Neetel Inside 文芸新都
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「何か、違う気がするんだよな…」
 カタカタと素早い音を立ててキーボードが揺れる。
 四台あるモニターの画面は、ここ数ヶ月の間に行われた戦闘の映像が流れている。そのどれもが、ミカガミがイレディミラーを射出してから敵に着弾する迄の映像をループしていた。光弾の熱量やミカガミ本体の動きに合わせてデータはA、B、Cと分類され、それぞれのタイプにファイル付けされていく。
 やがて、データは『天人』タケミカヅチ戦の映像を捉え、総合的運動量からAタイプと計測結果を叩き出す。そこから先に小刻みに発生した対エソラム戦のデータは、そのほとんどがBタイプのファイルに纏められていくが、
「エソラム如きにBって…戦闘経験から運動量が飛躍したとは考え難い」
 モニターに目を走らせながらも、キーボードを叩く手を休めない。同時に、頭の中でミカガミ=加賀未来の戦闘能力に対する疑問を整理させていく。
「こっちのType-O・N・Iに対する運動量…通常の二・一六倍だって?」
 確かに、加賀は突撃部隊時代から好んで戦闘する側の人間である事は重々理解していた。しかし、言ってしまえば雑魚相手にこれ程の能力を発揮する様な男ではない。それなのに、タケミカヅチ戦を境に急激に戦闘能力が向上し、雑魚相手にも手を抜いていない。
「…イレディミラーの熱量、三・二五倍…チャージなしでこの数字って…」
 目の前のモニターに、アメノウズメ戦でのミカガミが派手に動き回っている。その尋常ではない数値は、それ迄ファイリングされた物には当てはまらず震える手で新たにSタイプのファイルを作成する。
「嫌な予感がする…気のせいならいいけど」
 頭の中で整理しきれない情報が、違和感から警戒に変わりつつあった。ただ、こんな邪推を誰に報告出来ると言うんだ? 戦闘能力の向上は、コインデックにしてみれば非常に有難い事でむしろ喜ぶべき話だ。だが、胸の中につかえているこのモヤモヤが警鐘を鳴らしている様に思えてならない。
「気のせい…で、片付けられればいいけどね…」
 キーボードから手を離し、石川は深いため息を吐いた。

       

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