Neetel Inside ニートノベル
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制服撲滅委員会
:胡乱

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 ツバキは哀れに勃起した俺をあざ笑うかのように、俺の耳元で「そそれでね、アキラくん、その痴態を共有し合う同好会の設立の手伝いをしてもらいたいんだけど……お願いできるよね?」と囁いた。
 瞬間、全身が今までに無いほどに敏感になってしまっていた俺の体は耳元に吹きかけられたツバキの吐息を感じるがまま、何かの糸が切れたかのようにパンツの中で射精してしまっていた。
 これほどの絶頂感は初めてのことだった。絶頂した瞬間に足腰の……いや全身の力が抜け落ち、俺はその場に座り込んでしまっていた。


[:胡乱]


 学校近くのファストフード店にツバキと二人で入る。端から見る限り、下校途中にデートをし、ファストフード店に寄った高校生カップルに見えなくもない俺とツバキだが、話している内容はそれには全く似つかわしくはない。
 何か落胆するかのように、小さくため息を付きながら、さっき飲み干してしまって、既に空になってしまっているコップに突き刺さるストーロー吸うが、ズズズズという無残な音が鳴り響くだけで、俺の口の中には何も入っては来なかったことに、再びため息をついた。
「なんか元気少ないね、アキラくん」
「いや……別になんでもない」
「まあ、この間あんなことあったしねー、男の子だから仕方ないちゃー仕方ないんだろうけど、あたし以外の人だったら確実に施設に通報されてるよ?」
 そもそも、なぜこの女は俺を通報していないんだ? そんなことを考えながら、再び空になったコップに刺さっているストローに口をつけ、吸い出すが、やはりズズズズという悲しい音が鳴り響くだけで何も口の中には入っては来なかった。
「アキラくん、そんな喉乾いてるの? お金無いなら奢るけど?」
「いや、そういうわけじゃないんだけど……」
 単純に気まずいのだ。何かでごまかさなければ、目の前に居るツバキという俺の秘密を握っているこの女子の雰囲気に押しつぶされてしまいそうなわけで。
「そう。でね、そろそろ本題に移りたいんだけど、いいかな?」と俺の目を見つめツバキは言った。
 本題。今日、ここに呼び出された本当の理由。多分この間言っていた俺にお手伝についてだろう。
「この間はアキラくんが途中で大変なことになっちゃって、話の途中で終わっちゃったからこうやって呼び出したわけだけど、その辺ちゃんと分かってるよね?」
「分かってる。ようはこの間言っていた俺に手伝って貰いたいことだろ」
「そういうこと。あたし察してくれる人大好き」
 異性から初めて大好きと言われた。こんな人の秘密を掴み、逃げ場の内容に囲うこんな女でも見た目はいいわけで、ドキッと来ないほうがおかしい。
「で、話ってなんなんだ?」
「そうだったね、そうそう。それでね、例の同好会の設立についてなんだけどね」
「うん」
「あ、最初に言っておくけど、学校公認の同好会目指してるわけじゃないからね。その辺勘違いしないでね? 学校に申請なんてしたら、どうなるか分かるよね?」
「そりゃまあ……」
「でね、その裏同好会設立のためにも、まず仲間を集めないといけないかなーって思ってるんだけど」
「まてまてまて!」
「ん、何?」
「そもそも、その部活だか同好会だかよく分からんが、なんの活動をするものなんだ? 痴態を共有し合う同好会って言われても、しっくり来ないんだが」
 ツバキはきょとんとした顔で。
「え、この間ちゃんと話したじゃん。もう忘れちゃってるの? やだなー」
 この間……正直、あの時、射精をしてしまったことのインパクトが大きすぎて、記憶が曖昧になっている。そもそも、俺、その活動に参加するもしないも言っていないような気がするのだが……。
「あたしはね、アキラくん、ヘンタイを共有し合う同好会を作りたいの」
「ヘンタイを共有し合うって、つまり何をするんだ?」
「簡単だよ。自分のお腹の中に溜め込んでる、世間一般ではアブノーマルって言われてる性癖をさらけ出して、それでスッキリしあう的な、そんな同好会かな」
「……意味が分からん。そもそも、俺がその同好会? 部活に参加するなど一言も言ってないぞ」
「アキラくん」ツバキは俺の見つめ、先ほどの明るい雰囲気から一転、何かを押しつぶすかの如くの雰囲気で。「この間も言ったけど、あなたに逃げ道は無い。盗撮の一件、それとこの間の一件。この間の一件は兎も角、盗撮の件に関してはちゃんとした証拠もある。それに他にもちゃんと保険がある。アキラくん、あなたに拒否権はないし、そもそも、うまくこの同好会を利用すれば、合法的に女子の裸を見れるかもしれないんだよ?」
 この間、ツバキが自分は露出狂だ的なことを言っていた気がする。確かにヘンタイと言うか痴態を共有し合う部活を作ればツバキの裸をこの目で直に目の前で見れるかもしれない――がいくらなんでも話が甘すぎる――だが、俺には拒否権が無い。逃げ道が無い。だからと言って、確認しない訳にも行かない。だから俺は改めて訊いた。
「どうせ拒否権は無いんだろ?」
「そういうことになるけど、でも悪い話じゃないでしょ? 痴態を共有し合う。今となったらネットでもできないことが現実でできるかもしれない。素敵でしょ」
 素敵かどうかは正直分からなかった。と言うよりも、そんなこと分かる奴がいるはずない。
「……それで、結局のところ俺になにをさせたいんだ。その同好会に入って終わりってわけじゃないんだろ?」
「お、ようやく話を理解してくれたみたいだね」ツバキは横に置いた通学カバンからファイルを取り出し、その中に入っていた紙を俺の前に広げて。「えっとね、まずは、この二人の勧誘を手伝って欲しいの」
 調査報告書と先頭に書かれた二枚の紙。探偵にでも依頼したのか一枚一枚に詳細に書かれた二人のプロフィール。プロフィールと言っても、公には言えない性癖についてのものだ。
 そして何より、この二人、俺の通っている高校の三年女子と、二年男子のものだった。
「おい……これ、なんなんだよ」
「ちょっと知り合いに探偵みたいな人が居てね。それで調べてもらったの」
「調べてもらった?」
「そう。ちょっと変な噂のある人を見つけてね。それでその知り合いの人にその調べて欲しい人の情報を流して調べてもらって……みたいな?」
「みたいなって……っていうか、こんな特殊性癖を知っていながらも施設に通報しないとか、行けないんじゃないの?」
「ま、そうだけどさ。でも、通報してないからこうやってアキラくんは今ここであたしとお茶できるんだよ? 施設に入るのは嫌でしょ?」
 気になる点は多いが、俺がどうのこうの言える立場でもないのは明白だったので、一つだけ気になっていることをツバキに訊いてみることにした「もしかしてだけど、俺の調査報告書もあるのか?」と。だが、ツバキはニコっと小さく微笑んだだけで何も答えなかった。
「……で、どうするんだ? どうやって、この同好会に勧誘するんだ?」
「簡単だよ、簡単。ここに書いてある特殊性癖を暴露してるその瞬間に居合わせればいいの。アキラくんの時みたいにね」
「逃げ場を亡くして強制的に入会させるか……そんなんで本当にうまく機能するのか?」
「大丈夫大丈夫。あたしにどーんと任せなさい!」
「そうは言っても、この三年生の方は兎も角、二年男子のこれはどうなんだ……現行犯も何も、普通、こんなもの持ち歩かないだろ……」
「さー、それはどうかな。でも、なるようになると思うの。それに楽しそうじゃない?」
「楽しそう?」
「探偵ごっこ」と、今から人の性癖を確信を掴み、そしてそれをネタに逃げることのできない輪舞曲に誘うことが楽しみが如く、ツバキは失笑していた。

       

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