Neetel Inside ニートノベル
表紙

見開き   最大化      

そして午後のホームルームの時間がやってきた。今日の議題は勿論、球技大会についてだ。

種目は野球とソフトボール、それとバレーボール、最後にバスケットボール。
それぞれの出場者を決めて、最後に実行委員の選定。
いつものことながら、騒がしく、賑やかな時間が流れる。

それらの打ち合わせを終えて、時は既に放課後。
ボクは自分のクラスで、出場者のリストをまとめていた。
種目によって選手はダブらないので、生徒は必ず何らかの選手になる。
ボクは無難なところで野球の補欠に落ち着いた。
実行委員の仕事もあるし、あまり球技は得意じゃないから順当なところだろう。

――ああ、そうなんだ。

ボクは実行委員も担当することになった。皆、自分の出場種目だけ決めると議題に飽きてしまった様で、
面倒な役目の押し付けあいが始まった。結局、事態を収拾する形で、
ボクが実行委員を兼任する事になったのだ……もっとも、先生に話を振られた時から
そんな予感はしていたけど。

「……女子の方、リストできたよ。」

それより意外だったのは、彼女の方。

「えっ?……あ、ありがとう。」

「……ん。」

もう一人の実行委員から、差し出されたプリントを受け取る。

「――うん完璧、コレでリスト作りは終わりだね。」

リストに目を通し、作業は完了。

「でも、春野さんが実行委員に立候補してくれるなんて意外だったよ。おかげで助かっちゃったけど。」

「……そうかな。」

「うん、もし立候補が無かったらいつまでも決まらなかったって思う。
 ボクは気が弱いから、まとめ役には向いてないんだよね。」

実際、あの時は教室中が騒がしくて、とても決め事をする様な雰囲気じゃなかった。
とりあえずボクが実行委員を引き受けたけど、必要なのは二人。
どうしたものかと困っていたところで、春野さんが手を挙げた。
クラスでも目立つ方じゃない、そんな彼女が手を挙げたものだから、クラス中がシーンとなってた。

「……いいんちょくんが、困っている様に見えたから。」

それに、と彼女は続ける。

「……同じオカ研のよしみ。」

春野さんが微笑むと、肩までの黒髪がふわふわ揺れる。彼女はちょっとだけ天然パーマだ。

「あはは、助けてもらっちゃったね。ありがとう。」

「……んー。」

ボクはお礼を言ったつもりだったのだけど、彼女は煮え切らない様子で口を尖らせた。

「ええっと、どうかした?」

「……ううん、気にしないで。」

そう言って、のんびりと手を振る彼女を不思議に思ったが……。

「?……ああ、そうだ春野さん、今日のオカ研なんだけど」

ボクは渡辺先生の言伝を思い出し、話を続けようと――

「赤いクレヨンっ!」

突如立ち上がり、叫ぶ春野さん。

「ななな、のあッ?」

そんな彼女の様子にビックリしたボクは、まともに反応できず仰け反ってしまう。この人、急に何を言い出すんだ?

「ええっと、どうかした?」

「……ううん、気にしないで。」

春野さんはそんなボクを意に介するでもなく、ストンと席に座り、にっこりと微笑む。

「……知ってる、今日は中止なんでしょう?」

「あ……き、聞いてた?うん、だから今日はこのまま帰って大丈夫だよ。」

「『怪奇!赤いクレヨン』……楽しみ。」

あ、そうか……渡辺先生が今度話すって言ってたオカルト話だ。
春野さん、そういうの好きなのかな? ……オカ研に入ったの、
先生に流されただけじゃなかったんだ、何か良かった……と、なぜか安心。

「あ、プリントならボクが職員室に届けておくから。」

そう言って、ボクはプリントを手に席を立った。すると、春野さんも続けて立ち上がり……。

「……ボクも行く。」

「へ?」

「……暇だし。一度職員室を見てみたい。」

――やっぱり、彼女は物好きな人なのだろう。

       

表紙
Tweet

Neetsha