Neetel Inside ニートノベル
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「なんだ?どうしたんだよ?」
と聞き返した。するとJは、
「藻女・・・だ・・・。」
 そう言うと、Jはふらつきながらも勢いよく立ち上がり、急に帰り支度を始めた。
「なんだよ!一体どうしたってんだよ!」
「だめだ!ボクはここにはいられない!こいつはやばいんだよ・・・。マジでばいんだよ!!」
 完全に気が動転しているJは「やばい」を連呼し、何度も壁にもたれかかりながらも、扉までたどり着くと脱兎のごとく、牢屋から逃げ出すように俺の部屋を出て行った。
俺は呆気に取られしばらく放心状態だったが、はっと我に返ると急いでPCの画面に意識を戻した。
更新ボタンを押すと、今のやり取りの間にもスレッド主のコメントが大量に増殖されていたようだ。
 上から辿って行くとそのほとんどは「絶対見つけるから!」「見つけて私のものにするから!」などという狂乱めいた宣言ばかりだったが、その合間に他の閲覧者のコメントが挟まっている。
「これって例の藻女じゃね?」
「これ完全に藻女じゃねえかw」
そして最後に一言、残されたコメントが何よりも恐ろしかった。

「見つけた・・・ふふふ。」
 
翌日、俺は大学の講義でJに再会した。講義後の休み時間に、昨日は一体どうしたのか?藻女とはなんだったのか・・・。それを問うた。Jは答えた。
「藻女ってのはね、ネットでは有名なんだよ。ある種の都市伝説だけどさ・・・。」
「都市伝説?」
 俺が聞き返すと、
「まとめサイトがあがってたんだ。過去に何度もあんなスレが立ち上がっていて、それでターゲットにした返信者に必ず会いに行く宣言をするんだ・・・。」
 Jは真剣に語る。
「ボクの知る限り、今回を抜いて過去に2度、同じようなスレが立っている。そしてその2度とも、藻女が会いに行く宣言をした3日以内に男の変死体が見つかるんだ。」
「マジで?そんな話聞いたことないぞ?」
「自分、ニュース見てなかったのか?先月あったばっかだぞ!S県S市の山奥で若い男の死体が見つかって、遺体は心臓めがけて包丁が突き刺さされた状態で放置されていたんだ。それも全裸でな。」
 そんなおぞましいニュース、俺は聞いたことがない。俺がどうしても思い出せないでいるのでJは、
「これだよ・・・。」
そう言ってかばんから新聞を取り出した。どうやら、件の内容が書かれているらしいものだった。A新聞か・・・。俺は新聞をそもそも取っていない。Jは実家から通っているため、家族でA新聞を購読しているようだ。
「で、これが過去にもう一度あったと?」
 俺はニュースをあまり見ない。だからその前の事件についてもやはり思い出せないでいた。

       

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