2・
私の直感は当たる、昔からそうだった。
霊能力とか超能力とかそんな陳腐な言葉で表すのは性に合わない、そんな時に、どこかで聞いたメージャーリーガーの名言が、とても今の私にマッチして感じた。それから好んでよく使うようになった。
みんなきょとんとした顔をするのが楽しいって部分も否定は出来ないのだけども。
今日、会った探偵さんもきょとんとしてたなぁ。笑える。
とはいえ、笑ってる場合じゃない……依頼は一先ずお預け、とにかく明確な事案として、話を持ってきて金さえしっかり払えば受けると。確かに言ったのだ。
まぁ。こんな子供の言う事だ、適当にあしらわれた……と言うのが実情だろう。
ただ…そのニュアンスンは、どことなく挑戦的な。
できるならやってみろ。そういうものをふくんでいたのは間違いない。
とにかく明日だ、あす以降綿密に『依頼』にしてみせる。
自信は…。
無い、なにしろ私は普通の高校生なのだ。
こういう時にとる行動…は一つ!! しつこく食らい付くのだ。勿論その対象は、一人、あの探偵さんにだ。
*
鼻腔をくすぐるこの匂い…。
コーヒー豆を圧縮し抽出する蒸気の音……
「…っ!!」
誰かが勝手に…と思い、昨日のやり取りを思い出す。間違いない『アノ』女子高生だろう。
一応念のために座ったまま寝ていたデスク越しに、パーテーションの向こう側を覗き見る。
ご丁寧に、コーヒーを2つ用意して、ミルクと砂糖でも探しているのだろう、あちこちの棚を開け閉めしている昨日の娘が見えた。
頭が痛くなってきた。まず不法侵入甚だしい彼女。そしてこの香りは間違いなくモカをエスプレッソに仕立てたであろう事だ。
(幾らすると思ってるんだ…)
その間もバタンバタンするものだからつい…声を出す。
「お嬢さん。フォークならそっちのコンロの下だ。」
我が意を得たりと、にこりと笑ってフォークを取り出し…
「あ、おはよう! さすが探偵さんだねっ!! 寝起きから鋭い!!」
てらいも無く微笑む彼女。
なんだか細かい事などどうでも良くなった。寝起きのまま応接ソファーに移動する。その動きを察した…のかどうかは解らないが、彼女もコーヒーを二つ持ってこっちに来て座る。見るまで無く、ミルクと砂糖が入ったエスプレッソダブル。一口飲んで頭痛がするほど甘い。
とてつもなく甘く仕上げられたモカのエスプレッソを目の前に、彼女を見やる。言いたいことが山積…あまりにも言いたい事があると人は沈黙するのだな。そう思いつつ、甘いモカから彼女に視線を動かす。
昨日の事がそのまま繰り返される。フォークで掬いクビリとコーヒーを飲み、ニコリと此方を見る。
一先ず、問題を一つ解決しよう。
「エスプレッソを甘く淹れるのは良い。ただモカは使わないで欲しいな、隣のブレンドで頼むよ」