Neetel Inside ニートノベル
表紙

見開き   最大化      

 蔦は女子高生を攻めることに満足したのか、先端を鞭の様にしならせる事はしなくなりました。蔦が静止する事によって、蔦の事を観察することができました。蔦が私の腕の半分ぐらいの大きさをしているのは、蔦らしき植物が複数絡んで構成されているからみたいですね。そして様々な場所から攻撃できるのは、地中を移動しているからでしょう。流石に地面の中がどうなっているのかまでは分かりません。
 現時点で気になる点は、浮浪者と女子高生に生えている耳。そしてドクそっくりの犬。現時点でなすべきことは、いかに短時間でこの状況を切り抜けることなのでしょう。
 色々と酷い絵を見て冷めた頭は、そこそこ冷静に回ります。夜だからってのもあるのでしょう。
「あの蔦を操ってるのは人間じゃおぉう」
 倒れたまま喋った浮浪者に蔦の鞭がしなります。おぉう。カチコチに固まった髪から白い粉が飛んだ気がしました。水をかけても弾きそうなその髪は、中に虫やら鳥やら住んでそうで怖いですね。
「犬だ、犬が植物を操っている」
 蔦が金髪人を襲いますが、金髪人は何食わぬ顔で蔦を最低限の動作で避けていきます。どうやら蔦は喋った人を無差別に攻撃するようになったみたいですね。前からそうだったのかは知りませんが、今はそういうものだと認識しておきましょう。ならば私は喋らない方が良さそうですね。
「人間にはケルベロスをどうもできない」
 金髪人は相変わらず軽い動作で蔦を避ける。私の目で追えない程早い蔦を、金髪人は目視してから避けるのです。どんな目してるんでしょうね。逆に私がうといだけなんでしょうか?
 何もするなと言いたそうな感じですが、こちとら初っ端から何もする気はないですし。人間には何も出来ないんじゃあ仕方ないですよね。
「ドフ!!」
 ドクっぽい犬が、何時の間にかに公園にやってきていたドクに吠えています。若干ドクより低い声をしてますね。ドフと吠えた犬、長いのでドフと呼ぶことにしましょう。ドフより体型の小さいドクは脅えてるみたいです。小さな体をプルプルと震わせています。
 ドフがドクに集中しているから、蔦の動作が『喋った物を攻撃』という単調なものになってしまったとか……。考えすぎですよね。もしかしたら言葉だとかじゃなくて音に反応しているだけだとか。でも、うーむ……。
 なんて考えてる間にドフがドクに飛びつこうとしていました。
「家のドクになんて事を!!」
 ついカッとなってドフに怒鳴りつける様なマネをしてしまいました。ドフは驚いて私の方を向きました。そのおかげでドクは無事です。でも何か忘れている様な……。
 視線を犬達から正面に戻すと蔦が私目掛けて攻撃してきていました。あぁ、そうでした。考え事をしている時に、別の事が起こったので、考え事をする前に脳に入っていた内容が上書きされてしまったのです。たぶん。そして蔦の事を忘れた私は声を出してしまい……。
 あぁ、まだ高い牛肉とか食べたことないのに死んでしまうなんて……。私は現実から逃げるために目を閉じて見たこともないお肉に思いを馳せました。

       

表紙
Tweet

Neetsha