JERSEY PAPER ~東北宮城とジャージペーパー~
第2話 白い尻尾
「・・・ ・・・、こんな所でヤツが来るなんて・・・ ・・・。」
ここは、20歩ほど先にあるトイレに駆け込みたいとこだが、20歩歩くまで持つかどうか・・・ ・・・。
しかし迷ってる時でもヤツは、オレから外の世界へと出たがっている、どう行けばいいのだろう。
まず、ジャンプしながら進み着地の時の衝撃をやわらげるため爪先から着地し、5歩程度でトイレに着く、しかし問題はここから、トイレに着き爪先立ちになりできるだけ速く進み、1番手前のトイレに駆け込む・・・ ・・・、完璧だ、オレの作戦に抜かりはない。
フワッとマリオばりのジャンプを見せると、完璧な着地、思った以上にうまく行っている。予定よりも早く着きそうだ。2歩、3歩、4歩目の着地を終えた瞬間。
「オーイ、何やってんだ宮城」
R太だ・・・ ・・・、最悪だ、オレの学校生活も終わったな・・・ ・・・。
「ワリィけど、オレトイレだから、じゃな」
ドタバタとトイレに駆け込むR太、股間を押さえていた様子から、どうやら《小》の方らしいな。
4.5歩ほどでトイレの前に着いた時、爪先立ちなんかやっていたら、ヤツが外の景色を見てしまう事になる、もしそんな事になったらオレはこの学校で生きて行けない。
・・・ ・・・、オレも男だ、一か八かで行くしかない・・・ ・・・、大きく深呼吸をした。
「3、2、1、・・・ ・・・ハッッッ」
ダダダダとトイレの中に入ると、1番手前のトイレのドアの前に立った。
(やった、オレはヤツに勝ったんだ)
勝利の余韻に浸ることなく、ドアに手を掛けた、開かない・・・ ・・・。するとそのトイレの中から声が聞こえた。
「入ってまーす。」
R太の声だった、マジかR太、本当にオマエは何らかの危害を加えるんだな。
3つあるトイレの真ん中のトイレから、ぬっと誰かが出てきた。
「おっ、宮城、トイレ空いたぞ」
高松だ・・・ ・・・、マジか高松、普通教師は教員用トイレを使えよ、生徒が教員用トイレを使うとスゲーー怒るくせに。
何がともあれ一応救われた、トイレの中に入り鍵を閉め、便器に座った。
「温い(ぬくい)・・・ ・・・」
きばっていると、R太がトイレから出る音が聞こえた。
「オーイ、宮城、練習まで5分しかないから気よつけろよ。」
何、後5分しかないのか、結構ヤバイな。
10秒後、ヤツが出て行くのが分かった、トイレットペーパーで拭き取ろうとしたが、うちの学校のトイレットペーパーは、廃品回収で貰った安物だから中々きれない、やっとの思いで拭き取ったが、何か尻に残った感じがある。
「総練習まであと3分です、校内に残っている生徒は、直ちにグラウンドに集合するように。」
校内放送の声にビビリ、尻の残った感じが何なのかを確かめずにグラウンドに向かった。
グラウンドに着くと遅れてきたとばれない様のコッソリ1番後ろに並んだ。
「これから、○○○校の総練習を始めます。まず、選手宣誓、代表の方お願いします。」
さぁ、オレの出番だ、ちょうど校長の前にいるR太余りに感動したために「ブラボー」とか騒ぎやがれ。
ドキドキしながら起立し、生徒の横を通っていった。
ザワ ザワ
ザワ
おやおや、オレの凄さにざわついてやがる。
校長先生の前でM子ちゃんと顔を合わせた時、M子ちゃんはなぜか、ハッとしたような顔をしていた。
ザワ ザワ ザワ ザワ ザワ ザワ ザワ ザワ
ザワ ザワ ザワ ザワ ザワ ザワ ザワ
生徒に背を向けた時、グラウンド中がざわついた。
(さすがにおかしい、背中にゴミでもついてんのかな・・・ ・・・)
そして大きく息を吸い、第一声を出そうとした瞬間。
「オイ、宮城、何で白い尻尾ぶら下げてんだーーーー」
「オイ、やめろよ、宮城がかわいそうだろ(笑)」
R太達の言っている意味が分からなかった。次の瞬間R太が興奮しながら立ち上がり、
「だってよーー、アイツ右側の短パンから、トイレットペーパー出てんだぜーーーーー、なっ、皆にも見えるだろーーーーー」
オレはぞくっとした、そんな事がある訳ない、半信半疑で短パンの右側を軽く触ってみた・・・ ・・・。
・・・ ・・・、何か薄くて軽い物が手に当たった。
「マジか・・・ ・・・」
声にならない声を出し、顔を下に向け一人で悲しむオレを複雑な顔をして見ていたM子ちゃんは、
「・・・ ・・・えっ・・・、 ・・・あっ・・・ ・・・、ゴメン」
そう一言残しM子ちゃんは友達の方へと消えていった。
その日オレは早退した。
これで分かっていただけたでしょう。「ジャージペーパー」の意味が・・・ ・・・。
もうこの先は思い出したくありません、思い出したい物もあるけど。
これからも東北宮城とこんな作品をよろしくお願いします。