数だけ除外し、除外した数×1000ポイント攻撃力をアップさせ強制的に戦闘を行わせる! 特殊召喚したモンスターはこのターンのエンドフェイズ時に破壊されるがな。俺は墓地の『デーモンのニート』を特殊召喚! 更に手札を3枚除外し、攻撃力を3000ポイントアップ!」

『デーモンのニート』ATK:2500→5500

「行くぜ! てめぇの素材のなくなった『魔導竜』で『デーモンのニート』を攻撃してもらう!」

『デーモンのニート』ATK:5500 VS 『MNo.62 魔導竜プロフェシー』ATK:1000

「うわぁぁぁぁあああ!!!」

聖刃 LP:3700→0

「俺の勝ちだ……。慎重だの、人生設計がどうのこうのと抜かしてやがったが……結局は勝ちを過信したな。おそらく、あんたの手札には逆転のカードがあったはずだぜ……」
「くそっ……無職のくせに……アドバンス召喚で油断させるなんて……」
「ほざけよ。俺は無職だが、『働いたら負けかな』ってプライドがあるんだ」
「チィッ! アンティールールだ、受け取れよ」
「これは……『魔導竜』じゃねぇじゃねぇか?」
「アンティで渡すカードは『MNo.』1枚なら何でもいいんだよ、情弱。この借りは必ず返すからな……ボクのプライドを傷付けたこと、絶対に許さない……!」
「最後の最後に声優ネタか。まあいいか」

遊鎧 『MNo.59 雷鳴竜ダークサンダー』 ゲット!

第四話・完

======================================================
☆あとがき☆
======================================================
こんなクソ作品にコメントくれる方々、ありがとうございます。
お陰様で何とか連載モチベが保ててます。
いかに馬鹿馬鹿しいデュエルが書けるか、を毎回頑張って考えてます。
オリカで構成されたデュエルなのにスランプって……どんだけ才能ないんだよ……。

     

『遊戯王M 第五話』

 やあ! 俺は図画 遊鎧! デュエリスト(28歳・無職)だ!
 今俺の住んでる町、ハロワシティで開催されてるデュエルの大会、バトルタウンに参加してるんだけど……。
「うーん……」
 この大会の参加資格であり、アンティルールの対象になってるカード、『MNo.』を見詰めて思わず唸る。元々持っていた自分の分も合わせて5枚も集めたけど、いまだにこのカードのことは何もわかっていない。
 家に帰ってググったけど、やっぱり何もわからなかった。
 このカードのルビが振っていない部分、「M」の意味。これは本スレでもいろいろ憶測が飛び交っていた。『ミッシング』とか『ミスト』とか大体そんな意見が多かったけど。
 全部で何枚あるかについても、アニメと同じく99枚だとか100枚だとか、どうせ100枚超えてるとかいろいろだった。
 とりあえず俺が集めてきた限り、共通点としては全部のカードがドラゴン族のエクシーズモンスターだってことだけど、これも絶対かどうかわからない。
「やぁ、そこのあなた」
「ん? 俺か?」
 見ると、いかにも小ズルそうなガキだかそこそこ歳がいってるのかわからないメガネが俺に話しかけているようだった。まあ俺もメガネだけど。
「デュエリスト、しかもこんな時間にふらふらしてるってことは、バトルタウン参加者ですよね?」
「ああ、そうだぜ。あんたもか?」
「そうですよ。是非ともあなたとデュエルがしたくてですねぇ……」
 俺は腕のデュエルディスクを胸の前に構えて応える。
「もちろんいいぜ!」
「そこで提案なんですけど……よかったら、アンティカードの『MNo.』は5枚賭けにしませんか?」
「ご、5枚ぃ!? それって俺が持ってるカード全部じゃねぇか! って、そんなことできるのか?」
「できますよぉ。お互いが合意すれば、『MNo.』はお互いに同じ枚数まで賭けることができるんです」
「う、うーん……」
 俺は考えた。
 勝てば一気に10枚の『MNo.』が集まる。けど、負けたら全部の『MNo.』を失っちまう。この大会では『MNo.』がなくなったら失格だ。
「おや、怖気づいてしまいましたか? デュエリスト失格ですねぇ……情けない。いいですよ、他をあたりますからあなたはせいぜいあと5回負けて失格になってください。それでは……」
「おい、待てよ! 誰がデュエリスト失格だって!? そんなに言うなら、5枚全部賭けてやる! かかってこい!」
 メガネはくるりと振り返って気持ち悪く笑った。
「おやおや……これは嬉しい。それでは『MNo.』5枚賭けで……」
「「デュエル!」」

遊鎧 LP:4000 メガネ LP:4000

「俺の先攻! ドロー!」
(ヒヒヒ……、こうもあっさり挑発に乗ってくれるとはねぇ……)
「俺は『ロスト・ジョブ・ガーディアン』を召喚!」

『ロスト・ジョブ・ガーディアン』☆4 ATK:1900/DEF:0

「先攻は攻撃できねぇ、更にカードを1枚セットしてターンエンドだ!」

「僕のターン! ドロー! 『悪虫(パイレーツワーム) アドビー』を召喚」

『悪虫 アドビー』☆2 ATK:1500/DEF:400

「更に自分の場に『悪虫』と名の付いたモンスターがいるので、効果で『悪虫 セルシー』を特殊召喚!」

『悪虫 セルシー』☆2 ATK:800/DEF:1600

「『アドビー』の効果! 自分の場に『アドビー』以外の『悪虫』が存在する場合、このカードをリリースし、デッキから『アドビー』を2体まで特殊召喚できる! 僕は2体の『アドビー』を特殊召喚!」

「バトルフェイズ、『アドビー』で攻撃!」
「攻撃力の低いモンスターで攻撃だと……?」
「攻撃宣言時に速攻魔法発動! 『悪虫の売上減少』! 相手モンスターの攻撃力を500ポイントダウンさせる!」
「けっ、俺の『ロスト・ジョブ・ガーディアン』は墓地にカードが存在しない場合、攻撃力を1000ポイントアップさせるぜ! 500ぽっちじゃ俺の『ガーディアン』は倒せないぜ!」

『ロスト・ジョブ・ガーディアン』ATK:1900→2900→2400

「甘いですねぇ! 『悪虫』と名の付いた魔法・罠カードは1枚につき、自分の場の『悪虫』と名の付いたモンスターの数だけ、3回まで連続して発動できるんですよ! さぁ、『悪虫』のコピー効果を発動! 『悪虫の売上減少』を3回発動! この効果であなたのモンスターの攻撃力は1500ポイントダウン!」

『ロスト・ジョブ・ガーディアン』ATK:2400→1400

「そしてバトルです!」

『ロスト・ジョブ・ガーディアン』ATK:1400 VS 『悪虫 アドビー』ATK:1500

「がぁぁっ!」

遊鎧 LP:4000→3900

「そして更に第二の『アドビー』と『セルシー』のダイレクトアタック!」
「させねぇ! 罠カード『許し乞い』! 攻撃宣言を無効にし、相手にカードを1枚ドローさせる!」
「ダメですよ! 速攻魔法発動! 『悪虫の営業妨害』! “罠カード”の発動を無効にし、無効にした数だけ相手に300ポイントのダメージを与えます! そして『悪虫』のコピー効果! 『悪虫の営業妨害』を3回発動します!」
「どういうことだ!? 意味が……ま、まさか?」
「そうです、『悪虫の営業妨害』は“罠カード”を無効にするカード。自分か相手かは問いません。そして自分のカードを無効にすることも可能!」

『許し乞い』←(無効)←『悪虫の営業妨害』←(無効)←『悪虫の営業妨害』←(無効)←『悪虫の営業妨害』

「……結果的に、『許し乞い』は無効化される……!」
「そしてあなたは900ポイントのダメージ、更に『アドビー』と『セルシー』の直接攻撃を受けてもらいます!」
「がぁぁっあああ!!!」

遊鎧 LP:3900→3000→1500→700

「チィっ……『虫』のせいで虫の息、ってか……!」
「ひゃははは! その通りですねぇ! 僕はカードを2枚セットしてターンエンドです!」

「俺のターン! 魔法カード発動! 『かーちゃんの弁当』! このターンのバトルフェイズをスキップする代わりに、自分のライフポイントを1200ポイント回復させる!」

遊鎧 LP:700→1900

「そして『闇魔界の無職 ダークニート』を召喚!」

『闇魔界の無職 ダークニート』☆4 ATK:1800/DEF:1500

「かかりましたね! 永続罠発動! 『召喚規制(サモン・ペナルティ)』! モンスターの通常召喚をしたプレイヤーに500ポイントのダメージを与えます!」
「な、何っ!?」

遊鎧 LP:1900→1400

「ちっ……けど、“プレイヤー”ってことはてめぇももう通常召喚はできねぇってことだろ! それに、このターン、俺は『かーちゃんの弁当』の効果でバトルフェイズを行えねぇが、てめぇの貧弱なモンスターならこいつを立てておけば充分だ!」
「それはどうですかねぇ! 罠カード発動! 『悪虫の無断転載』! 相手モンスターの攻撃力を500ポイントダウンさせ、レベルを1つ下げます。もちろん……」
「『悪虫』の数だけ、3回まで発動できるってか……」
「その通りです! ちゃんと学習してますねぇ! よってあなたのモンスターは攻撃力1500ポイントダウン、そしてレベルは3つ下がります!」

『闇魔界の無職 ダークニート』ATK:1800→300 ☆4→1

(『通常召喚』には俺の主力戦法の『アドバンス召喚』も含まれる……。これじゃあ上級モンスターにアドバンス召喚して体勢を立て直すことも、できてあと2回だけだ……!)
「俺はターンを終了するぜ!」

「手も足も出ませんかぁ? 僕のターン、ドロー! 墓地の『悪虫』を除外することで、このカードを特殊召喚します。『悪虫 ボカロー』」

『悪虫 ボカロー』☆2 ATK:300/DEF:1800

「お終いにしましょうか! 僕は4体のレベル2モンスターでオーバーレイ!」
「エクシーズ召喚……!」
「『MNo.44 複製竜トランスクリプト』をエクシーズ召喚!」

『MNo.44 複製竜トランスクリプト』★2 ATK:1000/DEF:2800

「エクシーズ召喚は特殊召喚なので『悪虫の無断転載』の効果は発動しません。せっかくなので教えてあげましょうか、『トランスクリプト』はエクシーズ素材を1つ取り除き、自分が発動した魔法・罠をの効果を再び発動することができます。また、エクシーズ素材を2つ取り除き、相手の発動した魔法・罠を無効にします。これであなたの魔法・罠も封じられたわけです!」
(ひひひ……そして僕の手札には『進化規制(アドバンス・ペナルティ)』のカードもある……! このカードは相手がアドバンス召喚を行った時、1000ポイントのダメージを与える。仮に一度で仕留められなくても、『トランスクリプト』の効果で連続使用すればいいだけのこと……!)
「『トランスクリプト』は攻撃が得意なモンスターではありませんのでね、僕はターンを終了します」

(召喚も魔法・罠も封じられて……逆転の手は……)
「俺のターン、ドロー……」
(来た!)
「俺は『無職妖怪イエデズ』をおまえの場に守備表示で特殊召喚する!」
「何!? 僕の場に?」

『無職妖怪イエデズ』☆6 ATK:0/DEF:4000

「そして『イエデズ』の効果発動! このカードが相手の場に特殊召喚された時、相手のモンスター1体のコントロールをこのターンのエンドフェイズまで得る!」
「まさか……僕の『トランスクリプト』を……!」
「そのまさかだぜ! おまえのエクシーズモンスターが無効化できるのは魔法・罠だけ! さぁ、おまえの手札に俺の『イエデズ』の特殊召喚を止めるカードがあるなら発動してみな!」
「くっ……!」
「ないのか? ないなら遠慮無く、おまえのモンスターをもらうぜ! そして魔法カード発動! 『無職複製術』! 自分の場の攻撃力500以下の通常モンスター1体を選択して発動する! 自分の場に『無職クローン・トークン』を3体まで特殊召喚する!」

『無職クローン・トークン』☆1 ATK:0/DEF:0 ×3

「そして速攻魔法発動! 『無職の追い出し』! 自分の場のレベル1の通常モンスターをリリースし、相手に1000ポイントのダメージを与える! 俺は『無職トークン』をリリース! トークンは効果の有無によらず、常に通常モンスターとして扱うってウィキに書いてあるぜ! 喰らいな!」
「ぎゃぁぁぁああ!」

メガネ LP:4000→3000

「そしててめぇから奪い取った『トランスクリプト』の効果発動! エクシーズ素材を1つ取り除き、自分が発動した魔法カードの効果を更に追加発動! もう一丁、『無職の追い出し』を発動! 『無職トークン』をリリース! 以下略! 『無職トークン』3体目、そしててめぇの『悪虫の無断転載』でレベルが1になった『ダークニート』をリリース!」
「ぎゃぁぁぁあああ!!!」

メガネ LP:3000→0

「俺の勝ちだぜ……!」
「ちくしょう! 僕の戦略は完璧だったのに!」
「このカードは……? 『進化規制』? アドバンス召喚メタなんて今時……まるで俺のデッキを知ってたみたいな……」
「ああそうだよ! ARシステムってのは便利だよなぁ! このD・ゲイザーがあればギャラリーでも観客としてデュエルを見れるんだからなぁ! 何も自分のテーマを使いこなすだけが能じゃないんだよ! 相手にメタを刺す、これが勝利の秘訣だね!」
「てめぇ……まさか俺のデュエルを見て、デッキを把握した上でメタを張ってきたのか!」
「ほら、残りのアンティカードだ! もうこんな大会はやめだ! 僕は帰る!」
「……結局メタを刺すつもりが、自分のカードにやられるとはな……。割れ厨は結局自分の身を滅ぼすだけってことか……。ん? このカードは……何だか気に入ったぜ!」

遊鎧 『MNo.44 複製竜トランスクリプト』 他4枚 ゲット!

第五話・完

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☆あとがき☆
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「働いたら負けかな」という言葉を身をもって実感しております。
今回は頑張って行き当たりばったり感を削るために、遊戯王のお約束、
「説明は負けフラグ」をやってみました。
ただでさえミスしやすい架空デュエル小説なのに、
疲れて頭が回らなくて間違いだらけ……。

     

『遊戯王M 第六話』

 やあ! 俺は図画 遊鎧! 無職(28歳)だ!
 そろそろ自己紹介はいいよな?
 前回、メガネ野郎をぶっ倒して一気に10枚の『MNo.』を手に入れた俺だけど……。
「相変わらず、どうすればいいのかわかんねぇな……」
 俺は平日の昼間の町を歩いていた。この時間帯は皆仕事や学校に行ってるから、俺の姿はちょっと浮いてるかも知れないけど、俺も無職をやって長いからもう気にしない。
「うっ……」
 突然、俺はもよおしてきた。そういえば(昼頃)起きてから一度もトイレに行ってなかった。辺りをキョロキョロと見渡す。そうだ、確かこの辺に……!
 俺がなるべく膀胱を揺らさないように小走りで移動すると、近くの公園に着いた。ここに公衆トイレがあったはずだ。
 俺がトイレ目掛けて走り寄る最中、ふとトイレの脇に目をやると……。
「ウホッ!?」
 トイレの近くのベンチに、青いつなぎを着たいい男が座ってこちらを見ていた。これは……面白いけどちょっとヤバい状況かも知れない。ここのトイレは諦めて逃げよう、俺がそう思った時には既に遅かった。
「やらないか」
 男がつなぎのホックを外して、胸板に装着されたデュエルディスクをこちらに見せて来た。
「あんた……デュエリストか?」
「ただのデュエリストじゃないぜ。セカンドステージ審査委員でもある」
「セカンドステージ……?」
 俺が思わず鸚鵡返しに聞き返すと、つなぎの男は答えた。
「この大会は本来ノンケ……じゃない、普通の一般人は参加できないんだ。それなりの“素質”を持った奴じゃねぇとな。セカンドステージは、そんな奴らに絞って行われるから、それを試すのが俺の仕事さ。本職は自動車整備工だがな」
 俺は咄嗟に思い返すが、特にこの大会の参加者に共通点は思い付かなかった。それは俺が何か見落としてるのか、それとも“セカンドステージ”と対比させて言うなら今までの“ファーストステージ”ではこのつなぎの言う“素質”を持ってない奴らも結構いたのか、はたまたこのつなぎの言うことが嘘という可能性もある。
「ほら、さっさと始めようぜ。それと、一応念のため……この審査デュエルでは、エクストラデッキにおまえのデッキでエクシーズ召喚できる『MNo.』のカードを必ず入れろよ?」
「あ、ああ……わかった。それじゃ……」
「「デュエル!」」

遊鎧 LP:4000 つなぎ LP:4000

「先攻はもらおうか、ドロー。俺は『Gay-Borg(ゲイボルグ) タカカズ』を召喚するぜ」

『Gay-Borg タカカズ』☆3 ATK:1000/DEF:1800

「手札から『Gay-Borg ヒダカ』を『タカカズ』に装備するぜ」

『Gay-Borg ヒダカ』☆3 ATK:900/DEF:1400

「『Gay-Borg』は同じ名前の付いたモンスターの後ろにくっ付ける効果があるぜ。そして合体した『Gay-Borg』はレベルと攻守が合計される」
「【甲虫装機】じゃねぇか!」
「まあ、似たようなもんだな。俺は装備状態の『ヒダカ』を解除し墓地へ送ることで、デッキからレベル3以下の『Gay-Borg』を手札に加える。そして『タカカズ』の効果発動、このカードに装備されていた『Gay-Borg』が墓地に送られた場合、手札から『Gay-Borg』1体を特殊召喚できるからな。俺は『Gay-Borg ミチシタ』を特殊召喚」

『Gay-Borg ミチシタ』☆3 ATK:1200/DEF:400

「そして魔法カード、『テラ・フォーミング』を発動してフィールド魔法『エクシーズ・リミット・バトル』を手札に加え、そのまま発動するぜ。このカードがある限り、ノンケなモンスター……エクシーズモンスター以外は攻撃宣言できねぇからな。それと、このカードはカードの効果を受けない。俺はカードを1枚セットしてターンエンドだ」
(レベルの同じモンスターが並んだのにエクシーズ召喚しなかった……?)

「俺のターン、ドロー!」
(なるほど、あのフィールド魔法カードがあるから、エクストラデッキにエクシーズモンスターである『MNo.』を入れるように言ってきたのか……。事前に知らせる辺り、一応は審査委員ってだけあって公平ってわけか。……不本意だが、俺もエクシーズ召喚を狙うしかねぇ……)
「俺は『不況に翻弄されるニートの剣士』を召喚!」

『不況に翻弄されるニートの剣士』☆4 ATK:1400/DEF:1200

「そして速攻魔法、『クラスの下層グループ』を発動! 自分の場にレベル4以下の通常モンスターが召喚・特殊召喚に成功した場合、手札から同じレベルを持つ通常モンスターを特殊召喚する! 俺は『自宅という砦を守るニート』を特殊召喚!」

『自宅という砦を守るニート』☆4 ATK:1400/DEF:800

「ルールだってんなら、やってやるぜ! 2体のレベル4通常モンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚! 現れろ、『MNo.39 透過竜クリアドラゴン』!」

『MNo.39 透過竜クリアドラゴン』★4 ATK:2500/DEF:2000

「それがおまえの『MNo.』か……」
「すごく大きいだろ。今の今まで使わなかったけどな! こいつは効果を持ってないエクシーズモンスター。同じ効果なしのランク4なら『ジェムナイト・パール』がいるし、俺の十八番のアドバンス召喚で『デーモン』を召喚した方が使いやすい。っていうか、単純にシンクロとかエクシーズって召喚方法は好きじゃねぇんだよ。いくぜ、バトルフェイズ! 『クリアドラゴン』で『タカカズ』を攻撃!」
「おっと、まだ早いぜ! 罠カード発動『ノー・ノンケ』! 種族の違うモンスターからの攻撃宣言を無効にするぜ。俺の『タカカズ』は獣戦士族、おまえの『クリアドラゴン』はドラゴン族だから攻撃宣言は無効になるぜ」
「チッ……。俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ!」

「俺のターン、ドロー。さて、おまえのモノも見せてもらったし……こっちのも見せてやるとするか。墓地の『ヒダカ』を『タカカズ』に装備。更に手札から『スナムラ』を『ミチシタ』に装備するぜ。これで『タカカズ』と『ミチシタ』のレベルは6だ」
「来るか! エクシーズ召喚……!」
「焦るなよ。俺は手札から魔法カード『薔薇族』を発動するぜ。自分の場のレベル・種族が同じモンスター2体のレベルを3つまで上げる。俺はレベル6になってる『タカカズ』と『ミチシタ』のレベルを3つ上げる。これでレベルは9! いくぜ、レベル9のモンスター2体でオーバーレイ。『Gay-Borg ビッグマグナム』をエクシーズ召喚」

『Gay-Borg ビッグマグナム』★9 ATK:4000/DEF:0

「す……すごく……大きい……! けど、『MNo.』じゃねぇじゃねぇかよ!」
「審査委員は『MNo.』を持ってねぇんだ。いくぜ、『ビッグマグナム』の効果発動。このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、バトルフェイズをスキップすることで相手ライフを半分にするぜ」
「な、何だ……ARビジョンが……!? それに、この感覚は……?」
「さぁ、感じな!」

遊鎧 LP:4000→2000

「がぁぁぁああっ! かはっ!」

 何だこりゃ……! マジで痛ぇ! ARビジョンの迫力が見せる“気のせい”の痛みじゃねぇ! 本当に命を削られるような痛みだ……!

「どうだ? これが本物の“デュエル”だぜ。感じるだろ?」
「ああ……感じるぜ。まさに“フィール”だな……!」

 一体どういう仕掛けかはわからない。だが、これでは“負けた方は命を落とす”なんて突然言われても不思議じゃねぇ。

「『ビッグマグナム』にはもうひとつデメリットがあるんだ。この効果を使用したターンのエンドフェイズに守備表示になる。俺はカードを1枚セットしてターンエンドだ」

「俺のターン、ドロー!」
(『ビッグマグナム』の守備力は0……。『クリアドラゴン』の攻撃が通れば破壊できるが……問題はあのセットカードだ。だが、手札に除去する手段はねぇ……)
「迷ってるだけ無駄だぜ! 俺は装備魔法『10年越しの無職歴』を『クリアドラゴン』に装備する! このカードは効果モンスター以外のモンスターに装備し、守備貫通を付加するぜ。そして守備モンスターを破壊した時、相手に500ポイントの追加ダメージを与える! どうだ、『アームズ・ウィング』も真っ青だ! いくぜ、『クリアドラゴン』で『ビッグマグナム』を攻撃!」
「させられねぇな。罠カード発動、『ひとつの青春が終わった』! 相手のエクシーズモンスターの攻撃を無効化するぜ。その代わり、相手のモンスターにエンドフェイズまで、1ターンに1度、エクシーズ素材を1つ取り除いてカードを1枚ドローする効果を付加するぜ」
「何!? ってことは……効果が付加されたせいで俺の『10年越しの無職歴』は条件を満たさなくなって破壊される……!」
「そういうことだ」
「ちっ……! こんな効果、必要ねぇ! 俺はカードを1枚セットしてターンエンドだ!」

「俺のターン、ドロー。ちょっと手札が足りねぇな。俺は魔法カード『男狩り』を発動するぜ。墓地の同じ種族のモンスターを3体除外して2ドロー。いくぜ、『ビッグマグナム』の効果発動。エクシーズ素材を取り除いて相手のライフを半分にする」
「がぁぁぁああああああ!!!」

遊鎧 LP:2000→1000

(くっ……ライフが減っていくに連れて、痛みもハンパじゃなくなってきやがったぜ……。こりゃ、正直ヤベェな……)

「さて、『ビッグマグナム』の効果で俺はバトルフェイズを行えない。そこで魔法カード『死のロンド』を発動。自分の場のモンスターを全て攻撃表示にする。この効果で攻撃表示にしたモンスターはこのターン攻撃できねぇが……関係ねぇな」
(本格的にヤベェな……意識が……遠のいて……。呼吸するのも苦しいぜ……)
「おいおい、顔色が悪いぜ? おまえにゃ、このガチなデュエルは厳しかったか? まあ、ここで勝てるかどうかはおまえ次第だ。おまえに“資格”があるなら、この状況を打開できるはずだぜ。さぁ、おまえの“ガチ”を見せてみろ……!」
(俺の……本気……)

 心臓が高鳴る。
 耳の奥、いや、頭の中に声が聴こえる。ああ、俺もとうとう統合失調症かぁ……。
『私の力が欲しいか……? その代わり、おまえの最も大切なものをもらう……』
 何を言ってるんだ? 誰だ、こいつは……?
 けど……。
『俺はそもそも、大切なものなんて何も持ってねぇ。だから、そんなのは何にも怖くねぇ。それに……』
『それに……何だ?』
『俺にとって、最も大切なのはデュエルで勝つことだ!』
『その言葉に、後悔はないな? ならば、おまえの覚悟を試させてもらおう……!』
 瞬間、俺は全てを理解した。力を得るための、方法を……!

「聞こえたぜ……! あんたの言う“資格”、俺は持っていたみたいだ……! いくぜ! 俺一人でオーバーレイ! 俺一人で、職歴を再構築! カオスニートエクシーズ!」

 俺は天高く飛翔する。全身が闇の中で金色に輝く。
 やがて眩い閃光が収まると、俺は金色のブリーフ一枚の姿に変わっていた。

「これが俺の真の力、“ニート”だ!」
「やるじゃねぇか……。“かつて一度も働かず、今も働いておらず、将来においても働く意志のないデュエリスト”に与えられる力……使いこなせたか……!」
「いくぜ、ニートはドローカードすらオリカにすり替える! ニートドロー! 俺は魔法カード『RUM(ランクアップむしょく)-ニート・フォース』を発動! 『MNo.39 透過竜クリアドラゴン』をランクアップさせる! オーバーレイネットワークを再構築! カオス・エクシーズ・チェンジ! 無垢なる輝きが、今混沌の闇を照らす! 純真なる心を強さに変えて、世界の悪を打ち砕け! 『CMNo.39 透過竜王クリアオーラ』!」

『CMNo.39 透過竜王クリアオーラ』★5 ATK:2500/DEF:2000

「『クリアオーラ』の効果発動! このカードがエクシーズ召喚に成功した時、このカード以外の効果を全て無効化する! そしてクリアオーラの効果発動! このカードが『MNo.39 透過竜クリアドラゴン』をエクシーズ素材としている場合、エクシーズ素材を1つ取り除き、そのエクシーズ素材となったカードが元々効果モンスター以外だった場合、その攻撃力分このカードの攻撃力をアップさせ、その守備力分相手フィールド上のモンスターの攻撃力をダウンさせる! 俺は『クリアオーラ』の素材を3つ取り除く! 取り除いた素材は全て元々が効果モンスター以外のモンスター! よって『クリアオーラ』の攻撃力アップ!」

『CMNo.39 透過竜王クリアオーラ』ATK:2500→7800

「そして、おまえの『ビッグマグナム』は攻撃力がダウンする!」

『Gay-Borg ビッグマグナム』ATK:4000→0

「いくぜ! 『クリアオーラ』の攻撃! “無色のクリアストリーム”!」

つなぎ LP:4000→0

「あぁぁぁあああ!!!」
「俺の勝ちだ……!」
「……あんた、確かに“資格”を持ってるみてぇだな……。『MNo.』の真の姿を開放できるのがその証拠だ……。10枚の『MNo.』を集めて真の力で俺に勝った、おまえは“セカンドステージ”進出だ。おめでとう……」
「おい、大丈夫か!?」
 いつの間にか、俺の姿は元に戻っていた。
「ガチデュエルはさすがの俺でも少々堪えるんでな……。だが、これでも俺は審査委員だ。しばらく休めば平気さ。それより、他の連中の審査が終わったら迎えが行く。それまでデッキでも調整して待ってるんだな……」
「セカンドステージ……ああ、わかった……!」

遊鎧 セカンドステージ進出!

第六話・完

     

『遊戯王M 第七話』

 やあ! 俺は図画 遊鎧! 28歳のデュエリストだ!
 前回、審査委員って名乗るつなぎの同性愛者っぽい男に勝って、俺はセカンドステージ進出権を得たらしい。
そのつなぎの男の言ってた“迎え”が来るまで家に引きこもってたんだが……。
「もう三日じゃねぇか……」
 一向に音沙汰がねぇ。俺はイライラしていた。
 そんな時、ドアがノックされた。
「遊鎧……いるの?」
「あぁっ!? うるせぇババア!」
 母親だ。まだ食事が運ばれてくる時間じゃない。どうせまた将来がどうのこうの、就職がどうのこうのってお説教に決まってる。
「あのね、遊鎧にお客さんが……」
「客? 出るからさっさと消えろよ」
 母親がドアの前から去ったのを気配で確認すると、俺は足音を忍ばせて玄関の前まで向かった。そっとドアスコープで外を見ると、黒服の男が立っていた。ゆっくりと、ドアチェーンを掛けたまま数センチだけドアを開く。
「図画 遊鎧様ですか?」
「……あんたは?」
「バトルタウン運営委員会の者です。セカンドステージのお迎えに参りました」
「ホントか!?」
 黒服の男は頷いた。
「はい。つきましては、ご準備をお願い致します。セカンドステージは一週間程度、泊まりがけでの開催を予定しておりますので」
「わかった、ちょっと待っててくれ」
 俺はドアを閉めると、部屋に戻りデッキとデュエルディスク、それとリュックにゲーム機やらを適当に詰め込んで戻った。
「準備できたぜ」
 俺が玄関から外に出て、黒服に話しかけた。
「それではこちらへどうぞ」
 そこには一台の軽トラが停まっていた。
「……こういう場合、ベンツとかじゃねぇのか?」
「生憎、予算に限りがございますので」
 俺は渋々軽トラの助手席に乗り込んだ。軽トラである意味、あるのか?
「恐れ入りますが、これをお着け頂けますでしょうか?」
 運転席に座り込んだ黒服が、俺に何かを差し出してきた。それはアイマスクのようだった。
「別に、眠くねぇけど」
 ここ三日、部屋でゴロゴロしていたので睡眠は充分に取っている。
「いえ、規則で行き先をお教えするわけにはなりませんので、ご着用をお願い致します」
 俺は口を尖らせながらもおとなしくアイマスクを着けた。
「それでは参ります」
 黒服がそう言うと、やがて車のエンジンが掛かる音がした。いくら眠くないと言っても、視界を塞がれてやることもなければ自然と眠くなる。俺はデジタルオーディオプレイヤーを取り出すと、イヤホンからアニソンを流しながらボーっとしている内に眠ってしまった。

「遊鎧様、起きてください」
 黒服の声で目が覚めた。
「これ、取っていいのか?」
「構いません」
 俺がアイマスクを取ると、そこは港だった。
「へぇ、港か。船にでも乗るのか? まるで王国編だな」
「はい。これからあちらに停泊中の船にご乗船頂きます」
 黒服に促され、俺はコンクリートで固められた港に降り立った。黒服が向かう先には、無駄にでかくて豪華そうな船が停まってる。いかにも豪華客船、って感じだ。タラップの周りに、人の群れがある。
「あちらでお待ちください」
 俺は人の群れの中に案内された。キョロキョロと辺りを見回すと、ほとんどの奴がデュエルディスクを付けている。中にはカードを見ている奴もいる。
(ははぁん……。こいつらがセカンドステージ進出者だな……)
 しばらくすると、別の黒服の男がやって来た。
「お待たせ致しました。セカンドステージ進出おめでとうございます。これより、セカンドステージの舞台へとご案内致します」
 そう言って、黒服がタラップを上がって行く。全員がそれに続いた。
「おっととっ!」
 俺は途中の段差でつまづき、転びそうになった。あぶねぇな……。
「あっ!」
 同時に、隣で小さな声が上がった。同じく段差でつまづいた奴がいるらしい。しかし運動神経が鈍い割に何とか体勢を立て直した俺と違い、そいつはほとんど膝を着くように転んでしまった。辺りにカードが散らばる。
 少し悩んでから、俺はしゃがみこんでカードを拾ってやった。
「ほら、カード」
 俺が拾い集めたカードを差し出す。
「あ、ありがとうございます……」
 気の弱そうな男だった。それほど歳もいってないだろう。下手したら高校生くらいかも知れない。
「自己申告だけど、なるべくカードは見ないように気を付けたからな。デッキを盗み見た、とか後でケチが付いたら嫌だしな。それと、落ち着いて念のためカードの枚数を確認しておけよ? 見落としがあるかも知れないし、俺がガメた可能性もあるからな」
「そんな……ご親切にして頂いた方を疑うなんて……」
「ばーか、原作の城之内はそれでどうなったよ? いいから、相手を疑うのもルールとマナーだぜ? デュエルディスクのオートシャッフルを使わない時は、シャッフルした後は相手がカットするのが大会のルールだろ?」
 気の弱そうな少年は照れたように下を向くと、ゆっくりとカードを数え始めた。
「ありがとうございました。全部ありました」
「なら、急ごうぜ。置いて行かれる」
「あの……!」
「ん?」
「よろしければ、お名前を……」
「俺か? 俺は遊鎧だ」
「遊鎧さん、ですか。僕は貝原 遊参です。もしセカンドステージで決闘することになったら、その時はよろしくお願いしますね」
「遊参か。よろしくな!」
 そして俺と遊参は急ぎ足で集団の後を追った。

 俺達は船のホールの中に案内された。
「すげぇ……豪華だぜ……!」
「ここがセカンドステージの舞台なんですかね……」
 俺が感嘆の声を上げる。遊参がそれに答えた。
「それではセカンドステージのルールを説明するまえに、身体検査を行いますので皆様、順番にお部屋へお越しください」
「身体検査ぁ……?」
 俺が怪訝に思っている内に、一人が呼ばれて脇の個室へ連れて行かれた。しばらくすると出て来る。
「図画 遊鎧様」
「お、おう」
 俺の名前が呼ばれた。俺が大人しく個室に入って行くと、中には黒服がいた。服を脱ぐように言われ、仕方なく大人しく服を脱ぐ。黒服は脱いだ服や俺の体を調べていた。
 何だか非常に気持ちが悪い。
「失礼ですが、現金が入っているのはこちらのみですね?」
 そう言って、俺の財布を示す。
「ああ、そうだが」
「それでは、お手持ちの現金から四千円以上、一万二千円以下まで船内に持ち込めます。残りは預からせて頂きます。尚、所持金が四千円以下の場合はその旨をお伝え下さい」
 俺はしばらく考えた。こいつらの意図はわからないが、確か所持金は家を出て来る時に少し多めに持って来たから、三万はあるはずだ。どうせ取り上げられるなら、少しでも多く自分で持っていた方がいいだろう。
「なら、一万二千円」
「かしこまりました、失礼致します」
 そう言って、黒服が俺の財布から勝手に一万円札を二枚抜き取り、代わりに千円札を三枚と五千円札を一枚、財布に戻した。そして俺に見えるようにわざわざ千円札で十二枚、一万二千円を封筒に入れると、俺に差し出してきた。
「こちらが、船内に持ち込める現金になります」
「どうでもいいけどよ、そろそろ服着れねぇのか?」
「失礼致しました。どうぞ」
 俺は服を着ると、封筒を受け取って部屋を出た。

 やがて、全員が身体検査を受けた。内容が俺と同じなら、全員財布を取り上げられて、所持金は四千円以上、一万二千円以下の状態なのだろう。
「それではルールを説明します。まず、当然これから行うのはデュエルの大会です。しかし特殊ルールにより、皆様の現金がライフポイントとなります」
 周囲が途端にざわめき出す。
「デュエルでは所持金から4000ポイント以上のライフを支払わなければなりません。もし所持金が四千円以下の場合、デェエルを行うことはできません。その場合、リタイアするか、二つの救済措置を用意しております。まずひとつ、こちらで四千円まで融資したします。ただし利息は一時間で一万円になります」
「暴利じゃねぇか!」
 サラ金規制法もミナミの帝王も真っ青だ。
「ルール上仕方ないのです。もしくは、こちらのメニューに書かれたアルバイトをすることができます」
 そう言って別の黒服の方を手で指す。黒服が持っているメニューには『皿洗い』や『掃除』などと書かれている。どれも時給は概ね五百円だった。
「最低賃金割ってるぞ!」
「こちらもルール上仕方ないのです。そして、デュエルの勝者は相手のデュエル開始時のライフポイントに相当する額の現金を手に入れることができます」
「賭博罪に抵触してんじゃねぇか!」
「ルール上……少し静かにして頂けませんでしょうか? 失格にしますよ。そして、一週間以内に先に現金十万円を手に入れた者二人がサードステージ、決勝戦へ進むことができます。なお、宿泊するための部屋はこちらでご用意したしますが、皆様は本船のサービスの一部を現金でご利用することができます。以上になります。それではただいまより、セカンドステージを開始致します!」
 しばし俺が呆然としていると、遊参が話しかけてきた。
「期間は長いです。とりあえず、寝泊まりできるっていう個室を下見してきませんか?」
「それもそうだな……」
 俺達は個室の場所を尋ねると、そこへ向かった。

 個室は地下にあった。ほとんど下っ端船員用の部屋みたいで、豪華客船の面影はない。
 部屋の中ももしかしたら倉庫だったんじゃないだろうか。空っぽの部屋にマットレスが一枚敷いてあるだけだった。そこにまるで刑務所みたいに、便器と水道だけがある。蛇口を捻ると透き通った水が出たので、これは自由に利用できるようだった。
 通路に沿って左右に全部で六部屋ある個室、その突き当りに、券売機があった。『アンパン』だの『カップラーメン』だの、果ては『歯ブラシ』や『週刊誌』までいろいろある。どれも定価の倍以上の値段だった。
「飯が食いたかったら、これを買えってことか……」
「そうみたいですね……」
 その隣には、受話器がひとつ壁にかかっていた。その脇のプレートに、『アルバイト希望の方はこちらまでお申し付け下さい』という一文と、アルバイトの内容と時給が書かれている。
「とんでもないところに来ちゃいましたね……」
「まあ、何が起きてもカードゲームではよくあることさ。デュエルは何でもありだからな」
「遊鎧さん……」
「何だ?」
 遊参が沈痛な面持ちで語り始めた。
「僕……リタイアしようと思うんです……」
「おいおい、まだセカンドステージは始まったばっかりだぜ?」
「僕にはできる気がしません……。僕は心も体も弱くて、学校にも行けないし、働くこともできないダメな人間です。そんな僕が、こんな厳しいルールで勝ち残るなんて無理です……」
 そう言って俯く遊参。
「バカ野朗! 俺だって高卒だ。それに、今までたったの一度も働いたことなんてねぇ。おまえ、この大会のルールをもう忘れちまったのか? 借金したり、働いたりするのはライフがなくなった時、つまり負けた時だけだ。要は勝ちゃあいいんだよ」
「僕には勝てる自信も……」
「大バカ野朗! おまえはファーストステージを勝ち上がったんだろう? 十枚の『MNo.』を集めたんだろう? 何でその実績を信じない? そりゃあ、俺だって高校入試に受かった時のことなんて、今じゃ何の自慢にもならねぇ程落ちぶれちまったけどな、とどのつまり、俺らのやってることはデュエルだ。自分を、自分のデッキを信じろ。それができないなら……確かにおまえはリタイアするべきだ。ただし、その時はデュエリストを辞めるんだな」
「遊鎧さん……」
 少し言い過ぎたかと思ったが、遊参はしばらくして顔を上げた。
「僕、やってみます。僕は学校にも行けないし、働くこともできないけど……デュエルだけは負けたくないです!」
 俺はニッと笑って応えた。
「それでこそデュエリストだぜ。決めた、決勝の相手はおまえだ。さぁ、頑張ろうぜ!」
 そう言って俺が背中を向けようとすると、遊参が呼び止めた。
「待って下さい、これを……」
 遊参が差し出して来たのは、一枚のカードだった。
「これは……?」
 俺はそれを反射的に受け取った。
「それ、遊鎧さんが使って下さい。きっと、遊鎧さんを助けてくれますから……よかったら、デッキに入れてやって下さい」
 俺はそれをデュエルディスクのデッキホルダーに差し入れた。
「ありがとな!」
 こうして、俺のセカンドステージが始まった。

第七話・完








     

『遊戯王M 第八話』

 やあ! 俺は図画 遊鎧! 主婦って実際は無職って扱いらしいけど、俺もデュエリストって肩書きを取られたら正直無職だと認めざるを得ない28歳だ!
 セカンドステージが始まったんだけど、ルールはややこしいから前の話を読んでくれ。
「さて、と……。ふらふらしてても何も始まらねぇ。ひたすらデュエルをするしかねぇな。まあ、一万二千円持ってるから、最悪三回までは負けてもいいわけだし……」
 そう独り言を言いながら、俺は考えていた。
 このセカンドステージの参加者はそれなりの人数がいた。セカンドステージの進出条件が十枚の『MNo.』を集めることだとあのつなぎのいい男は言った。
 肝心の『MNo.』が何枚あるのかわからないが、アニメのようにとりあえず百枚としておこう、するとセカンドステージ参加者は十人いることになる。
 この十人の内、一週間以内に先に十万円を稼いだ二人が決勝戦、サードステージに進出できるってわけだ。
 俺の所持金は一万二千円、つまり後八万八千円稼がなきゃならない。一回四千円だとすると、最低でも二十二回も勝たなきゃならないのか……。
「おい、そこの君」
「ん?」
 振り返ると、屈強そうな男が立っていた。
「俺に話しかけてくるってことは……あんた、セカンドステージの参加者、デュエリストか!」
「その通りだ。よければ是非デュエルをしようじゃないか」
「いいぜ、受けてやる! ライフはいくら賭ける?」
「最初の勝負だ、4000でどうだ?」
「いいぜ、それじゃ……」
「「デュエル!」」

遊鎧 LP:4000 VS 男 LP:4000

「私の先攻、私はライフを3000ポイント払う!」
「な、何だと!?」

男 LP:4000→1000

「そしてこのカードを発動する! 永続魔法、『生活保護』を発動! このカードはドローフェイズ時のドローカードを2枚にし、更に1ターンに2回の召喚権を得る! 更に自分の場のモンスターは攻撃力は500ポイントアップする! そして相手は……」
「まだあんのかよ!」
「相手は、エンドフェイズにデッキからカードを5枚墓地に送る!」
「クソッタレが!」
「私は『BF-チョウナン』を召喚!」
「『BF』!? ってあの『ブラックフェザー』か!?」
「残念だが、これは『ビッグファミリー』と読む」

『BF-チョウナン』☆4 ATK:1800/DEF:600

「更に私は『生活保護』の効果でもう1体、モンスターを召喚できる! 『BF-ジジョ』を召喚!」

『BF-ジジョ』☆3 ATK:1400/DEF:700

「そして自分の場に『BF-』が2体以上存在するので、このカードを特殊召喚! 『BF-サンナン』!」

『BF-サンナン』☆2 ATK:1200/DEF:300

「先攻は攻撃できない、私はカードを1枚セットしてターンエンドだ」

「俺のターン、ドロー!」
(大量展開はしてきたが……レベルはバラバラ、エクシーズ召喚はしてこなかった……。とりあえずは……)
「まずはその邪魔なカードを破壊させてもらおうか! 俺は『臭いクローンの戦士』を召喚!」

『臭いクローンの戦士』☆1 ATK:100/DEF:0

「『臭いクローンの戦士』の効果を発動! 場のこのカードをリリースすることで、相手の場の魔法・罠カード1枚を破壊する! 俺が破壊するのは『生活保護』!」
「甘い! 『BF-』の共通効果発動! 自分の場に3体以上の『BF-』が存在する場合、1ターンに1度、相手の魔法・罠・効果モンスターの効果または攻撃宣言のどれかひとつを無効にする!」
「くそっ……、不発か……。なら俺は『サイバーワールド・ニート』を特殊召喚!」

『サイバーワールド・ニート』☆5 ATK:2000/DEF:1500

「このカードは相手の場にモンスターが存在し、自分の場にモンスターが存在しない場合に特殊召喚できるぜ!」
「だが、私のモンスターは『生活保護』の効果で攻撃力を500ポイントアップしている!」
(そうだったぜ……。だが、何とか奴の場のモンスターを減らせれば、『生活保護』を破壊するチャンスもあるってことだ……!)
「俺は手札から魔法カード、『怒りの進軍』を発動! デッキからカードを3枚墓地に送り、自分の場のモンスターの攻撃力を次の相手ターンのエンドフェイズまで1000ポイントアップする!」

『サイバーワールド・ニート』ATK:2000→3000

「いくぜバトルフェイズ! 『サイバーワールド・ニート』で『BF-チョウナン』を攻撃!」

『サイバーワールド・ニート』ATK:3000 VS 『BF-チョウナン』ATK:2300

「むぅぅうっ!?」

男 LP:1000→300

(あっさり通した……!?)
「ふふふ……この瞬間、罠発動! 『緊急手当』! 相手とのライフポイントの差が10倍以上になった時、ライフポイントを4000にする!」
「ふざけんな!」

男 LP:300→4000

「そして破壊された『BF-チョウナン』の効果を発動! このカードが場を離れた場合、デッキから『BF-ジナン』を特殊召喚する!」

『BF-ジナン』☆3 ATK:1000/DEF:300

(あっさり攻撃を通したのはこれを狙ってやがったからか……! 魔法罠を使おうにも、奴の場に『BF-』が3体以上存在する限り、1度だけ発動を無効にされちまう……ここはアド損だが仕方ねぇ!)
「俺はカードを1枚セットしてターンエンドだ!」
「『生活保護』の効果でデッキからカードを5枚、墓地に送ってもらうぞ」
「しまった! それがあったか……!」
(デッキデス……! 今の環境じゃ逆に自分の首を締める場合もあるとはいえ……)

「私のターン! 『生活保護』の効果で2枚ドロー! 私は『BF-チョウジョ』を召喚!」

『BF-チョウジョ』☆4 ATK:1600/DEF:700

(まだだ……。奴のデッキは大量展開に特化してる。タイミングを見計らわねぇと……)
「そしてレベル4の『BF-チョウジョ』にレベル2『BF-サンナン』をチューニング!」
「何!? チューナーモンスターだと!?」
「シンクロ召喚! 『BF-ゴッドファザー』!」

『BF-ゴッドファザー』☆6 ATK:2200/DEF:2100

(今か……!?)
「更に『BF-チョウジョ』が場を離れたことで『BF-ジジョ』を特殊召喚! そして『BF-サンナン』の効果で『BF-ヨンナン』を特殊召喚!」

『BF-ジジョ』☆3 ATK:1400/DEF:700
『BF-ヨンナン』☆1 ATK:300/DEF:200

「まだだ! 私はレベル3の『BF-ジジョ』2体でオーバーレイ! エクシーズ召喚、『BF-ゴッドマザー』!」

『BF-ゴッドマザー』★3 ATK:1400/DEF:/2300

「今だ! 罠発動『無職の落とし穴』! 1ターンに2体以上同じ名の付いたモンスターが特殊召喚された場合、特殊召喚された2体目以降のモンスターを破壊する!」
「ならば『BF-』の共通効果で無効にする!」
「それならそれで! いくぜ、墓地の『トリック・シンクロン』の効果を発動! 相手の場に2体以上特殊召喚されたモンスターが存在する場合、墓地のこのカードを除外して相手ターンにシンクロ召喚ができる! 俺はレベル5の『サイバーワールド・ニート』にレベル3『トリック・シンクロン』をチューニング! 俺に汚い召喚方法を使わせたことを後悔しな! 無職の鼓動、今ここに列をなす! 職歴皆無の力を受けるがいい! シンクロ召喚、俺の魂、『ニート・デーモンズ・ドラゴン』!」

『ニート・デーモンズ・ドラゴン』☆8 ATK:3000/DEF:2000

「『ニート・デーモンズ』が場に存在する限り、そのターンのエンドフェイズ時に攻撃宣言したモンスターは破壊されるぜ!」
「いいだろう……どの道打点3000は突破できない。私は『ゴッドマザー』の効果を発動する! エクシーズ素材を1つ取り除き、自分の場に存在する『BF-』以外の『BF-』と名の付いたレベル3以下のモンスターを1体、デッキから特殊召喚する! 私は『BF-サンジョ』を特殊召喚!」

『BF-サンジョ』☆2 ATK:1000/DEF:500

「そして魔法カード発動! 『大家族の喧騒』! 自分の場の同じ名前の付いたモンスターの数だけ、相手ライフに700ポイントのダメージを与える! 私の場にいるモンスターは全部で5体!」

『BF-ゴッドファザー』
『BF-ゴッドマザー』
『BF-ジナン』
『BF-サンジョ』
『BF-ヨンナン』

「よってダメージは3500!」
「がぁぁぁあああっ!」

遊鎧 LP:4000→500

「これでターンエンド。どうだ! これが大家族の力だ! ひとつ教えてやろう、この大会のセカンドステージ進出者の共通点……それは、事情はともかく、今現在“働いていない”ことだ。なぜそのような理由なのかは知らんがな。そして、この大会に勝てば、莫大な賞金が手に入るという」
「何だと……?」
「私は体が弱く、働くことができない。しかし、私にはこのデッキのように……守るべき家族が大勢いる! 私達を守ってくれる国のためにも、私は家族のためにこの大会に勝ってみせる!」
「ふざけんなぁ!」
「何だと?」
「体が弱いくせに、何でそんなに家族を抱えてんだよ!」
「家族を欲すること、子孫を残そうとすること、それは人として当然の欲求だ。そして今、国は未来を担う子どもたちを欲している。私は私自身と、国の欲求に従っただけだ。そんな私は讃えられ、支援され、保護されこそすれ、責められる謂れなどない!」
「それがふざけてるって言ってんだよ! 未来を担う? ふざけんな! てめぇはてめぇのガキに、自分の財布からいくらの金をかけた? てめぇのガキを大学、いや、高校に行かせてやれるのか? 俺の親は、俺が生まれるずっと前から俺の将来を考えて貯金をしてきてくれたんだ! それだけ大事に育てれられた俺でさえ職に就けねぇ。それでも俺の親は……口はうっせぇけど、今も俺を守ってくれてる! てめぇにそれだけのことができんのか! 子が親の脛をかじるのは当然だ! だけど、親が国の脛を……俺の親達が必死で払ってる税金をかじってるようじゃ話にならないぜ! てめぇが自分の子供を幸せにできるって言うんなら……まずはそのふざけた職歴をぶち殺す!」
「何だと……!」

 まるで俺の怒りの叫びに呼応するかのように、俺の体が輝き出す。俺は天高く舞い上がる。

「俺一人で、オーバーレイ! カオス・ニート・チェンジ!」

 そして、金色に輝くブリーフ一枚の姿へと変わる。

「俺のターン! ニートはドローカードすらオリカにすり替える、ニートドロー! 速攻魔法、『定期解約』発動! 自分の場のモンスターを1体をリリースして発動する! リリースしたモンスターのレベルの合計になるよう、自分の墓地からモンスターを効果を無効化して特殊召喚する! 俺は『ニート・デーモンズ』をリリースし、墓地からレベル4の『ロスト・ジョブ・ガーディアン』と『ニート・シールド・ガードナー』の2体を特殊召喚! そして、2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚! 現れろ! 『MNo.39 透過竜クリアドラゴン』!」

『MNo.39 透過竜クリアドラゴン』★4 ATK:2500/DEF:2000

「そして魔法カード『RMU-ニート・フォース』を発動! オーバーレイネットワークを再構築、カオス・エクシーズ・チェンジ! 混沌を無色に変える使者……現れろ、『CMNo.39 透過竜王クリアオーラ』!」

『CMNo.39 透過竜王クリアオーラ』★4 ATK:2500/DEF:2000

「そして俺は手札から『NW(ニートウェポン)-自宅警備棒(セキュリティ・バトン)』を『クリアオーラ』に装備する! このカードは本来モンスターカードだが、『MNo.39』と名の付いたモンスターに装備カードとして装備できる! このカードを装備した『MNo.39』の攻撃力は1500ポイントアップし、戦闘では破壊されず、相手の場のモンスターの数だけ攻撃することができる!」

『CMNo.39 透過竜王クリアオーラ』ATK:2500→4000

「そして、『クリアオーラ』の効果発動! このカードが『MNo.39 透過竜クリアドラゴン』をエクシーズ素材としている場合、エクシーズ素材を1つ取り除き、そのエクシーズ素材となったカードが元々効果モンスター以外だった場合、その攻撃力分このカードの攻撃力をアップさせ、その守備力分相手フィールド上のモンスターの攻撃力をダウンさせる! 俺は『クリアオーラ』の素材を1つ取り除く! 取り除いた素材は『MNo.39 透過竜クリアドラゴン』! よって、てめぇの場のモンスターは全て攻撃力が2000ポイント下がる!」

『BF-ゴッドファザー』ATK:2200→200
『BF-ゴッドマザー』ATK:1400→0
『BF-ジナン』ATK:1000→0
『BF-サンジョ』ATK:1000→0
『BF-ヨンナン』ATK:300→0

「だ、だが『BF-』はモンスター効果を無効化することもできるし、破壊されてもデッキから『BF-』を特殊召喚する! それに、はは、教えてやろう! 『ゴッドファザー』が破壊された時、墓地の『BF-』をエクシーズ素材として『ゴッドマザー』を特殊召喚できる! そして! 『ゴッドマザー』が破壊された時、墓地の『BF-』1体をデッキに戻すことで『ゴッドファザー』を特殊召喚できるのだ!」
「何勘違いしてるんだ……とっくに支援は打ち切りなんだよ……! 『クリアオーラ』がエクシーズ召喚に成功した時、このカード以外の効果は全て無効化した! てめぇの『BF-』の効果は何も使えねぇぜ! ついでに、てめぇの『生活保護』も無効だ」
「何っ!? だ、だとしても、だ! 『ゴッドファザー』以外は守備表示! ダメージは通らない!」
「それならこんなピンポイントメタはどうだ……? 装備魔法『養育費』! このカードを装備したモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した時、500ポイントのダメージを与える! 計算するまでもねぇよな……行くぜ! “無色のクリアストリーム”!」
「がぁぁぁああああ!!!」

男 LP:4000→0

「俺の勝ちだぜ……! まずはてめぇが召喚したモンスターの面倒くらい、ちゃんと見ろよな……」

遊鎧 所持金:12000円→16000円

第八話・完

     

『遊戯王M 第九話』

 やあ! 俺は図画 遊鎧! みんなそろそろ覚えてくれたよな?
 現在、俺の所持金は一万六千円、目標額の十万円まで後八万四千円だ。
「やぁー、こんばんは」
「うおっ!?」
 突然背後から年寄りの声がした。俺は驚いて振り返る。
「な、何だジイさん?」
「よろしければ、私とデュエルしませんかねぇ?」
「デュエル……? あんたも大会参加者か。噂じゃ、この大会は今現在働いてない奴しか参加できねぇらしいけど、ジイさんは隠居の身か?」
「いやぁ、私、本業は工業デザイナーなんですけどね、副業の方が儲かっちゃって。ただ副業の方も冬はあんまり仕事しないもんで、特別にこの大会に酸化させてもらったわけなんですよ」
「まあいいや。それで、アンティはいくらにする?」
「んー……一万五千でどうでしょうか?」
「一万五千か……」
 もし負ければ、俺の残額は千円。最低でも四千円はないと次のデュエルができないルールだから、その場合何とかして三千円を調達しないと事実上俺は失格だ。だが……。
「いいぜ、受けてやる!」
「それでは、始めましょうか……」
「「デュエル!」」

遊鎧 LP:4000 VS 爺 LP:4000

「先攻はもらうぜ! 俺のターン、ドロー! 俺は『クイック・アドバンサー』を特殊召喚! このカードは通常召喚できず、自分が通常召喚を行なっていないターン、手札から特殊召喚できる! そしてこのカードの特殊召喚に成功した時、デッキから更にもう1体、『クイック・アドバンサー』を特殊召喚できる! ただし、エンドフェイズ時にこのカードが場に存在する場合、俺は1体につき1000ポイントのダメージを受けるがな」

『クイック・アドバンサー』☆1 ATK:0/DEF:0

「そして手札から魔法カード『二重召喚(デュアル・サモン)』を発動! おなじみのカードだから説明は要らねぇよな! 『クイック・アドバンサー』をリリースし、来い! 俺のエース! 『デーモンのニート』!」

『デーモンのニート』☆6 ATK:2500/DEF:1200

「そしてもう1体の『クイック・アドバンサー』をリリースし、『ニート・オブ・ドラゴン』をアドバンス召喚!」

『ニート・オブ・ドラゴン』☆6 ATK:2000/DEF:1200

(かっ飛ばしたはいいが、手札消費が激しかったな……。ここは少々不安だが仕方ねぇ……)
「俺はこれでターンエンドだ! エンドフェイズ、墓地に存在する『クイック・アドバンサー』は除外される」

「私のターンですねぇ……ドロー。私は『会社員 Nさん』を召喚しますね」

『会社員 Nさん』☆4 ATK:1800/DEF:1200

「そしてカードを2枚セットしてターンを終わりにしましょうかねぇ……。あ、そうだ。『会社員 Nさん』の効果でエンドフェイズにデッキからカードを3枚まで墓地に送ることができるんですよ。もっとも、1枚もカードを墓地に送らずに『会社員 Nさん』を破壊することもできますけどね。私はカードを3枚墓地に送ります。んー」

「俺のターン! ドロー!」
(攻撃力の低いモンスターを立てたまま……罠を警戒する必要があるな……。だが、今の俺の手札に魔法罠を除去できる手段はねぇ。なら……)
「俺は手札から魔法カード『ツー・サウザンド』を発動! このカードは元々の攻撃力が2000のモンスターの攻撃力をエンドフェイズまで4000にするぜ! いくぜバトルフェイズ! 『ニート・オブ・ドラゴン』で『会社員 Nさん』を攻撃!」
「そこでふと気が付いた、永続罠『真夜中の金縛り』を伏せてたんですねぇ……。このカードが場に存在する限り、アンデット族以外のモンスターは攻撃できないんですよ」
「何だと……!?」
(ロックカードか……。だが攻撃できねぇのは相手も同じ……)
「俺はカードを1枚セットしてターンエンドだ!」

「私のターンですねぇ、ドロー。私は『デザイナー Sさん』を召喚しますね」

『デザイナー Sさん』☆3 ATK:1200/DEF:700

「ですが、私は自分の永続罠『真夜中の金縛り』の効果で、戦士族の『会社員 Nさん』も魔法使い族の『デザイナー Sさん』も攻撃できないんですよねぇ……。なので私はターンを終了します。そしてエンドフェイズに『会社員 Nさん』と『デザイナー Sさん』の効果でカードを……そうだなぁ……6枚墓地に送りましょうかねぇ……。んー、今日も段々と、デッキが減っていきました……」

「俺のターン、ドロー!」
(明らかにロック状態から墓地を肥やしてやがる……。反撃に備えて置かないと不味いぜ……!)
「俺は『ロースペック・ノート』を召喚!」

『ロースペック・ノート』☆2 ATK:800/DEF:0

「そして速攻魔法発動! 『防衛本能』! 自分の場のモンスター1体を表・裏好きな方で守備表示にするぜ! 俺は『ロースペック・ノート』を表側守備表示に! これでターンを終了だ!」

「私のターンですね。ドロー。私は『構成作家 Aさん』を召喚しますね」

『構成作家 Aさん』☆4 ATK:1400/DEF:1600

「そろそろ、彼らの時間ですね……。それでは、始めましょうか……」
「な、何だ……!?」
「これは私の友人が昔体験した話なんですけどね、その人の名前は仮にNさんとしておきましょうか。このNさん、新宿のオフィスでサラリーマンをやってるんですが……」
「突然わけわかんねぇ話を始めるんじゃねぇよ!」
「仕方ありませんねぇ……。それでは私は手札から永続魔法『怪談-ミステリーナイト-』を発動します。この効果で、墓地に存在する『霊』と名の付いたモンスターを自分の場のモンスターに装備することができます。私は3体のモンスターを装備しますね」

『炎に焼かれて苦しむ霊』☆1 ATK:0/DEF:0
『水辺で手招きする霊』☆2 ATK:0/DEF:0
『夜中の電話ボックスにいる霊』☆1 ATK:0/DEF:0

「この霊達に取り憑かれたモンスターは……アンデット族として扱い、攻撃力を半分にしてプレイヤーに直接攻撃できるんですよ……。そして、エンドフェイズに墓地にカードを送らなくていいんですよね……。それでは、始めましょうか……。取り憑かれてしまった『会社員 Nさん』で直接攻撃します」

『会社員 Nさん』ATK:900

「がぁぁぁああ!!!」

遊鎧 LP:4000→3100

「そして、『デザイナー Sさん』の攻撃」

『デザイナー Sさん』ATK:600

「がっ!」

遊鎧 LP:3100→2500

「最後に、『構成作家 Aさん』の攻撃です」

『構成作家 Aさん』ATK:700

遊鎧 LP:2500→1800

「がぁぁぁあああっ!!!」
「どうですか? 楽しんで頂けましたか?」
「クソッ……」
「私はこれでターンエンドです。さぁ、最後のカードを引いて下さい……」

(この状況を突破できるカードは『大嵐』1枚しかねぇ……。だが、このターンのドローフェイズで都合よくデッキに1枚しか入ってねぇ『大嵐』を引き当てられるほどの運命力は俺には……。それに、相手だってそれ用の対策はしてるだろうし……。ダメだ、カードを引くのが怖ぇ……)
「あなたは恐怖に怯えてますね? 霊達の世界に引き込まれてるんだ……。そう、デュエリストはいつでも闘っている時は一人。ですが、そんなデュエリストのすぐ傍にも、霊達はいるんです……」
(デュエリストは、戦ってる時は一人……。そういえば、原作にもそんな話があったっけ……。“見えるんだけど、見えないもの”……。はは、カードが遠ざかって行くぜ……。これに負けたら、1時間1万円の暴利で借金をするか、時給500円でバイトをしなくちゃならねぇ……。俺、働くのか……? 生まれて一度も、雇用形態を問わず働いたことがないのだけが自慢だった俺が……? 嫌だ……、働きたくねぇ……!)
「遊鎧さん!」
 突然の声に、俺が振り向いた。そこにいたのは……。
「遊参……」
「デュエリストは、一人なんかじゃありませんよ。遊鎧さんは、今もたくさんの仲間と闘ってるんです。40枚もの仲間と。見知らぬ誰かがパックで買い、それをネット通販でシングル買いして手に入れ、ネットからパクってきたレシピで組んだ40枚のカード達……それはみんな遊鎧さんの仲間です。得意な局面はそれぞれ違いますが、必ず遊鎧さんを助けてくれます」
「遊参……。わかったぜ! まだ俺のターンは始まってねぇ! 俺はてめぇのエンドフェイズに罠カード『自作自演』を発動するぜ! 俺のフィールドのカードを全て除外する! 俺は『デーモンのニート』『ニート・オブ・ドラゴン』『ロースペック・ノート』を除外する! そして俺のターン!」
(これでもう後戻りはできねぇ……!)
「ドロー! ……悪いが、勝たせてもらうぜ! 相手の場に3体以上モンスターが存在し、自分の場にモンスターが存在しない場合のみ、このカードは特殊召喚することができる! 来い! 『虚眼の独龍(ヒリアイズ・ボッチドラゴン)』!」

『虚眼の独龍』☆8 ATK:3000/DEF:2500

「何ですかそのカードは!?」
「遊参、おまえにもらったカードで勝たせてもらうぜ! 『虚眼の独龍』が特殊召喚に成功した時、手札を全て除外することで相手の場のモンスターを全て破壊する!」
「おえぇぇぇえええ!!!」
「これでてめぇのモンスターは全て破壊した!」
「ですが、私の場には『真夜中の金縛り』が……」
「甘い! 『虚眼の独龍』は自分の墓地の魔法・罠カードを1枚除外することで、相手の場の魔法・罠カードを破壊する! “ボッチ・ノヴァ”!」
「私の『真夜中の金縛り』が……!」
「そして『虚眼の独龍』の最後の効果! 自分の墓地のモンスターカード1枚につき、攻撃力が1000ポイントダウンし、魔法・罠カード1枚につき攻撃力が1000ポイントアップする! 俺の墓地には今効果で除外したカードを除いて、墓地に魔法・罠は3枚! よって攻撃力は3000アップ!」

『虚眼の独龍』ATK:3000→6000

「いくぜ! 『虚眼の独龍』のダイレクトアタック! “孤独のヒリアストリーム”!」
「おえぇぇええええええ!!!」

爺 LP:4000→0

「俺の勝ちだ!」
「やりましたね、遊鎧さん。あの局面で『虚眼の独龍』を引き当てるとは……」
「おまえのお陰さ、遊参」

遊鎧 所持金:16000円→31000円

第九話・完

     

『遊戯王M 第十話』

「ところで、おまえの方は調子はどうだ?」
 俺はいつの間にかデュエルを見ていた遊参に尋ねた。
「お陰様で、何とか今まで連戦連勝です。ただ……」
「ただ?」
 そこまで言いかけて、遊参の表情が曇った。しかし、その続きが遊参の口から発せられる前に邪魔が入った。
「や! こんにちは! 一緒に、やってみようよ☆」
「何だ、この気持ち悪い道化師は……」
「大会の参加者でしょうか……」
「ド○ルドはデェエルに夢中なんだ☆ 一緒に、やってみようよ☆」
「何か、いちいちイライラする野郎だな……いいぜ! 俺が相手になってやる!」
 俺がデュエルディスクを構えると、遊参がそれを制した。
「待って下さい、遊鎧さんは今デュエルをしていたばかりです。相手に戦法がバレている可能性もある。セカンドステージは同じ相手と何度も戦う可能性がありますから、いずれ戦法がバレる可能性はありますが、今は控えた方がいいでしょう……。ここは、僭越ながら僕が相手をします」
「おまえが? 大丈夫なのか? こいつ、ちょっとヤバそうな相手だけど……?」
 俺は心配するが、遊参はにっと笑って答えた。
「大丈夫ですよ。僕だって、ここまで自力で勝ち残ってきたデュエリストです。さぁ、僕が相手になります」
「ゴ-☆アクティブ!」
「「デュエル!」」

遊参 LP:4000 VS 道化師 LP:4000

(遊参のタクティクスは俺も知らねぇ……。一体どんなデッキなんだ……?)
「僕の先攻! ドロー! 僕はモンスターをセット、そしてカードを1枚セットしてターンエンドです!」
(裏守備でセットして終わり……? 随分ゆっくりしたデュエルだな……)

「いくよ。うーん。コレか?」

『バンズ・ウォリアー』☆4 ATK:2000/DEF:0

「“コレか?”じゃねぇよ! ちゃんと宣言しやがれ!」
「仕方ないなぁ。ド○ルドは『バンズ・ウォリアー』を召喚。そして手札から『フィッシュ・オブ・パティ』を装備するよ」

『フィッシュ・オブ・パティ』☆4 ATK:0/DEF:2000

「このカードは自分フィールド上の『バンズ』と名の付いたモンスターに装備できるんだ。このカードが装備されたモンスターのレベルは、このカードのレベル分だけ上がるよ。そして、『バンズ・ウォリアー』をリリース。『パティ』と名の付いたモンスターが装備された『バンズ』と名の付いたカードをリリースすることで、自分のデッキからレベルの同じ『ハンバーガー』と名の付いたモンスターを特殊召喚できるんだ! ド○ルドは『ハンバーガー・オブ・チーズ』を特殊召喚」

『ハンバーガー・オブ・チーズ』☆8 ATK:2300/DEF:1800

「そして手札から魔法カード『バーガー解体』を発動するよ。自分の場の『ハンバーガー』と名の付いたモンスターを選択して、デッキからレベルの合計が同じになるように『バンズ』と『パティ』を墓地に送るのさ! 『バンズ・ウィザード』と『ビーフ・オブ・パティ』を墓地に」

『バンズ・ウィザード』☆4 ATK:0/DEF:2200
『ビーフ・オブ・パティ』☆4 ATK:1900/DEF:1300

(墓地を肥やしてやがる……アレは警戒した方がいいだろうな……)
「行くよ、バトルフェイズ。『ハンバーガー・オブ・チーズ』で裏守備モンスターを攻撃するよ」
「リバース! 僕のカードは『PK(ピースキーパー)-エンジェル』!」

『ハンバーガー・オブ・チーズ』ATK:2300 VS 『PK-エンジェル』DEF:1800

「つい、やっちゃうんだ☆」
「『PK-エンジェル』の効果を発動! このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた時、デッキから『PK』と名の付いたモンスターを1体墓地へ送ることで、手札から『PK』と名の付いたモンスターを特殊召喚する! 僕は手札から『PK-セイント』を特殊召喚!」

『PK-セイント』☆2 ATK:0/DEF:1600

「うーん……。ターンエンドかな?」

「僕のターン、ドロー! モンスターを裏守備でセット。そしてバトルフェイズ。『PK-セイント』で『ハンバーガー・オブ・チーズ』に攻撃!」
「攻撃力の低いモンスターで攻撃? 自爆特攻か!?」
「攻撃宣言時、罠カード発動! 『平和の代償』! このターン、戦闘によるダメージを0にする代わりに、手札とデッキからレベルの合計が8になるようにモンスターを墓地に送る! その後、墓地のモンスターをレベルの合計が6になるように除外する! 僕は4体のモンスターを墓地へ。その後、3体のモンスターを除外! そしてダメージ計算後、戦闘によって破壊された『PK-セイント』の効果を発動! 墓地の『PK』と名の付いたモンスターを特殊召喚し、デッキから『PK』を墓地に送る! 僕は『PK-シャイニング』を特殊召喚……ぐっ……!」

『PK-シャイニング』☆2 ATK:700/DEF:100

「おい! 遊参! 大丈夫か!? どうした!?」
「だ、大丈夫です……。僕はカードを1枚セットしてターンエンド……!」
(このデュエルからおかしな力は感じられねぇ……遊参、一体どうしたんだ……?)

「ド○ルドのターン、ドロー。ド○ルドは『バンズ・アーチャー』を召喚」

『バンズ・アーチャー』☆4 ATK:800/DEF:1200

「そして手札の『ポーク・オブ・パティ』を装備するよ」

『ポーク・オブ・パティ』☆4 ATK:1200/DEF1200

「そして『パティ』が装備された『バンズ』をリリースして、デッキから『ハンバーガー・オブ・テリヤキ』を特殊召喚」

『ハンバーガー・オブ・テリヤキ』☆8 ATK:2200/DEF:2400

「手札に2種類のカードが揃ってれば、デッキからレベル8モンスターがポンと飛んできやがる……恐ろしいけど、その代わりステータスは低めみたいだな……」
「レベル8のモンスター2体でオーバーレイ! ヘッハッハッハッ! エクシーズ召喚! 『MNo.12 猛獲竜 ハンター』!」

『MNo.12 猛獲竜ハンター』★8 ATK:3000/DEF:0

「いくよ、バトルフェイズ。『ハンター』で裏守備モンスターを攻撃するよ。『ハンター』が裏守備モンスターを攻撃する時、ダメージ計算を行わずにそのモンスターを破壊するんだ☆ そして、破壊したモンスターは墓地で効果を発動できないんだ☆」

『MNo.12 猛獲竜ハンター』ATK:3000 VS 『PK-ホーリー』DEF:1200

「くっ……!」
「そして『ハンター』の効果発動。このカードが戦闘でモンスターを破壊した時、1ターンに1度、エクシーズ素材を1つ取り除くことで相手の場のモンスター1体の攻撃力分このカードの攻撃力を上げるか、守備貫通のどちらかを選んでその効果をエンドフェイズまで得ることができるんだ。そして、もう1度攻撃ができるよ。ド○ルドは守備貫通を選択して、『PK-シャイニング』を攻撃☆」

『MNo.12 猛獲竜ハンター』AKT:3000 VS 『PK-シャイニング』DEF:100

「がぁぁっ!!!」

遊参 LP:4000→1100

「つい、やっちゃうんだ☆」
「遊参!」
「……墓地に5体以上の『PK』が存在する時に、2000ポイント以上の戦闘ダメージを受けた時、このカードを手札から特殊召喚できる……! 僕が特殊召喚するのは……『PB(ピースブレイカー)-デスティニー』!」

『PB-デスティニー』☆10 ATK:4000/DEF:0

「よっしゃあ! 大型モンスターだぜ!」
「アラーッ!? うーん……。カードを1枚セットしてターンエンド」

「僕のターン、ドロー! メインフェイズ、『デスティニー』の効果発動! 1ターンに1度、墓地の『PK』を2体除外することで、このカード以外の場のモンスターを全て破壊する! 墓地の『PK』2体を除外し、『ハンター』を破壊する!」
「うーん……」
「よしっ! このままダイレクトアタックが通れば……!」
「つい、やっちゃうんだ☆ 罠カード『偽装錬金-廃棄回収-』発動! 墓地の『バンズ』または『パティ』を効果を無効にして可能な限り特殊召喚して、2000ポイントのダメージを受けるよ」

『バンズ・ウォリアー』☆4 ATK:2000/DEF:0
『フィッシュ・オブ・パティ』☆4 ATK:0/DEF:2000
『バンズ・ウィザード』☆4 ATK:0/DEF:2200
『ビーフ・オブ・パティ』☆4 ATK:1900/DEF:1300
『バンズ・アーチャー』☆4 ATK:800/DEF:1200

「墓地を肥やしてたのはこれが狙いか……! 壁を立てやがった……!」
「なら、『デスティニー』で攻撃!」

『PB-デスティニー』ATK:4000 VS 『バンズ・アーチャー』DEF:1200

「うーん……」
「これでターンエンドだ……」

「ド○ルドのターン、ドロー。いくよ、ハンバーガー4個分くらいのレベルのモンスター4個分くらいでオーバーレイ! ヘッハッハッハッ! エクシーズ召喚! 『MNo.48 圧殺竜プレッシャー』!」

『MNo.48 圧殺竜プレッシャー』★4 ATK:2500/DEF:1800

「いくよ、『プレッシャー』の効果発動。エクシーズ素材を1つ取り除くことで、相手の手札を1枚捨て、場のカードを1枚破壊するよ。破壊する対象は、もちろん『デスティニー』」
「しまった! 今度は遊参の場がガラ空き……手札もねぇ!」
「1枚カードが伏せてあるよね? それは使わないのかな?」
「…………」
「どうしたんだ、遊参……? それはただのブラフか!? 勝てる可能性があるなら使え!」
「…………僕は……場に伏せておいた速攻魔法を発動! 『平和の終焉』! 自分のライフより攻撃力の高いモンスターの直接攻撃宣言時、自分の墓地の『PK』と名の付いたモンスターを2体除外して発動する。除外されている『PK』と名の付いたモンスターでエクシーズ召喚を行い、攻撃対象をそのモンスターに移し替える……」
「なんだ! 逆転のチャンスじゃねぇか!」
「……遊鎧さん……できれば僕は……『デスティニー』で勝ちたかった……。でも……このカードを使うしか、もう僕が勝つ手段は残されてない……。さようなら、遊鎧さん。それと、ごめんなさい……。漆黒の闇が、希望の光を喰らい尽くす! 邪悪な心で世界を恐怖に染め上げろ! エクシーズ召喚、『MNo.96 邪染竜スポイルド』!」

『MNo.96 邪染竜スポイルド』★2 ATK:0/DEF:0

「何だ……? この禍々しい雰囲気は……? 遊参? おい、遊参!?」
「……はぁぁぁぁあああ……やっと“外”に出て来れたよ……。全く、つまらねぇ意地を張りやがって……。どうせテメェは自分じゃ何もできねぇんだ、さっさとオレを呼べってんだよ……」
「おまえは……遊参? 遊参なのか……?」
「あ? ああ……。オレは遊参だよ。間違いなく、な。そんなことはどうでもいいんだよ。ほら、デュエルを続けるぞ。『スポイルド』の効果を発動! このカードが戦闘を行う時、エクシーズ素材を1つ取り除いて発動する! 相手のモンスターの攻撃力を0にし、その数値の半分、このカードの攻撃力をアップする!」

『MNo.96 邪染竜スポイルド』ATK:0→1250
『MNo.48 圧殺竜プレッシャー』ATK:2500→0

「更に! ライフを100の倍数で支払うことで、『スポイルド』の攻撃力をアップさせる! オレはライフを1000ポイント払う! 『スポイルド』の攻撃力が1000アップ!」

遊参 LP:1100→100
『MNo.96 邪染竜スポイルド』ATK:1250→2250

「さぁ! バトルだァ!」

『MNo.96 邪染竜スポイルド』ATK:2250 VS 『MNo.48 圧殺竜プレッシャー』ATK:0

「アラーッ!!!」

道化師 LP:2000→0

「ケッ……オレの勝ちだァ……。手こずらせやがってよぉ……。賭け金は決めてなかったなァ……。っつーわけで、勝った方の総取りだァ。オラ、財布全部寄越しな!」
「よせ遊参! いくらなんでもそれはやりすぎだろ!」
「うるせぇんだよっ! 引っ込んでな!」
 遊参の肘が俺の腹にめり込んだ。喧嘩などさっぱり弱い俺は思わず尻餅を付いた。
「ぐぇっ……!」
「ついでだから教えてやるよ。“コイツ”はかわいそうに、心も体も弱くて学校にも行けない、行ってもいじめられるだけ……。同級生にお小遣いをやってた身分だったんだぜェ……。そのまま腐っちまった心に、俺が救いの手を差し伸べたのさ……。この大会でコイツに出会った時、オレは運命を感じたね。ついでだから、お礼もしてやったさァ……! こいつからお小遣いをもらってた奴等を木刀でボッコボコにしてやったよ……! カッカッカ……あの時は楽しかったなァ……。喧嘩の強い弱いなんて関係ねぇんだ……大事なのは思い切り、過剰防衛もクソもねぇ、それが大事なんだよ。覚えときな」
「テメェは……『MNo.』自身なのか……? 遊参の心を乗っ取ってるのか……?」
「平たく言やぁそうなるなァ……。まあ、乗っ取られる豆腐メンタルな野郎が悪いんだよ。そんじゃ、あばよ。いつまでもテメェに付き合う義理もねぇや」
 そう言って、遊参は倒れている俺の腹を蹴飛ばした。
「ゲホッ!」
 衝撃で、俺の腕のデュエルディスクのカードが散らばった。
「ケッ……これが“コイツ”との友情の証かァ……?」
「それは……『虚眼の独龍』のカード……!」
「ボッチには友情なんて要らねぇんだよ、ほぉらァ!」
「あ……!」
 遊参は『虚眼の独龍』のカードを破り捨てた。
「テメェの財布は勘弁してやる。じゃあな。せいぜい長生きしな」
 そして、遊参は俺の前から姿を消した。

第十話・完






     

『遊戯王M 第十一話』

 ……やあ、俺は図画 遊鎧。とりあえず今欝だ。
 友達だと思っていた遊参が『MNo.』の闇に囚われて変わっちまった。まさか本当に『MNo.』にもこんな変な力があるなんて、俺は今の今まで思いもしなかった。
 全部俺が悪いんだ。俺が『MNo.』の持つ不思議な力にもっと早く気付いてれば、俺がもっと早く遊参の異変に気付いていれば……。
「やあ、おまえもデュエリストか? よかったら、デュエルをしないか?」
 誰かが話しかけてくるが、そちらを振り向く気力もない。返事をするのも面倒くさい。
「聞こえないのか? この距離でそれはないだろう。デュエルから逃げるのか?」
 何だかうるさい奴だ。
「……俺はもうこの大会で勝つ気はないんだ。棄権する」
「そうか。だが、棄権及びデュエルの申し出を断った場合、三百万円の支払い請求が来るぞ。契約書を読んでないのか?」
「なっ!? さ、三百万円……? い、いや、契約書なんて……」
「そうだろうな。今頃、君の家に郵送されているはずだ。そして、この大会に参加した以上、その取決めに合意したものとみなされる。普通に考えればこんな契約は民法九十条、公序良俗違反で無効。その他諸々の法律でも無効とみなされるだろうが……しかし、それを争うのは法定だ。法定で面倒な争いをするくらいなら、最後までデュエルで争うべきだと思うが?」
 騙された……。俺はますます鬱になった。とてもデュエルをする気分じゃない。だが、定年を目前にした親のすねを齧っている無職の俺に、そんな大金は払えない。裁判費用だって同じだ。なら……。
「……わかったよ」
 立ち上がり、デュエルディスクを構える。
「それでいい。俺の名前は新星、よろしくな」
「遊鎧だ」
「それじゃ……」
「「デュエル!」」

遊鎧 LP:4000 VS 新星 LP:4000

「先攻、もらうぜ。俺は『闇魔界の無職 ダークニート』を召喚するぜ」

『闇魔界の無職 ダークニート』☆4 ATK:1800/DEF:1500

「そしてカードを1枚セットしてターンエンドだ」

「俺のターン、ドロー! 俺は『ビッグバン・スラッシャー』を特殊召喚!」

『ビッグバン・スラッシャー』☆4 ATK:2000/DEF:0

「このカードは相手の場にモンスターが存在し、自分の場にモンスターが存在しない場合特殊召喚できる。俺は更に魔法カード『新星の銀河』を発動! 自分の場に『ビッグバン』と名の付いたモンスターが表側表示で存在する場合、デッキから『ビッグバン』と名の付いたレベル4以下のモンスターカード1枚と『新星の銀河』を手札に加えることができる」
(連続魔法カード……なるほどねぇ……)
「俺は手札に加えた『ビッグバン・スナイパー』を通常召喚!」

『ビッグバン・スナイパー』☆4 ATK:400/DEF:2000

「いくぜバトルフェイズ! 『ビッグバン・スナイパー』は相手にダイレクトアタックすることができる! 『ビッグバン・スナイパー』でダイレクトアタック!」
「くっ……!」

遊鎧 LP:4000→3600

「そして『ビッグバン・スナイパー』の効果発動! このカードが相手のライフポイントにダメージを与えたターン、相手はエンドフェイズまで罠カードを発動することができない! 更に『ビッグバン・スラッシャー』で『ダークニート』に攻撃!」

『闇魔界の無職 ダークニート』ATK:1800 VS 『ビッグバン・スラッシャー』ATK:2000

「速攻魔法発動! 『天引き』! モンスター1体の攻撃力をエンドフェイズまで800ポイントダウンさせる!」
「しまった!?」
「対象は……『ダークニート』だ……」

『闇魔界の無職 ダークニート』ATK:1800→900

「何……?」

『闇魔界の無職 ダークニート』ATK:900 VS 『ビッグバン・スラッシャー』ATK:2000

遊鎧 LP:3600→2500

「…………」
「おい、おまえ……もしかして、わざと負ける気か?」
「だったらどうした。あんたには関係ないだろう」
「ふざけるな! 関係大ありだ! 誰がデュエルで相手にわざと負けてもらって喜ぶ! 失礼だと思わないのか?」
 俺は頭に血が昇るのを感じた。
「うるせぇ! いちいち不謹慎だ、失礼だって……何様だよ、てめぇ! 遠回しに自分が偉いって言いたいだけだろう! そっちが勝手な要求をしてるんだ、俺だって勝手な要求を貫き通させてもらうぜ! それが世の中ってもんだろ!」
「確かに俺は今の言葉はそういう態度は相手にとって失礼だという意味で言った。だが同時に、それはおまえのカードに対して失礼だという意味でも言った。おまえはその言葉を、自分のカードに向かって言えるのか? おまえが選び抜いた、デッキでおまえを信じて待つカード達に!」
「うるせぇ! カードが何だ! デュエルが何だ! こんなくだらねぇ遊びに何の意味があるってんだ! こんなもん、いい加減にやったって何も変わりゃしねぇんだよ!」
「その気持が本当かどうか、自分の心に……おまえを信じるカードに尋ねてみろ……。俺はカードを1枚セットしてターンエンドだ」

「……俺のターン、ドロー」
(『ムショクラッシャー』……無条件の特殊召喚と2回連続攻撃が可能な、攻撃力2200のカード……)
「俺は……俺は、『ムショクラッシャー』を特殊召喚!」

『ムショクラッシャー』☆6 ATK:2200/DEF:0

「ほう……」
「バトルフェイズ、『ムショクラッシャー』で『ビッグバン・スナイパー』を攻撃!」

『ムショクラッシャー』ATK:2200 VS 『ビッグバン・スナイパー』ATK:400

「くぅっ……!」

新星 LP:4000→2200

「『ムショクラッシャー』は1ターンに2回攻撃することができる! ……ただし、直接攻撃はできないけどな。『ビッグバン・スラッシャー』に攻撃!」

『ムショクラッシャー』ATK:2200 VS 『ビッグバン・スラッシャー』ATK:2000

新星 LP:2200→2000

「……フッ……」
「俺はカードを1枚セットしてターンエンド。エンドフェイズ、特殊召喚された『ムショクラッシャー』は破壊される」
「ちゃんと、カードはおまえに訴えているじゃないか……『勝ちたい』と……。おまえに勝って欲しいという気持ちを、伝えているじゃないか」
「くだらねぇ御託はやめろよ。なら何で手札事故はなくならない? 何で俺達はここ一番でアニメみたいに引きたいカードを引けない? みんなドローフェイズに何て言う? 『おめぇじゃねぇ!』だろ。『信じればカードは応えてくれる』……くだらねぇ、どこの新興宗教だよ……」
「それは、この世に……少なくともデッキの中に必要のないカードなどないからだ。どのカードも、デュエリストを助けたいと思っているからさ。何も悪くない。デュエルに勝つことも負けることも、何も悪いことじゃない! いくぜ、ライフが2000ポイント以下なのでこのカードをおまえのエンドフェイズに発動する! 速攻魔法『新星の波動』! このターン破壊され墓地へ送られた『ビッグバン』と名の付いたモンスターを可能な限り特殊召喚し、そのモンスターのレベルを4つ上げ、エクシーズ召喚を行う! 俺はレベル8になった『ビッグバン・スラッシャー』と『ビッグバン・スナイパー』でオーバーレイ! 終焉は始まり! 無限の闇は光と交わり、混沌の夜明けを紡ぐ! エクシーズ召喚! 『超新星の爆誕龍(ビッグバン・ブラストドラゴン)』!」

『超新星の爆誕龍』★8 ATK:2800/DEF:2100

「そして俺のターン! ドロー! 『超新星の爆誕龍』の効果発動! エクシーズ素材を1つ取り除き、このカードを除外する! そしてフィールド上のカードを全て破壊する!」
「俺のセットカードが……! だけど、エクシーズモンスターは除外されたら素材がなくなるんじゃ……!」
「焦るなよ、まだ俺のターンは始まったばかりだぜ。フィールド上にカードが1枚も存在しない場合、このカードは手札または墓地から特殊召喚できる! 虚無の世界を貫く一筋の光、希望の軌跡を描き、今ここに新たなる世界を! 現れろ! 『ビッグバン・ドラグーン』!」

『ビッグバン・ドラグーン』☆8 ATK:3000/DEF:2800

「なっ……!? ふざけるな! 3000の直接攻撃確定だと!?」

「心配するな……。『ビッグバン・ドラグーン』の直接攻撃宣言時、おまえはデッキの上から3枚、カードを墓地に送ることができる。その中に含まれていたモンスターカードの数×1000ポイント、『ビッグバン・ドラグーン』の攻撃力はダウンする。さあ、どうする?」
(俺のデッキのモンスターの割合は、決して多い訳じゃねぇ……。1枚もモンスターが出なけりゃ、俺は負けちまう……。だが、手札にこの状況を打開できる手段はねぇ……)
「さあ!」
「俺はおまえの効果を利用させてもらう! カードをデッキの上から3枚、墓地に送る! 1枚目! 永続魔法、『親の扶養』……くっ……! 2枚目! 罠カード、『許し乞い』……」
(ダメだ……。しょせんデュエルなんてこんなもんだ……)
「どうした? 手が止まってるぞ? 最後のカードを墓地に送れ。それまで諦めるな」
「うるせぇ! 何で敵のあんたにそんなこと言われなきゃならねぇんだ!」
「違う。俺が言ってるんじゃない。おまえのデッキの一番上のカードがそう言ってるんだ。最後まで諦めるな、と」
「…………」
「どんなに絶望しても、目の前に可能性があるならそれを確かめてみろ。差し伸べられた手を振り払うな。裏切られてもいい、どうせ何もしなければ待っているのは絶望と苦難だけだ。いいか、今この瞬間、デュエルにおいてサレンダーは公式ルールとして存在しない以上、俺達はどんな状況でも、決闘を強いられているんだ。デュエリストならば……デッキを組んだならば……闘うことから逃げるな!」
「長々と……うっせぇんだよ! ……俺が墓地へ送ったカードは……『デーモンのニート』! モンスターカードだぜ!」
「フッ……ならば、『ビッグバン・ドラグーン』の攻撃力は1000ポイントダウンする!」

『ビッグバン・ドラグーン』ATK:3000→2000

「『ビッグバン・ドラグーン』でダイレクトアタック!」
「がぁあっ!!」

遊鎧 LP:2500→500

「エンドフェイズ! 自身の効果で除外された『超新星の爆誕龍』がフィールド上に特殊召喚される! そして『ビッグバン・ドラグーン』の効果を発動! フィールド上のこのカードをエンドフェイズ時に『超新星の爆誕龍』のエクシーズ素材にする。しない場合、このカードは除外される! ターンエンド! さあ! おまえのカードがくれたラストターンだ」

「俺の……ターン……」
(俺の手札にはずっとこのカードがあった……。もしこのドローフェイズであのカードを引ければ、俺は勝てるかも知れない……。もし引けなかったら……)
「さあ! どうした!」
(もし引けなかったら……その時は……)
「負けるだけだ! 何も怖くねぇ! ドロー! ……そうだな、俺に……頑張れって、勝てって言ってくれるのは……おまえ達だけだ! いくぜ! 魔法カード発動! 『光と闇の退職』! 自分の墓地からレベル及び種族の異なる光属性と闇属性のモンスターを1体ずつ、効果を無効にして特殊召喚する! 俺が特殊召喚するのは『闇魔界の無職 ダークニート』と『ムショクラッシャー』!」
「ほう……!」
「まだだ! 『光と闇の退職』の更なる効果! 光と闇、2体のモンスターをリリースし、このモンスターをアドバンス召喚する! 混沌の戦場を伝説が駆け抜け、無職の戦士が誕生する! 『ニート・ソルジャー-無職の使者-』!」

『ニート・ソルジャー-無職の使者-』☆8 ATK:3000/DEF:2500

「嬉しいぜ……まさかこの目で、伝説の無職カードを目にできるとはな……! 『青眼の白龍』に匹敵する通常モンスター……!」
「ああ、『ニート・ソルジャー』は見かけ倒しのただの通常モンスター。しかし、『光と闇の退職』の効果でアドバンス召喚された場合、この効果を得る! 墓地の通常モンスターを除外し、その攻撃力分、相手のライフポイントにダメージを与える! 俺が除外するのは『デーモンのニート』! 攻撃力……2500!」
「……やるじゃないか!」
「お陰様でな! 思い出したぜ……デュエリストとしての……魂ってやつを! さあ! 存分に受け取れ!」
「ぐぅっ!」

新星 LP:2000→0

「……フッ、負けちまったぜ……」
「正直、自分の力で勝った気がしねぇ……。俺が勝てたのは、おまえが言う通り、俺のカードと……おまえのお陰みたいなもんだ」
「そんなものさ。それでいいんだ。カードがあって、相手がいて……それで初めて、魂と魂がぶつかる、本物のデュエルができるんだ」
「新星とかいったな、ありがとな。俺、最後まで闘ってみせるぜ。『MNo.』に取り込まれた友達の心を……俺が取り戻して見せる……!」
「その意気だ。おまえの心の銀河に、新たなビッグバンが生まれたなら俺は本望だ。また闘おう」
 そう言って新星が差し出して来た手を、俺は握り返した。
「次会った時は、おまえの『MNo.』を見せてくれよ!」
「いいだろう。だがその代わり、今度は俺が勝たせてもらう」

第十一話・完

       

表紙

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Neetsha