「『マルカの頭が馬鹿にならない程度にな(ニッコリ』だそうです」
 三脚とビデオカメラをベッドの横にセットし、満月はメイド服を脱ぎ始める。
 「頭が馬鹿になるような行為もお手のものなんですね……」
 もはや逃げ場はない。マルカも不承不承と言った様子で同調する。
 「本当ならウォーターマットの上でねっとりオイルマッサージ風奴隷少女の公開連続潮吹きショーを行うところでしたが、
 どろどろになったマルカに二つの理由で挿入できないご主人様が生殺しになってしまうために、今回は軽ーいいちゃいちゃエッチです」
 理由の一つはマルカの性器の状態。もう一つは、ハルの性器の状態である。
 二人がダメな以上、挿入はおろかあまりに激しく変態的倒錯的なセックスなどすべきではない。そう満月は判断した。
 「今回は、ってことはその内するんですか、そんな事……?」
もうドン引きする事すら慣れつつあるマルカに、満月はしれっと返す。
 「あら、私はこれでもマルカの事を思ってやろうとしているのですよ。
 これまで道具として使われて、セックスで気持よくなんかなったことのないマルカに女としての悦びを教えて差し上げようかと」
 嘘だ。
 絶対自分達がやりたいだけだ。
 そう思ったが、マルカは黙っていた。
 確かに、ほとんど濡れてもいないのに有無を言わさずねじ込むように挿入して、膣内を傷つけるような連中に比べれば遥かにマシではあった。
 だがしかし、だがしかし。どうも釈然としない。
 下着姿になり、うーと唸るマルカ。
 「大丈夫ですよ。マルカが泣いたり叫んだりいやーとかやめてーとか死んじゃうーとか言うのは痛みではなく全部快感によってですから」
 「あまり大丈夫じゃなさそうなんですけど!?」
 満月が暖房のスイッチを入れる。
 裸になり、布団を被らなくても事に及べるようにだ。
 ハルが見る為の映像はしっかりと撮っておかねばならない。
 「さて」
 今日は下着を普通に付けている満月。
 ハルの趣味である少し派手なフリルの(と言っても、乳首や性器が丸出しになっているようなのもあるのでそれらに比べたら地味だが)付いたパンツとブラジャーに、手をかける。
 まずはブラジャーのホックを外す。と。
 ぷるん、とたわわな胸が露わになる。
 「おー……」
 マルカも改めてそれを見、感嘆の声を漏らす。
 「はー……」
 そして、自分のそれと見比べ、溜息を吐き出す。
 マルカの胸は、正しく平らであった。同年代の少女と比べても、やはり成長は遅い方であろう。
 「いいなー、満月さんはスタイル良くて……私なんかこんなに平坦で……」
 「気にする事はありませんよ。私もご主人様も、マルカみたいな未成熟の果実を無理矢理もぎ取って食べ散らかすのが趣味なのですから」
 「全然フォローになってないです」
 「それに、私の胸でしたら今日はマルカのものです。自分のだと思って好きなように扱って下さい」
 言いながら、パンツをするすると下ろす。毛はきちんと剃り尽くされ、ほとんど筋に近いぴっちりと閉じた女性器が露出する。
 「おまんこも綺麗……と言うか、ご主人様のお相手を何度もして、どうしてそんな形にできるんですか……!?」
 「そう言う身体になるようにしてますので」
 「……」
 自分の秘部をちらりと見るマルカ。
 少女のものとは思えない、浅黒く肥大した小陰唇。
 身体の痣は治るとしても、ここはずっとこのままだと考えると涙すら出てきそうになる。
 「いいんですよマルカ。こんな無垢そうで可愛い女の子のおまんこがこんな色をしていて、本人もそれを気にしているともなると、私もご主人様も逆に興奮します。幸せにします」
 「全然フォローになってないです」
 フォローになってないわけでもないが、マルカはそう言う。
 むしろ、引かれたり嫌悪されたりしないのは嬉しさすらある。照れ隠しで言っただけだ。
 「勿論、私のおまんこもマルカのお好きなようにいじって構いません。なんでしたら、これまでに犯された恨みを私にぶつけても構いませんよ。多少は丈夫にできてますので」
 「そんな事しませんよ……丈夫? どういうこと……?」
 満月の身体のメカニズムについて疑問を覚えるマルカ。
 そう言う身体、とはどう言う身体なのだろうか。
 「その辺りは、企業秘密と言うことにしましょう。マルカもご主人様の為に常時挿入可能な淫乱メイドを目指したいと言うのなら特別に」
 「いいです」
 即答。
 「……そうですか。では愛しあいましょう、マルカ」
 そう言って、満月は生まれたままの姿でベッドに転がる。
 「この次は私がマルカを美味しく食べてしまうとして、今日はマルカが拙い手つき舌つきで、私を食べて下さい。
 味の方は、ご主人様のお墨付きですよ」
 同性から見ても、彼女の身体は体躯も顔も全て魅力的だ。
 芸術品……まるで、古代ギリシャの彫刻のような。
 いや、彫刻にしては、その身体は肉感的すぎる。
 そしてそれを自由にしていい……そんな事を考えていると、マルカの鼓動はどんどん早くなる。
 「は、はい。じゃあ、その、よろしくお願いします」
 マルカもベッドに上り、四つん這いの姿勢で満月に近づく。
 真上まで来て目が合った所で、覆いかぶさるように、その身体をゆっくりと重ね合わせた。
 少女の軽い身体を、全身で受け止める満月。
 胸同士がぶつかり合い、満月の柔らかなそれが潰される。
 マルカは敏感な胸で押しつぶされる巨乳の圧を感じた。
 「す、すごい柔らかいです、満月さんの胸」
 「ありがとうございます。どうぞ弄くり下さい」
 満月はマルカの手首を掴み、自分の胸へと誘導した。
 「おおー……!」
 マルカの目が輝く。
 重量感があり、手の中で溶けるように形を変えるそれは記憶にあるかぎり初めての……
 いや、もしかしたら生涯で初かもしれない、母性との遭遇だった。
 「す、好きにしていいんですよね?」
 「はい、どうぞ」
 「じゃ、じゃあ失礼します!」
 マルカが積極的になり始める。
 温もりに飢えていた彼女にとって、満月の巨乳は性的にでなくとも、求めていたそれだった。
 双房の間に顔を挟んで、両の頬でそれを感じるように撫で回す。
 「はぁぁ……あったかい……やわらかい……」
 緊張をゆるめ、幸せそうに呟くマルカ。
 満月は彼女の背中に優しく手を回し、甘えられる感覚を楽しむ。
 「精一杯甘えなさい、マルカ。母乳は出ませんが、おっぱいを吸ってもいいんですよ。お母さんだと思って結構です」
 「お母さん、ですか……」
 満月の提案に、マルカはやや躊躇する。
 脳裏に、名ばかりの……しかし彼女にとっては唯一の母の顔が浮かんだからだ。
 おずおずとマルカは尋ねる。
 「お母さんはいるから……お姉ちゃん、じゃおかしいですか……?」
 「最高です」
 上目遣いに見るマルカにNOを突きつけられるわけもない。
 満月は自分の乳首を舌でちろっと舐めた後に口に含む妹の頭を撫でて、悦に浸る。
 「Ma soeur.」
 「へ?」
 「何でもないです。どうぞ続けて下さい」
 「あ、はい」
 目を瞑って、拙い動きで乳を吸うマルカ。
 「赤ちゃんみたいで可愛いですよ、マルカ。妹に欲情する変態でよければ、私はずっとマルカのお姉ちゃんです」
 「ありがとう、ございます……おねえちゃん……」
 喋りながらもそれを求める、飢えた少女。
 ハルの責めとはまるで異なる舌の動き。乳などまともに吸った事もないような、遠慮しがちな唇。
 マルカにとっては肉親のスキンシップであるそれは、満月にとっては性的興奮に繋がるものだった。
 実に十分以上もの長い間、マルカは満月の柔肉を口に含み続けた。
 満月もそれを、頭を撫でながら楽しんでいた。
 
 「……はっ」
 すっかり巨乳の虜になっていたマルカは我に返り、満月の乳房から口を離す。
 「す、すみません、つい夢中になってしまいました……」
 「いえいえ。私も気持ちよかったですよ。これからも、エッチしてない時でもいつでも好きな時に甘えていいですからね」
 「はい。お、お願いします」
 恥ずかしながらも頷くマルカ。
 「ご主人様にも尋ねてみて下さい。私が勝手に許可を出すことはできませんが、きっといつでも甘えていいとおっしゃるはずですから」
 「はい……満月さんがお姉ちゃんなら、ご主人様をお兄ちゃんと呼んだら……ダメですよね、ご主人様に対して」
 あははと笑うマルカ。
 「……それも聞いてみてはいかがでしょう」
 ハルがダメなどと言うはずも無かった。
 マルカは二人の妹である。
 例え彼女を見る目が性欲に塗れていても、その認識はもはや揺るがないだろう。
 そしてマルカも、そう見られている事を含めて二人の事が好きだった。
 「……ところで、満月さん頭のそれ取らないんですか? 眼鏡も」
 指さしたのはメイドのヘッドドレスだった。マルカが言った通り、眼鏡も付けたままである。
 「ヘッドドレスはメイドの証。寝るときも入浴するときも常にこれを被り、自分への枷とするのです。
 これを取る時は、メイドを辞める時か、外出時に普通の格好でいろと言われた時か、あるいは単に洗濯したりするのに交換する時です」
 「割と頻繁に取るんですね」
 「そして眼鏡は伊達です。ご主人様の趣味ですが、これは普通に寝るときや入浴時は取ります」
 「あ、そうなんですか」
 「外しますか?」
 「じゃあ……外して下さい。次は……ちゅーしたい、です」
 「かしこまりました」
 
 マルカは満月の上から下り、横に寝転がる形に移る。
 そして向い合って、ゆっくりと顔を近づけた。
 満月の端正な顔に見つめられると、満月は恥ずかしさに目を閉じてしまう。
 そのまま、口づけを交わす二人。
 「むぅ」
 「んっ」
 唾液を流し込まれ、マルカの口の中は満月の匂いで満たされた。
 甘く、とろけそうになるような味に、つい目を開けるマルカ。
 満月は優しく口を離した。
 「飲んでくれますか?」
 おずおずと、しかし明確に頷くマルカ。
 ごくりと喉を鳴らすと、満月の体液が食道を伝って身体に染み込む感覚。全身がぷるっと震える。
 「次は、マルカの唾液を私に下さい」
 言いながら、再び口を密着させる満月。
 マルカは多少困惑しながらも、口の中に貯めた唾を満月の舌へと送らせる。
 受け取った満月の舌がするすると縮み、マルカの唾液を喉に流し込んだ。
 満月の喉に動きがあるのを感じる。
 そして、また満月は口を離す。
 「ごちそうさまでした。マルカの体液はこれから私の体液となって、そして私の体液はご主人様の体液となり、更にご主人様の体液はマルカの体液となります。リサイクルですね」
 「うぅー……全然違います……」
 遠回しな言い方が、尚更想像を掻き立てる。
 マルカは辱めを受けながらも、どこか興奮するのを自分でも感じていた。
 「本当ならマルカの指や舌でフェラチオ講習を行いたいところですが、絶頂に達してしまうと少し性器に負担がかかるかもしれませんね」
 「指や舌で!?」
 「造作もない事です」
 マルカは満月の性技の巧みさに慄く。
 もはやメイドを通り越してくノ一か何かの領域だ。
 「かと言って焦らすのもそれはそれで可哀想です。自慰もできませんから。ので、今日はさっきと同じようにセックスと言うよりもスキンシップ的なキスをしましょう」
 「あ、確かにそっちの方がいいかもしれませんね……でも、満月さんはいいんですか?」
 「はい。今日はマルカの為に行ったものですから。それに、私は十分に興奮しています」
 それは別に言わなくても良かったです。
 そう思いながらも、マルカは頷いて自分から口吻を再開した。
 あまり積極的に動かない満月に、好きだ好きだと伝えるように唇を何度も付けては離し、ちゅっ、ちゅっ、と可愛らしい音を立てる。
 たまに、わずかながら舌を入れて、満月の口内の暖かさを感じた。
 彼女の香りが口いっぱいに広がるそれは官能的なものでもあったが、それ以上に心が満たされるのを実感する。
 手と手を絡ませ、家族のスキンシップにしては淫猥すぎる、そしてセックスにしては微笑ましすぎるそれを、マルカは気の済むまで堪能した。

 「……ありがとうございました、満月さん」
 長かった接吻もようやく終わった。
 すっかり緊張も溶けて、マルカの顔は明るくなっている。
 「いえ、お安い御用です。どうですか? 私の事、好きになりました?」
 言われてようやく、満月の事を好きになるように始めた行為だったと思い出した。
 「はい……どちらかと言うと、家族の方の好き、だと思いますけど。でも、大好きです。愛してます、お姉ちゃん」
 はにかむその顔は、少しは心の整理ができたようなすっきりしたものだった。
 「私もですよ、マルカ」
 そう言って、優しくちゅ、と口付ける満月。
 「でも、性器が回復したら次は本格的なセックスです。それが終わってからも甘いことを言っていられるか見物ですね」
 「優しい顔で不安になることを言わないで下さい……ふぁぁ」
 たっぷり甘えたら、急に眠気を感じてきた。
 安心感からか、瞼がどんどん重くなるのを感じる。
 「眠いです……すみません満月さん、寝てもいいですか?」
 「どうぞ。その代わり一つお願いがあります」
 「お願い?」
 「寝てる間、指を貸してもらって構いませんか?」
 「指……」
 薄目になりつつも、彼女の姿を見る。
 満月の股は、シーツに水溜りを作っていた。
 「何に使う気ですか……うーーーーーん……まあ、いいと思いますよ……」
 眠気もあって考えるのも面倒になったマルカは、満月に許可を出して目を閉じた。
 「おやすみなさい……」
 「おやすみなさい。そして、いただきます」
 薄れゆく意識の中で、マルカは右手の人差し指と中指が、生暖かい感触に包まれたのを少しだけ感じた。



 起きた時には、既に夜だった。
 照明の僅かな明かりの中、マルカは身体にかかっていた布団を上半身だけ剥がした。
 身体は裸のままだった。満月は、既にいない。
 「……」
 手探りの中に、シミになっている部分があった。先程満月が居た場所だ。
 両手を確認する。満月が使ったはずの右手は、乾いて綺麗になっていた。しっかりと拭かれた様子である。
 「……」
 マルカは右手の匂いを嗅ぐと、ぺろりとその指を舐める。
 少しだけ、しょっぱいような気がした。