Neetel Inside ニートノベル
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 金髪人に急かされながら靴を履きつつ、玄関に無造作に立てかけてある金属バットを手に持ちます。このバットは、東が使っていた物です。今は使われていないので、持って行っても平気でしょう。
「そんなもの何に使うんだ?」
 金髪人がこちらを変な物を見るような顔で見ていますが、無視しました。
 私の家の近くに位置する公園前にやってきました。私が金髪人の事を無視してからは、金髪人は口を開かなくなりました。これ以上ヤツの戯言を、声を耳にしたくなかったので都合が良いです。
「ここに敵の気配がする」
 どう気配を察知してるかは知りませんが、もう二度と言葉を口にしないでほしいと願った瞬間、金髪人はそんな事を言いました。『敵だ!! 逃げろ』的な感じでしたのに、わざわざ敵の場所に行くなんてどうかしてます。でも敵は元々私の家の近くに来ていたみたいですし、家の場所がバレてしまうぐらいなら出向いた方がマシなんだと思いたいです。
 辺りは暗く、外灯だけが私達を照らしています。たまに吹く風は冷たく、孤独感を煽っていきます。人っ子一人もいない時間に、公園には誰が居るのでしょうか?
 答えは私の通っている中学校の近くにある、高校の制服を来た女性と、浮浪者でしたー。いえーい。なんか二人戦ってますし。もう帰りたい。
「あ! 金髪、なんでここにいるんだよ!? 手伝え手伝え」
 浮浪者が私達に気づき、金髪人を見てそんな事を言いました、もしかして知り合いなんでしょうか? 今は浮浪者と女子高生が、互いに一定の距離を保って睨み合っている様な状態なので、他を気にかける余裕があったのでしょう。
「先輩!! 先輩が苦戦してるんなら私程度なら足しになりませんって」
「すみません、警察ですか? ○○市××丁目の公園で――」
 携帯電話で警察に電話して通報しました。が、駄目。小さくて素早い物が、携帯電話を持つ私の手を、物凄い速さで叩いて通り過ぎて行きました。
「ヨシヨシ、いい子だ」
 そのまま私の手を叩いた何かが女子高生の胸に何かが飛び込み、女子高生にそのまま抱えられ、頭を撫でられています。薄暗い闇の中、目を凝らして見てみると、ドクとそっくりな犬でした。さらに女子高生をよく見てみると、私の頭に生えている様な犬らしき耳が生えています。
「金髪、見ての通りあいつはもう手遅れだ」
 浮浪者がのびのび育った汚い髭を片手で触りながら、危機感のありそうな雰囲気をかもし出しています。
 女子高生はドクに似た犬を地面に下ろすと、浮浪者に向けて攻撃を始めました。どうやって攻撃をしているか分かりませんが、細くて素早い何かが複数、それらが浮浪者目掛けて当たりに行きます。でも浮浪者はそれ等を見切って避ける避ける。全体的に動きが早くて、浮浪者がどんな状況なのか私には分かりませんが、「チッ、服が汚れちまう」とこれ以上ボロボロになりそうにない程汚れきった服を心配していたのできっと大丈夫なのでしょう。
 金髪人も「先輩は先に顕界に来てたんだ。なぁに、ここじゃプロのニートをやっていたそうだ。心配は要らない」と余計に心配になるフォローをしてきたので、浮浪者がやられる事はないのでしょう。ニートじゃなくてホームレスだってところには何も言いませんよ。
「グッ……」
 バットを握ったのって何年ぶりでしょうか? 野球少年の血が疼きますね。まぁろくにバットを扱ったことなんてありませんが。今の状況に飽きて素振りを数回したところで、浮浪者がうめき声を上げて地に伏しました。
「こんな素晴らしいチカラをくれた子を消すだなんて許せない。お前等も潰してやる」
 浮浪者は倒れたまま動きません。そして女子高生の次の目的は私達みたいです。いい加減帰りたいんですけど、女子高生も何やら病気を患っているみたいですし。犬がチカラをくれるとかそんな事ある訳ないでしょうに。
「来るぞ!!」
 金髪人の悲鳴に近い声を聞いて、私はバットを握っている手に力を込めて、攻撃に備えました。
「はぁぁああん」
 公園に響いたのは女子高生の艶かしい声でした。
「ち、違う!! 私じゃなくてあいつ等を狙って!!」
 女子高生が私と金髪人の方を指差して喚きます。帰りたいのですが、どうせ目撃者は消す的なことを言ってついて来るのが目に見えているので、帰るのは諦めました。
「んぁああ……。だから、私じゃなくてぇ」
 女子高生の近くの地面から、植物の蔦の様な物が生えているのが見えました。その蔦は女子高生が喋っているのにも関わらず、女子高生のお腹にすごい早さで当たって地面に引っ込んでいきました。鞭みたいな動きを想像すると分かりやすいですよ。
 なんとも痛そうなのですが、女子高生は艶かしい声を上げるのです。もしかして蔦を自分で操れる訳じゃないみたい?

       

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