Neetel Inside 文芸新都
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黒歴史短編集"環"
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「短針」

時計の針が、音を立ててくるくるとまわっている
白い、病院みたいなこの部屋で動くことができるのは、僕と、この時計の長針くらいだ
時計はとうの昔に狂ってくるクル回ってる
何にも無いこの部屋で、狂っているかどうか、基準なんて分からないけれど、
多分僕も、この時計以上に狂っている
時計を見て、右手を見て、時計を見て、左を見る
何か大切な物を忘れているような気がして、久しぶりに、少し脳を働かせた
りんご、ゴースト、鳥居、石、城、ろうそく、クリスマス、数式、九官鳥、兎、銀河、画家、神様、マッハ、針。
何かを思い出すとき、なんとなくそれについて浮かんだ言葉を口に出してみると思い出しやすい、と聞いたことがある
しばらく音を出していなかった口はちゃんと動いていたか、
しばらく音を拾っていなかった耳は機能したのか、
自信はないけど、思いのほか気分はよくなった
わ?。
そして、白い部屋で音を立てるものは、一つになった

       

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Neetsha