Neetel Inside ニートノベル
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 とある部室の幕間劇

 翌朝俺はとある大学の部室に来ていた。昨日、一昨日と立て続けに精神的なショックを受けた俺は、昨晩、大学の先輩に相談をもちかけていたのだ。昨晩のやりとりはこうだ。
「お前それは全然笑えないな・・・。誰かに相談したのか?」
「いえ、誰にもこのことは言ってません。あまりに怖くて家からも出られないもんで。」
「お前の言ってることが本当だとしたらお前いったいその子にどんなことやらかしたんだ?」「・・・それは・・・」
「まあいいや、わかった。明日お前ん家行くわ!午前中授業あったか?」
「いえ、俺は3限からなんで。」
「俺はもう教養科目はとり終わってるから明日は完全フリーだ。お前をある場所へ連れて行ってやるよ。」
「ある場所?」
「まあ口では説明しにくいからとりあえず俺について来い。いいな?」
「わかりました。」
 結果、先輩に自分の部屋まで迎えに来てもらった俺は、とくにその場で話すこともなくそのまま連れられて先輩の友人が在学しているという大学の部室に来ていた。正直こんなレベルの高い大学に形だけでも入ることになるとは思っていなかった。俺が通っている大学は地元のそこそこの学力を持っている学生が集まる私大で、先輩は2学年上の3年生。俺は1年生だ。今おれがその敷地を踏みしめている大学は、全国的にも有名な国立大学であり、ドラマの撮影現場にも幾度となく使われているはずだ。そんな大学にまで足を運んで案内されたのは、広大なキャンパス内でも北東の端っこにある小さな古びた部室だった。
入り口のすぐ横の壁にかかっていた札には「ウェブ探偵事務所」と書いてあった。これはなんなのかと質問をしようと足を止めたのだが、先輩が先に部屋の中に入ってしまったのであわてて俺も後を追い部屋に入った。
外観に似合わず内部は非常に洗練された空間だった。物があるわりにこざっぱりとした印象を受けるのはおそらく棚や机の配置の問題なのだろう。あらゆる場所に普段から掃除が行き届いているのか清潔感が漂っている。
部屋の広さは10畳ほどだが、それ以上に広く感じる。入り口から入るとちょうど正面に書斎机が構えており、ブラックのコーヒーに、わずかなフレッシュを混ぜたようなダークブラウンの色は重厚感と威圧感を携えている。机の上には小型のノートPCがおかれており、その横でアロマデューサーが青い光とともに何か不思議なにおいを放っている。華に詳しくない俺には何のにおいなのかわからない。
机の両脇には電気スタンドがそれを挟んで左右対称に構えており、まるで机に仕える執事のように、机の中央に向かってその頭を垂れている。机の前にはガラスのテーブルが置かれており、その左右にこれまた対称で黒い客用ソファが向かい合っている。
机とともにある黒のベルベット生地のチェアの後ろには本来大きな窓があるのだろうが、今は黒いカーテンで姿を遮られている。

       

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