6.勝負開始

「数彦、数彦! 起きろ! 殺されるぞ!」
 ん? なんだ? まだ夜が明けてないようだが……。
「数ちゃん、逃げて! 強盗が、強盗が!」
 親父と母の叫び声が聞こえる気がするのだが。
 誰かが階段を上ってきている。誰だ?
「数ちゃん、数ちゃん!」
「逃げろ数彦!」
 え? これは夢だよな? 夢……だよな? 違う。夢じゃない、夢じゃない!
 強盗なら金を奪って終わりじゃないのか? なぜ階段を上がってくる? 勝負? 神様? まさか、まさか!
 このまま布団の中にいたら殺されるんじゃないか? いや、無いだろう無い無い。でもなんだ? この恐怖感は! 怖い、怖い! 恐怖で体が動かない!
 とにかくやばい気がする。どうする? 逃げるか?
 どうやって? ここは二階だ。窓から逃げるか? ダメだ。逃げ切れない。俺は裸足、奴は靴。追いつかれる。
 110番? 携帯? ダメだ。間に合わない。携帯を探す暇なんて無い!
 じゃあどうする? 戦うか? 多分奴は持っている。ナイフ? 包丁?
 勝てっこない。俺には武器が無い。刺される。どうする? どうする!
『本当の恐怖ってのは心地いいだろう?』
 誰だ?
『俺だよ。わからないか?』
 わかるわけないだろ!
『そうだよなあ。わからないよなあ。しかし、殺されるってわかるか。やっぱりお前はカエルだよなあ』
 助けてくれ。
『それは負けって事でいいってことか?』
 負け?
『そうだ。負けるってことは誰に何をされても文句は言えないって事。要するに、殺されても文句は言えないってことさ』
 ふざけるな! お前は何だ! 誰なんだ? 答えろ! 助けろ、助けて。お願いだから。
『飛べよ。お前、カエルの神様なんだろ? 飛べ。飛んで逃げちまえ。逃げ切ればお前の勝ち、ダメならお前の負け』
 逃げる? 無理。追いつかれる。無理だ。無理だ!
「ガチャ」
 部屋のドアが開いた。開いた。殺される。殺される。
「うわああああああああああああああぁぁぁ」
 その時俺は、二階の俺の部屋の庭側の窓ガラスを突き破り、空中にいた。