「……おにいちゃん」
 特に性行為もしておらず着衣状態のままでベッドに寝転がり通販で取り寄せたと思しき雑誌を読み耽っていた所に聞こえるか聞こえないかくらいの声量でメイドが呟いたその一言で背筋のバネのみを使い起き上がって瞬く刹那に顔面同士を密着させる。
 「今なんと」
 ハル。
 おにいちゃんの『ん』が言い終わるかどうかのタイミング。
 あまりの速度に声が詰まったのは、今しがた主人を呼んだメイド。
 「…………………お、おにいちゃん、って言った……んですけど……」
 マルカ。
 まずかったですか、と顔を引き攣らせている。
 「誰が?」
 鼻同士を突き合わせながらハルは尋ねる。
 その迫力に圧倒されて身を仰け反らせながらも(ハルは密着したままそれについてくる)、マルカはどうにかそれに答えた。
 「………………………………ご、ご主人様が、です…………けd」
 マルカの口が塞がれた。
 ハルの唇だった。
 「んむっ!?」
 左腕で抱きしめられ、右手は頭をぐしゃぐしゃに撫で回す。おまけに両足を絡めて逃げられないようにロック。
 D.K.H(だいしゅきかわいがりホールド)。
 ハルの愛情表現の中でも最上位に位置する抱擁により、マルカは拘束されて激しく揺さぶられた。
 「ん~~~!!」
 ぱっ、と口を離すハル。
 これまでマルカが見たことのないような、輝いた瞳をしていた。
 「マルカ」
 「は、はい!」
 「今度遊園地つれてってやる」
 (あ、怒られてるわけじゃなかったんだ)
 ハル相手のフェラチオには慣れたがキスの経験は僅かなマルカ。
 昂ぶる鼓動を抑えながらも、こくこくと小さく頷いた。
 
 

 ◯



 「んー……」
 「本当にマルカはおっぱいが大好きですね」
 「満月さんが大好きなんですー……」
 満月の乳房に包まれるのが癖になったマルカ。
 胸を露出しているかしていないかに関わらず、ことあるごとに顔を埋める。
 その光景を見ているのはハルだった。
 「俺の股間に顔を埋めてもええんやで」
 「それはいいです」
 「そっかー……」
 満月に諌められて態度はいささかマシにはなったが、相変わらず満月に抱きついている間は相手にされない。
 仕方がないので、ハルも満月の乳首に吸い付く。
 「ん……ご主人様……」
 満月の反応が変化する。
 負けじとマルカも乳首を口に含んで舌で愛撫し始めた。
 「もう、マルカ……そんなに吸っても、母乳は出ませんよ」
 「母乳……満月さんの、母乳……!」
 そのワードを聞いた瞬間、やる気に満ちたような顔をする。
 「ご主人様! 満月さんを妊娠させましょう!」
 「どんだけ母乳飲みたいんだお前は。そう言えばお前は生理もう来てるのか?」
 「私はまだですよ。ちょっと遅い方みたいです」
 「それでは中出しし放題ですね」
 満月の下衆い発言に、マルカは苦笑いで答える。
 「ま、満月を孕ませるのはまだ先の話だ。ミルクが飲みたいなら俺のちんこから」
 「それはいいです」
 「そっかー……」



 ◯



 「……………」
 尻だった。
 生の尻が、壁から生えていた。
 「……………………満月さん?」
 「その声はマルカですね」
 (お尻が喋った…………)
 ほとんど動かせるスペースも無く、ぴったりとした穴から露出した満月の尻は喋ると同時に僅かに揺れた。
 マルカが広い屋敷の探検から帰ってきた所、満月の自室(と言ってもほとんどハルは自分の部屋に常駐させているが)のドアが別物に変わっていた。
 先程までは何の変哲も無いドアだったのが、腰元の高さに女性の尻が生えている奇妙なドアへとすり替わっている。
 「……何してるんですか……?」
 答えなどだいたいわかっているし聞きたいわけでもないが、それでもマルカは尋ねずにはいられなかった。
 満月(の尻)は答える。
 「こうしていると、ご主人様が通りすがった時にかなり高い確率で使用して頂けるのです」
 「あ、命令じゃないんですね」
 「ええ。私はご主人様の肉便器ですので」
 「そうですね」
 この人バカなんじゃないかな、と思いつつもマルカは適当に相槌を打った。
 満月の姿は卑猥と言うよりは滑稽である。
 全てがおかしい。見た目が面白いの意味と発想が狂っているの両方で、おかしい。
 こんな顔も見えないような肉と穴に欲情する人なんて――
 「…………」
 ――尻を見つけるや否や、音を立てずに忍び足で近づいて来たこの人くらいだろう。
 口を開きかけるマルカを、ジェスチャーで制止する。
 「どうですマルカ、貴女もやってみますか? このご主人様を待っている時の胸の高鳴りは癖になりますよ。マルカ? 行ってしまいましたか?」
 黙り込んだマルカに話し続ける満月の尻。
 ハルは足音を殺してその前にしゃがみこんだ。怪訝な目で見るマルカを手招きする。
 (なんですか?)
 尻の前に二人の顔が並んだ。
 ハルは人差し指を立てて、突き刺すジェスチャーをした。
 (?)
 何をやっているのか意図が掴めない。
 首を傾げるマルカをハルは顎でしゃくった。
 (入れろと!?)
 そう。ハルはマルカに、満月の秘部を指で貫くように言っていたのだ。
 首をぶんぶんと振るマルカに、今度は立てた人差し指で「一回だけ! 一回だけ!」と笑った。
 (えぇ~……)
 「マルカ?そこにいますよね?」
 足音が聞こえなかった事からマルカが離れていないと判断した満月。マルカの事に気を取られ、気配を消したハルの存在には気づいていなかった。
 その不安そうに喋る尻を見ていると、悪戯心がにわかに芽生えてくる。
 (……どうなるんだろう)
 ごくりと唾を飲み込み、人差し指を立てるマルカ。
 さっきまでギャグにしか思えなかった満月の尻が、急に淫靡なものに見えてくるのが不思議だった。
 特別ボリュームがあるわけではないが、柔らかそうな肉付きをしている。
 アンダーヘアは綺麗に剃ってあり、毛の一本も見当たらず、シミの一つもない綺麗な尻だった。
 きゅっと閉まった肛門の下に、一本の縦筋。
 よく見ればそこはほんの少し湿り、光っていた。
 マルカの細い指くらいなら、抵抗なく受け入れてしまうだろう。
 「……」
 無言で目を合わせ、頷く二人。
 少女の指が、秘裂に伸びていった。
 「ひゃんっ!?」
 差し込んだ瞬間、尻がびくんと大きく震えた。
 膣道がキュッと締まり、マルカの細指に肉が齧りつく。
 締め付けに驚き、引っ込ませようとするマルカの指を、行かないでと懇願するように肉壁がしっかりと抱き包めた。
 「うわ、すごいですこれ! 吸い付きが凄い!」
 入れられる事はあっても入れた経験は皆無のマルカ。
 初めての男側の感触に、思わず声が出てしまった。
 「ま、マルカが指を入れたんですか……?」
 はい、と答えようとするが、その前にハルが無言でマルカの左手を掴み、満月の尻に優しく当てる。
 そして自分は右手で、満月の尻の右側に指先だけ触れた。
 ハルの行動の意味を数秒考えて、マルカは閃いた。
 (……なるほど!)
 「満月さんのおまんこに食べられてるみたいです……美味しいですか? 私の、おちんちん」
 「!?」
 意地の悪い笑みを浮かべるマルカ。顔が見えずとも、その声には嗜虐の色が含まれているのがわかった。
 彼女もすっかり、この館の住人であった。
 「マルカ? おちんちんって、え……!? ひぅっ!」
 深く考える前に、マルカは更に奥へと擬似ペニスをねじ込んだ。
 濡れそぼったそこは潤滑を増し、締りはそのままによく動くように変化する。
 そしてそこを、小さなペニスが往復を繰り返した。
 「んんっ……キツキツで気持ちいいです、満月さんの膣内……もっとほじくっちゃいます」
 見れば彼女は立ち上がり、右手を股間に密着させ、腰で満月を犯している。
 立ちバックの姿勢で満月を貪るその表情は、本当にペニスを挿入してるかと思えるほどの惚けたものだった。
 (やっぱりSだわこの子)
 マルカの才能と言うか性癖と言うか、そのようなものを開花させつつあるハルは静かにほくそ笑んだ。
 楽しいなら、それに越したことはない。
 「どうですか、私のおちんちん! 気持ちいいですか?」
 「はっ……あっ……まる、かっ……!」
 自分のより数段小さいそれに貫かれながらも喘いでいる満月。それを見て複雑な気分になる。
 (プチNTR、みたいな)
 自分のものである満月が他人に犯されて悦んでいる姿は、ハルにとって新鮮な光景だった。
 もっとも、他人と言ってもマルカだ。他の誰かならともかく、彼女ならどんどん犯せと言った所である。
 (ふんっ)
 「ひぁっ!」
 しぱーんと尻を叩くハル。いつものスパンキングとは違った角度と力の入れ具合で、マルカの責めを演出する。
 「黙ってちゃわからないですよ! ほら! ほら!」
 (ノリノリである)
 楽しそうに叫ぶマルカに、弱々しい声で満月が答えた。
 「きもっち、いい、ですっ……!」 
 「よく言えました。ご褒美です」
 叩く毎に、突く毎にきゅんきゅんと締まるその孔をごりごりと抉る。
 肉の襞を掻き毟るように、強く。
 「あっ、あっ、あ、っ………!」
 (あ、すげー)
 大きくびくんと震えて、満月が絶頂を迎えた。
 ひときわ強く締め上げたあと、弛緩する肉壷からそれを引き抜く、マルカ。
 指はすっかり涎にまみれていた。
 満足そうな表情をしたまま、無言でマルカは満月から離れた。
 アイコンタクトを受け取ったハルは、すっかり大きくなった自分のものを一気に突き入れる。
 「ひ、ああああああああああああああああああっ!? え、ご、ご主人さまっ!?」
 「マルカです」
 全く似ていない声真似を使い、激しく満月を陵辱し始める。
 マルカはそれを一瞥して笑うと、指を一舐めして自分の部屋に帰っていった。
 




 「…………私もバカになっちゃったのかな……」
 そして、自己嫌悪で頭を抱えるのであった。