Neetel Inside ニートノベル
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サイコロ
1.無神論者

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 俺は神様なんて信じてない。いわゆる、無神論者と言う奴だ。
 世の中の全ての理は、科学で完全に証明出来ると思っている。(というか、俺の得意教科が物理だから、そうでなければ困るのだ。)
 しかし、物理学も絶対ではないらしい。アインシュタイン大先生が唱えた相対性理論が、光よりも速い物質が発見されて覆させされそうなのだ。
 タイムスリップが可能とか叫ばれているのだが、そんな事があっても俺は神を信じられない。
 一方アインシュタイン大先生は神を信じていた。有名なお言葉『神はサイコロを振らない』とはボーア率いる確率論派を批判したお言葉だ。
 現代物理ではボーアの方に分があるらしいが、すべては確率に左右されない古典力学で説明できるのではないかという科学者も少なくはないらしい。
 そうだ。確率だ。俺が神を信じられないのはそこにあるのだ。
 考えてみてくれ。確率は皆に平等であって平等ではないだろ? 
 確率と言う数字上での事は平等だ。確率が2分の1なら誰に対しても2分の1のはずだからだ。しかし、例えばハンチョウ博打をしたら勝つ人間がいれば負ける人間がいるだろ?ということで平等ではないのだ。
 人間は不平等だ。足が速い人間がいれば頭がいい人間がいる。だがそれは、俺達人間が遺伝子配列を変える事が出来る子孫を残す行為という確率勝負と呼べる門を幾つもくぐってきた結果なのだ。
 だから平等ともいえるのだ。皆ご先祖様を遡って見てみれば、同じくらいの回数の勝負をしてきた事がわかるだろ? まあその結果が俺と言う存在だということだ。
 よって神などいないのだ。サイコロを振ってきたのは神などではなく俺たち生物なのだ。こうやって俺達は勝負を繰り返し、確率という物に身を任せ、優秀な遺伝子を持った者を生み出して生物の生存競争に勝ってきたのだ。
 で、俺はというと、優秀かと問われるとまあ中の下位じゃないかなと思うんだ。運動が特別得意と言うわけでもなく、成績も理系以外の教科はあまり芳しくなく、特にイケメンでもなく、よって女子にもてたためしなどなく。
 だから、俺は将来結婚できるのか? ご先祖様がしてきた遺伝子配列を決めるサイコロ勝負ができるのか? と、少々不安になっているのであるが、まあそんな事は未来の事なのでどうでもいいのだ。
 そんなことよりも今が大事だから言う。聞いてくれ。俺には好きな子がいる。いや、正確言えばいた。
 なぜ過去形なのかと言われれば、色々あったからだ。
 

       

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