Neetel Inside ベータマガジン
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細かい設定は気にしない








 空の上から弾幕ごっこらしき光を発見した射命丸文はすぐさまそちらへ向かった。
 何か面白い事件かもしれない。
 が、すぐに期待外れであろうと気付く。
 見慣れた巫女や妖怪や神々のそれと比べれば、目の前の光は弾幕と呼ぶことすらためらわれる。
 端的に言うとショボかった。
 それでも一応弾幕ごっこをしている二人が視認できる場所まで飛んだ。
「ふむ……」
 人間だ。
 どう見てもただの人間だ。
 飛ぶことすらできない、ただの人間二人が弾幕ごっこを展開している。
 写真に撮る価値すらないと思われた。
 しかし何かが引っかかる。
 違和感の正体にはすぐに気付いた。弾幕初心者の練習ですらないのだ。交互に決まった通りの弾幕を展開し、それを避けている。まるで劇の練習か何かのように。
 そこまで分かると彼らの意図に気付くのも早かった。
 思ったよりも記事になりそうだ、と文がカメラを向けた瞬間。
 グシャッ。ピチューン。
 弾幕劇に興じていた人間二人は潰されていた。
 潰れた二人の傍らには八雲紫の式、八雲藍。
「ひどいですねえ、シャッターチャンスを逃がしてしまいましたよ」
「それは良かった。こんな事が人間に広まるのは困る」
「確かに、文々。新聞の記事になれば幻想郷中に広まりますからね。……ところで、後何回か殺すおつもりですか?」
 そのセリフが言い終わらない内に潰れた人間たちが元通りの形へと戻っていく。そして完全に元に戻った瞬間に再び藍に潰された。
 グシャッ。ピチューン。
「もちろん。仲間内のくだらん弾幕ごっこで増やした残機分は潰させてもらう。何もこんなことをしなくても里で普通に暮らしていればそうそう残機が減ることはなかろうに」
「ふふ、人間というのは面白いことを考えますね」
 さして強くもない人間が己の命を守るためには、残機が多いに越したことはない。ましてやそれが仲間との示し合わせた弾幕ごっこにより簡単に手に入るのであれば。
 もっとも人間たちがこぞって残機を増やし始めれば妖怪への畏れがなくなり、いずれ幻想郷は外の世界の二の舞になってしまう。なればこそ八雲藍が横槍を入れに来たのだろう。後は藍が増やした残機分を減らすだけだ。
 こうなってしまっては記事にもできない。諦めて文は飛び立った。愚かな人間たちのピチューン音を聞きながら。

 幻想郷の人間の存在意義は、妖怪を畏れることだけだというのに。



おわり

       

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