五匹の雌猫は、ワカメの体中に刺激的な接吻を続けていきます。
 二の腕。腿。首元。脇腹。
 決して深手にならないように、一口分だけ。皮を歯で破るような、擦り傷程度のそれが幾重にも重なり、断続的な痺れをもたらします。
(あっ、これちょっとやばいかも……)
 一方で長女も、尚も肉棒を咥え込んだままの中に汁が小刻みに放たれて、彼が性感を味わっているのが伺えました。
「ちゅっ、んちゅっ……お楽しみ頂いているようで何よりですにゃあ。次はもう少し、刺激が強くなりますにゃ」
 三女の口に付着した血を舐め取り、そして舐めとらせ、長女は妖しい光を目に灯しながらロープを手にします。
 体中から僅かに血を滴らせるワカメの左腕にそれを巻き付け、気合を入れて強く縛りました。
「はい、準備OKですにゃ。それではお客様、左腕とさようなら、しましょうにゃ?」
 その直後、ワカメはその部位に氷のような……冷気が駆け抜けていったような感覚を味わいました。
「!?」
 驚いてそこを見ると、ワカメの左腕は既に存在しませんでした。次女がそこに勢い良く鉈を落とし、一撃の元に腕と体を分断していたからです。
 それを目にした瞬間、ワカメは溢れそうな程の激痛を感じ、叫ぶ……ようなことはありませんでした。
「っっっ!!!!?」
 びゅく、びゅるん、びゅびゅっ。
「は、にゃっ……!!」
 溢れそうな程の激痛はそれを認識すると同時に肉体の悦びへと変換され、その熱はそのままペニスから飛び出しました。
 長女は痛いほどの熱を体の奥に吐き出されて、前のめりに倒れてワカメの胸元へと飛び込む形になります。
 妹たちはと言えば、泣き別れとなったワカメの左腕……彼女たちにとっては肉料理にしか見えないそれを、四人で貪ってる最中でした。
「おきゃくさまっ、おい、しいっ……」
「下等生物にしては、中々」
「おにくー! うまー!」
「まー!」
 久方ぶりのまともな食料にありついた山猫たちは、我先にと人肉に噛り付き、噛み千切り、咀嚼し、飲み込んで行きます。
「ふふっ、どうですか、お客様……あなたの腕が、年端も行かない少女達のごはんにされてますにゃ……。あなたのおかげで、あの子達が健やかに育つのです、にゃ……」
 鎖骨付近から出る血を啜りながら、長女はワカメに囁きかけます。
「お客様がたっぷり出して頂いている精液も、妹たちの栄養として吸収され、たっぷりお腹を膨らませますよ、にゃ……」
 妹たちから、お姉ちゃんの分、と所々骨の露出した肉塊を手渡されました。
 ありがと、と優しく微笑み、彼女は腰を上げてワカメの腹にたっぷり搾り取った精液を吐き出します。
 妹たちがそれに群がってくるのを確認すると、長女は精液の残りを手に持った肉塊に垂らし、再びワカメに跨りました。
 そしてワカメに目を向けながら、白い粘液がかかったそれを舌で舐り始めます。
「お客様の肉っ……熱いソースが絡んでっ、とても固くて、最っ高においしいですにゃぁ……!
 人間のオスを犯しながら捕食するの、とても野性的で、嗜虐的で、涎が止まりませんにゃっ……!!
 大好きですにゃっ、愛してますにゃっ、ずっとこうして、あなたの肉を味わい続けていたいですにゃっ……!!!」
 性欲と食欲を混ぜ合わせた悦びを得た彼女の肢体は大きく揺れ、ワカメのペニスに愛の抱擁をすると同時に果てました。
 体中から汗を噴き出し、息を切らせながらも長女は笑います。
「次は……右足、いきましょうかにゃ。頑張って生きて下さいにゃ。ずっとおちんぽカチカチにしてて下さいね、にゃ」
 再びロープを手にし、足の付け根を縛ろうと巻き付けようとした、その時。












 天井をぶち抜いて、稲妻が落ちてきました。
「!?」
 正確には、稲妻が落ちてきたような轟音と共に人が降ってきたのですが。
 何が起こったのかわかるのは、落ちてきた当人を除けば一人しかいませんでした。
 給仕服とは少し違う、女中のような服を纏った女性が、屋根をぶち抜いて着地したのです。
「な、な……?」
 姉妹たちが愕然とする中で、その女中は主人の姿を認めます。
 四肢を縛られて凌辱され、そして五体の一を失ったその姿を。
「……!!!!!!!!!」
 女中は自分の不徳を激しく悔いると同時に、視界に入る主人以外の全てを鏖殺対象と見なしました。
「五匹……か。全員まとめて死を懇願させるのは手間だな――

 ――繋ぎ合わせて一匹にしてやる」

 その姿は、眼光は、明らかに山猫を捕食対象に見る猛獣のそれでした。
 五匹は泣き出しました。
 あんまり心を痛めたために、尿がだらだらと漏れ、お互いにその顔を見合わせ、ぶるぶるふるえ、声もなく泣きました。
 メイドが腕をびきぃと鳴らし、目にもとまらぬ速度で彼女らの息の根を止めようと疾駆し――



「おすわり」

 ワカメの一言で、跪きました。

「……ッ!」
「出てきてそうそうサイコパスみたいな台詞吐くのやめろ。これはそういうプレイだから……まぁその、なんだ。気にすんな」
「……その、左腕、は……!」
『しかし』、と口答えしそうになるのを必死で堪え、メイドはワカメの体の心配をします。
「あー、まぁお前相手だとこういう(俺が)欠損する系のプレイはしてくれないからな。最高のタイミングで来てくれたわ。さすが満月。あとこいつら全員連れ帰るから」
「……ご主人様がそう仰られるなら」

 何が何だかわからない内に五姉妹は彼らに連れられて屋敷を後にします。
 そとで待ち構えていたのはUH-60ブラックホークでした。
 何がどうなっているのかわからない内に五姉妹はヘリに乗せられ、ワカメが熟睡しメイドに睨まれている横で乾パンを配られ、ただそれを握って無言で俯いていました。
 ヘリは離陸し、屋根が破壊された注文の多い料理店は破棄されます。
 もう二度と、獲物が訪れることはないでしょう。






 その後。
「ひゃっ、ど、どうしたんですかご主人様、その左手!?」
「うわぁだんながターミネーターみたいになっとる」
 財力で最新式のメカメカしい義手を着用したワカメは左手を失った事を忘れたかのようにウキウキでしたが、メイド達は若干引き気味でした。
「ふはは怖かろう(ガションガション」
 と強がってはみたものの、彼女達相手に遊ぶ時は生身に近い外見に変える必要がありそうです。
「ハル兄何それ!? ウィンターソルジャー? すげー! かっこいい!」
「残月……」
 彼以外の唯一の男性である弟(ベッドの上で妹にしてやったりはしますが)は一人興奮しながらぺたぺた触ってくれたので、それが救いでした。
「きもい」
「幻月…………」
 彼が手を付けてない唯一の女性である妹は未だ懐いていないため、端的な感想だけ言って部屋に戻ってしまいましたが。
 幸い、左腕以外の怪我は軽傷だったため、お抱えの医師に大金を渡してほとんど元通りにしてもらえました。
 一方で、猫娘達はと言えば……



「あああああーっ! トゥーシャァァァ!! あんた、私の黒毛和牛を……!」
「隙を見せる方が悪い……野生の鉄則」
「た、ターシャ! 飲み物ならそっちにあるでしょ! おっぱいは後にしなさい!」
「んむー」
「ターシャそのまま! リュシャ姉のイベリコ豚いっただき! ついでにラシャ姉のも!」
 食卓にて醜い争いを始めておりました。
 食べる物がなく飢えていた頃は五匹で仲睦まじく分け合っていました、が……。
 いざ山のように出されるとなると、特に年少の娘は年齢相応の欲が丸出しになり。
「野蛮で意地汚い野良猫が五匹……ですね」
 主人に『まぁお前的には納得いかないのもわかるが、それなりの待遇をしてやってくれ』と言われたメイドはやや憮然とした顔で彼女らを見ていました。

「い、いい度胸してるじゃないあんたら……! 四匹まとめてデザートにしてくれるわ……!!!」
「いくら最年長だからって四匹相手に勝てるとは、マンモス愚かな思考……大姉さんこそ、女体盛りの器にしてあげる……」
「ラシャ姉ぺろぺろ祭りだー!」
「だー!」
「えっ私こっち側なの!? 被害者なのに!?」

 そしてにゃーにゃーと煩い……もとい姦しいキャットファイト大乱交が始まってしまいました。
 どたんばたんぱりんにゃんにゃかにゃんにゃかと食卓は色々な意味で乱れに乱れます。

「………………」

 五姉妹は乱痴気騒ぎに夢中で気づきませんでした。
 直立不動で立っていたメイドが、すぐ後ろまで迫ってきていることに。



 に゛ゃー、と言う五重奏が残月とキャプテンアメリカごっこをしていたワカメの耳に聞こえました。
(それなりの待遇って言ったし……まぁ命は大丈夫だろ、たぶん……)


 ところで、先日一ぺんだだ漏れになった五匹の外尿道括約筋だけは、屋敷に行っても、お風呂にはいっても、もうもとのとおりになおりませんでした。

(おしまい)