Neetel Inside 文芸新都
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手紙

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【手紙】

「やった。ついに完成だ。」

俺は汚れまみれの顏をタオルで拭い、一息ついた。

これであの時の過ちを正すことができる。


俺には妹がいる。正確には"いた"だが。

両親は俺たちが幼い頃に他界し、俺と妹の2人で暮らしていた。

俺たちは仲の悪い兄妹として近所でも有名だった。

だが、今は妹のことをとても愛おしく思う。

あの時は確か、風の強い雨の日だったか。

夕飯の食材がないことに気づいた俺は、妹に買い物をしてこい怒鳴りつけた。

今思えば何故、自分ではなくわざわざ妹にいかせたのだろう。思い出せない。

そして妹はその買い物を終えた帰路の途中、車に跳ねられこの世を去った。

打ち所が悪かったのか、俺が病院に駆けつけた時にはすでに遅かった。

俺はひどく後悔した。

何故妹を外に行かせたのか。

何故俺自身が行かなかったのだろうか。

そしてその気持ちが俺に執念を与えた。

俺はそれから長い月日をかけて研究に没頭した。

そして今日、ついに完成した。

俗にいう"タイムマシン"というやつだ。

しかし俺は機械を作る技術が乏しかったため、肉体ではなく手紙を過去に転送するマシンしか作ることが出来なかった。

それでもいい。少しでも過ちを正せるチャンスが出来るなら。

俺は真っ新な手紙を取り出し、迷うことなくペンを走らせた。

『妹を買い物に行かせるな』

これでいい。これで妹は帰ってくる。

こんどは2人一緒に仲良く暮らそう。

俺はゆっくりと瞳を閉じた。













「やった。ついに完成だ。」

俺は汚れまみれの顏をタオルで拭い、一息ついた。

これであの時の過ちを正すことができる。

俺には妹がいる。仲の悪い兄妹として近所でも有名だった。

俺は、風の強い雨の日に夕飯の買い物に行った。

今思えば何故わざわざ自分で買い物に行ったのだろうか。思い出せない。

俺はその帰路の途中、車に跳ねられ大怪我を負い、両足を失った。

妹は俺が入院中の間に、家にある物を全て持ち出して行方をくらませた。

俺はひどく妹を恨んだ。

だが、そのおかげでこのタイムマシンを完成させることができた。

このタイムマシンで妹に俺と同じ思いをさせてやる。

俺は真っ新な手紙を取り出し、迷うことなくペンを走らせた。



『妹を買い物に行かせろ』




END

       

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