Neetel Inside ニートノベル
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先輩が小刻みに震えだした。
「納得のいく説明があるんだろうなああ!!!」
 俺の中で先輩のキャラが崩壊した瞬間だった。
「納得がいくかどうかは保証できませんが、私と布施さん、阪田さんとのやり取りの間で推理が可能な答えではあると思いますよ。まあそれでも最後は運なんですけど。」
「どういうことだ?」
 先輩が解せないといった面持ちで問う。
「私は一言も体の部位のサイズだとは言っていません。」
 そうなのだ。助手は「私の身体に関連するサイズ」と言った。もし体の部位であればそんな表現をわざわざする必要はない。「私の身体のサイズ」と言えば良いのだ。それをわざわざ関連するサイズと表現した。これは3つ目のサイズが体の部位以外の数値であることを示唆している。さらに、証明可能な数値だとも言っていた。健康診断の結果から証明が可能で、なおかつ体の部位以外かもしれないもの。
 助手が続ける。
「それに先輩は私に3つ目の数値を聞いたとき私は25と答えましたが、25cmとは答えていません。」
 そうなのだ。最初のスリーサイズの申告でも単位は省かれている。身長と右足のサイズを自分から説明するときにcmとつけていたため、あたかもその後に続くものがcmだと勘違いした。
「質問がないか聞いたときに単位は何なのか?って言われたら困りました。それに答えると正解に限りなく近づくので見苦しくごまかすしかなかったでしょう。健康診断書に載っている25の数値を持つものは私の握力しかないわけですからkgなんて言ってしまえばそれでばれてしまいます。」
「なんじゃそりゃあ!納得できるかぁ!!」
 向こうも案外危ない橋を渡っていたのだ。答えに右の握力を保険に掛けているあたりが卑怯な感じもするが、そこが先ほど助手が言っていた最後の運の部分なのだろう。右足だから左手、という感覚で決めたのだろうか。だが1点引っかかる。それは・・・。
「五百蔵!君にも落ち度があるぞ?」
 聞いたことのない声が入り口付近から聞こえてきた。気がつくと入り口の扉の前に長身で線の細い男性が立っていた。中性的な顔立ちと不釣合いな低く太い声だった。
「あれ?いつの間に来てたの?全然気づかなかったよ。」
「相変わらずだな、その不気味なくらいの存在の消し方。」
 助手と先輩が長身の男に向かって言うと、
「探偵の仕事なんて肉体労働がメインなんですよ?それに壁に耳ありって言うでしょ?」
 そう言いながらコツコツっと入り口付近の内壁を叩く。随分と軽い音がした。
「お前がそれ言うか?全然説得力がないんだが・・・」
 先輩が指先でこめかみを押さえながら言った。
「それで?どこに落ち度があったの?」
 助手が問う。
「布施さんは”上から”3つと言ったじゃないか。本来なら上から3つというのは体における位置の高さを言うのだろうが、君の持ち出したスリーサイズは体の上から並んではいない。後考えられる”上から”は数値としての高さ順ということになるが、それも単位の違いにより条件を満たせない。」
 そう言われて助手はぽんと手を叩いた。おそらくそのことについては完全に忘れていたのだろう。ということはそんなはじめの段階からこの男は耳をそばだてて外から中の様子を伺っていたということか。
悪趣味なやつだなぁ・・・。そんなことを考えていると、
「だけどそこの彼は気づいていたみたいだよ。」

       

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