Neetel Inside ニートノベル
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そう言って俺のほうに視線を送ってきた。
「何?そうなのか?」
 先輩も驚いた様子で俺のほうに向き直る。
「いや、先輩が答えるまでは全然わかってなかったですよ。ただずっと何か引っ掛かってて・・・五百蔵さんの答えを聞いてはっとしたんです。先輩が上から3つと言ったのもしっかり思い出すことができました。」
「へぇ~そうなんだぁ~記憶力良いんだねぇ~あたしとは大違いだ!ね!あきらさん!」
「うっせーよ!結局この勝負どうすんだ?」
 クイズを出したほうにも落ち度があったことが判明した以上、このクイズの答えに正解も不正解もない。しかし・・・
「五百蔵、こういうのはやっぱ出題者に責任があると思うんだ。圧倒的に有利な立場だったのは君のほうだしね。しっかりとしたゴールのないクイズを出題すると、回答者は永久に思考という名の迷路の袋小路に囚われて夜も眠れなくなってしまうからね。」
 壁耳男の言い回しはくどいようだが全面的に同意だ。
「そうだね。今回は私が悪かったよ。じゃあ布施さん!夜おごらなくていいです!」」
「よっしゃ・・・いやスリーサイズは?ねぇ?あれもうなしか?いや待てよ!しかもそれじゃあふりだしに戻っただけじゃねえか。」
 先輩はよほど未練があるのか執拗に食い下がっていた。クイズとしては成立していなかったが引っ掛かりを覚えていた部分はすべて解消したことで溜飲が下がった気分だ。自分の記憶力も案外捨てたもんじゃないと確認できた。そしてこの壁耳の男こそこの部室の書斎机に腰掛ける存在なのだろうということも。
壁耳の男はゆったりとした足取りで俺と先輩が座っているソファの後ろから書斎机の向こう側に回り込むと、閉ざされていた黒のカーテンを左右にスライドさせ外界の光を呼び込んだ。外を数秒眺めた後こちらに振り返り、ベルベット生地のチェアに腰掛け胸の前で腕を組んだ。
背後から照らされる光が後光となり、その姿は威厳と風格に満ちている。
男は答えた。
「さあ、相談を受けよう!できる範囲で!」 そう、この男こそ、俺の悪夢の終焉に一役買ってくれる救世主なる男。探偵しゃかりきだった。

       

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