Neetel Inside ニートノベル
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電気椅子狂騒曲
前門のマンティコア後門のケルベロス

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前門のマンティコア、後門のケルベロス。

僕は今、究極的にピンチな状況に立たされている。

詳しく言うと前の方からいつも僕の事をいじめる不良の武田が歩いて来ていて

後ろの方からはホモで有名な池ノ内が僕の事をストーキングしていた。

ちなみに二人とも滅茶苦茶に体格が良い。ガタイMAX。やたら筋肉質。抗ってどうにかなる相手じゃない。

少しコンビニで買い物をしようと思っただけなのにこのざまだ。

つくづく自分の不運さにうんざりする。もう嫌だ。家に帰って寝たい。

思わず現実逃避したくなる程、現状は最悪だった。なんでこんなことになってしまったんだろう。

さっきまで僕は人生を謳歌していたというのに。現実は非情な程に不条理で理不尽だ。

休日だからと言って僕みたいなクソ根暗野郎が調子に乗って外に出るべきでは無かったのだ。

おとなしく家に篭っていればこんな暴虐的なイベントには巻き込まれなかっただろう。

ああ神様、なんとかしてください。

普段は信じてもいない神様に必死に祈っていると、武田がニヤニヤしながら近づいてきた。


「よう、西村ぁ。こんな所で会うなんて奇遇だな。今さ、金欠で困ってんだけど少し貸してくんねぇ?」


そう言って武田は逃げようとした僕の肩に腕を伸ばしてガッチリと掴んだ。もう絶対に逃げれない。

ああ神様なんていない。いないのだ。


「少しだけでいいからよ」

「す、すいません。お金もってないです。」

「あ?嘘こいてんじゃあねえよ。とっとと財布だせやボケ」


武田は僕の胸ぐらを掴みあげると乱暴に揺すった。


「早く金よこさないと殴るよ?」


これはやばい。マジでやばい。僕のいじめられっ子の本能がそう告げている。

前にも金を出し渋って武田に殴られたことがあるがその時はひどかった。2時間くらいまともに立てなかった。

あんな惨めで死にたくなるような思いはもうしたくない。弱者は強者に屈服するしかないのだ。

強烈なパンチを貰う前に金を出して許してもらうしかない。なけなしの3千円で。

ポケットの財布に手を伸ばそうとしたその時、信じられないことが起きた。

いきなり武田が倒れたのだ。

僕は神の存在を確信した。

一瞬、何が起きたのか解らなかったが、すぐに武田が倒れた理由を知った。

池ノ内だ。池ノ内が背後から武田に強力な手刀を叩き込んだのだ。

池ノ内は自分と同じくらい体重がありそうな武田を軽々と担ぐと颯爽と何処かに去っていた。

どうやら彼のターゲットは僕ではなく武田だったらしい。武田が僕と出会えば隙を作ると考えて僕をつけていたのだろう。

しかしなんと計算高いホモであろうか。いつの間にか僕は武田をゲットする為の餌にされていたのだ。

もし僕が本当に池ノ内に狙われていたら、確実に武田のようにテイクアウトされていただろう。恐ろしい。

てゆうか武田はこれからどうなるんだろう。なんとなく想像はつくけど・・・いや、そんな事はどうでも良い。

とりあえず助かったのだから今日は残りの時間をエンジョイしよう。

僕は足取り軽くコンビニに向かった。

神様の存在と同性愛者の存在に感謝しながら。

       

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