午前二時。日本で言うなら、草木も眠る丑三つ時である。
「マルカは」
 闇の中で小声に尋ねるハルに、満月もまた小声で返す。
「ぐっすりと眠っておられます」
 言葉通り、二人に挟まれたマルカは涎を垂らして寝息を立てている。
 満月は自分の体に絡みついている少女の細腕を、起こさないように優しくほどいて抜け出す。
「ごめんなさいね、マルカ」
 頭を撫でて、満月はそろそろと起き上がって未だ夢見心地のマルカに布団をかけ直した。
「ま、この寝顔を見る限り起きてきそうにはないし大丈夫だろ。とっとと行くぞ」
「はい」
 ハルはガウンを羽織り、満月は全裸のまま。
 寝室を出て、食卓へと向かう。
 理由はもちろん――





【マルカに見せられないド変態セックスをしよう!①】





「いやー、子供ができて営みができなくなった夫婦の気分だな」
 ハルは廊下を歩きながら呟く。
「はい。可愛い可愛い、娘のようです」
 微笑んでそれに答える、一糸纏わぬ満月。

 マルカを交えて、度々性行為に勤しむ二人。
 倒錯的、背徳的でありながらも彼らの日常はとても穏やかで、心が満ち足りていくような暖かいものだった。
 が。
「マルカはなー、あいつは修行が足りん。満月がちょっと卵を産んだくらいで喚くわ、しょんべん飲ませてって言ったらぶん殴ってくるわ」
「恐らく陵辱を受けていたのもあって、私やご主人様との性行為にロマンを持ちたいと言うのもあるのでしょう。あれとこれとは別物だと思いたいのです」
「うーむ、そう言われると強制しづらいな……」
 満月の言うとおり、マルカの性行為に対する恐怖感は薄らいでいるようで、未だに根強く残っているようだ。
 雰囲気を出してやると面白いくらいに積極的になるあたり、恋愛沙汰に夢を見られるような心境になってよかったと言うべきではあるが。
「いつかは絶対にマルカと満月のカクテルを味わってやる……!」
 当の恋愛対象はどうしようもない程の変態両刀ペドワカメであり。
「私もご主人様とマルカのカクテルの喉越しを想像するだけで涎が湧き出てきます」
 親愛と性愛が入り交じった優しい姉はそれを上回るド変態淫乱サイボーグ肉便器である。
 既に二人のアクロバティックな性癖に少しずつ影響を受けていることはマルカも自覚しているものの、完全に染まるつもりは毛頭なかった。
 もっとも、ハルはまだしも満月の優しく緩やかな洗脳から逃れられるはずもないが。
 一応、満月の善意ではある。


「今日は久しぶりの満月パフェか。最近ご無沙汰だったからな……想像しただけでちんこから汁が飛び出しそうだ」
「私も、これからご主人様に食べて頂けると言う事実だけで排卵が始まりそうです」
 下品極まりない会話をしながらプレイの準備を進める二人。
 満月の仕込みは、前日から既に始まっていた。
 体は外も中も綺麗に洗っており、浣腸もしっかりと済ませてある。
 いつでも食器として使える状態だ。
 そして冷蔵庫には、マルカにスイーツを食べさせた材料の残り――本当はこれを行うために買ってきたのであったマルカに食べさせた方が残りなのだが、勿論本人には内緒である――が用意されており、食卓に寝そべった満月の隣に並べられた。
「ぐへへへへ、良い光景だぜ」
 とても主人公とは思えない三下悪役のような台詞を吐き、ハルは満月の豊満な乳房を指で突いた。
「あっ……」
 満月が荒く息を吐く。
 同性のマルカですら見惚れる程に美しい、彼女の肢体と、そして痴態。
 眼鏡をかけたままの知的そうな顔が、ほんのりと上気して薄桃色に染まった。
「こんな上玉を肉便器にして好き勝手できるなんて、たまんねぇよなぁ」
 ハルは下卑た笑みを浮かべながら彼女の陰核を指の腹で舐った。
『蜜を溢れさせろ』のサイン。
 もっとも、命令されなくても十数秒後にはそうなっていたであろうが。
「ふぅ、ふぅ……」
 満月の中側から、熱を帯びた液体が染み出してきた。
 主人好みになるように『味を調整した』、濃厚な肉汁。
 ほんのり甘いそれを、直接口を付けて啜る。

 ずずっ、ずちゅっ、じゅるっ、ずぞっ……。

「ああ、ご、ご主人、さまっ……!!」
 感度を強めに設定していた満月は早くもその刺激で達し、溢れる蜜の量を増やした。
「おっといけねぇ、つい口を付けちまった。まだ始まってないってのに」
 意地悪な顔でハルは口を拭い、陰唇を歪動させて情けをせがむ満月から離れる。
「さて、最初は何から行くか。まずは定番のバナナからでいいか?」
 ハルの提案を、満月は断らない。
「は、い……。ご主人様の、お好きなように」



 以前にも記載したが、満月の性行為に関するスキルは度を超えに超えている。
 一例を挙げると、膣やアナルに入れた野菜を噛み砕いてペースト状にすることができる。
 更に言うなら、胡瓜や人参を輪切りにすることも容易い。
 そして、とても生身の人間とは思えないその力で主人を傷付けることは絶対にないと断言するのだから、もうそういうものだと考える他ないのだ。
 少なくとも、ハルはその言葉を信じている。彼女の膣に、何の心配もなくペニスを突っ込むことができる。
 それを真っ当な信頼関係と呼べるのかは別として。


 まずはバナナシェイクを作る事を命じられた満月は言われるままにバナナ二本と氷三つを呑み込み、腹筋を使って砕き、かき混ぜ、更に蜜をたっぷりと絡めた。
 腹の中でごり、ごり、と氷を砕く音が、外にも聞こえてきた。
 そして『直飲みにするか……いや、今日の気分はグラスだな』の命令に従って、満月は食卓の上で蹲踞の姿勢を取り、主人専用のドリンクサーバーと化す。
 股の下に置かれたグラスに、特製のバナナシェイクを注ぐ満月。
「はぁぁ、ぁっ、冷たっ、んんっ」
 中で停滞していた冷たい液体が膣道を下っていく事に快感を覚え、喘ぎ声と共にそれを全部吐き出した。
 そして見た目にも上手そうなバナナシェイクを主人が一気飲みする姿を見て、ぞくぞくと背筋を震わせるのだった。
「おっと、こぼれちまった。って冷たっ!」
 案の定と言うべきか、バナナシェイクはハルの股間へと溢れる。彼が冷たさを感じるとほぼ同時に満月は反応し、そこを暖めていた。
 濃密な甘さのバナナシェイク。今の今まで自分の中に入っていたその液体の味を舌で確かめていると、更に濃い液体を口に受けた。
「ふぅ、興奮してたせいで早漏を披露しちまったぜ。ま、まだまだ出るから心配すんな」
 名残惜しさを覚えながら、満月は彼のペニスから口を離し、この世で一番好きな飲み物(二番目はハルの小便である)を飲み干して。
「ああっ」
 涙すら流しながら、その快楽に、背徳に、自らの体を抱きしめて言った。
「……なんて幸せなのでしょうか、私は……」

 夜はまだまだ続く。
 金持ちの悪趣味な宴は、始まったばかりであった。