Neetel Inside ニートノベル
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しばらく沈黙を維持していた先輩が久しぶりに横から口を挟んだ。
「お前も入り口の札見たろ?こいつはウェブ探偵なんだよ。だからあとはウェブ上で解決してくれるわけ。」
 一体どういうことなのかわけが分からない。俺が不安げに先輩と探偵を交互に見ていると、
「ウェブ探偵は基本的にウェブで相談を受けてウェブで解決するのさ。俺のHPを見てくれれば分かる。今回のケースは特殊だね。」
「要は究極の安楽椅子探偵なの。この人。」
 いつの間にこの部屋に入ってきていたのか、助手まで話に加わっていた。探偵といい、助手といい、なぜ音もなく部屋に入ってこれるのだろうか。それが探偵業務に必須のスキルなのだろうか。
「何言ってんだよ!俺は見えないところではせっせと手を動かしてるんだ。影で努力しているところを他人に知られたくないだけさ。」
「まあ、主に動かしてるのはマウスを動かす右手だけどね~。実地での調査は私や布施さんにばっかやらせんだから。」
助手は綺麗にそろえられた指を口にあてわざとらしく微笑を浮かべた。そのわざとらしい表情を見てウェブ探偵はやれやれといった様子だ。
「まあいいや、いやでも助手には働いてもらわないといけないからね。早速だけど、このあと阪田さんについて行ってもらうよ。阪田さんは悪いけど10分ほど先に外で待っててくれ。今から助手には事件の概要とこれからの動きについて説明しておく必要がある。」
「わかりました。」
俺は同意すると、先輩と共に部屋を後にしようとした。すると、
「あ、布施さんもちょっと残ってもらっていいかな?」
先輩も引き止められてしまった。しかたがないので俺は、
「じゃあ外でしばらく散歩してます。」
そう言い残し、一人で部屋を後にしようとすると、俺が出て行く間際に助手が、
「阪田さん!これからしばらくよろしくね。」
と言いながら、小首をかしげて見せた。探偵とは違い手入れの行き届いたストレートヘアがさらりと流れていたのが印象的だった。
「これからしばらく」
その言葉は一体何を意味するのだろう。そんなことを考えながら俺は空を見上げていた。

       

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