Neetel Inside 文芸新都
表紙

スパイダーマンコ
二章 オチンコクセー・クルセイダーズ

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朝。
けたたましい鶏の鳴き声と、ホームレスのオッサンが射精しながら吠える声に、テリーは快適な目覚めを迎える。
トーストに猫糞バターを塗って、気分はすっかり木村拓哉である。
「ふふ……陽気な朝にイケメンの俺。イカ臭い部屋にマンコ臭い俺の手。神が住む部屋にふさわしい」

テリーは新聞を開き、ニュース欄をチェックする。
文字は殆ど読めないので、とりあえずこのニュースはエロい話題なんだろう、と妄想する。
そうすることで己の性欲スピリットを高め、高次元へと昇華し、アセンションを迎えるのだ。

鼻クソを食べながら新聞を見ていると、気になる一面を発見した。
「マンホール投げ大会……?」

テリーの住む町でやっている大会の様だ。詳しく説明を見る。

「この大会はマンホールの蓋を通行人の群れにほうり投げ、何人の頭蓋骨を叩き割れるかを競う大会です……」

「安全性にも対処しており、通行人が死亡した場合は迅速に墓を用意できるよう準備しています……」

テリーは自分の手についたマンコを眺める。

「こ……これや!このマンコの強大な粘着力!これを使えば、この大会はワイの勝ちや!」

「左様。この大会は、テリー殿の勝ちで候」

突如、聞き覚えのない声がしたので振り返ると、猫のフンドシが喋っていた。
「フンドシ……!お前、喋れたのか!?」
「厳密には喋っていない。お前の脳に直接声を送っているのだ」
「じゃあ……喋れないんだな!?」
「喋れない」
「なーんだ、ビックリした……喋ったのかと思った……」

テリーはほっと胸を撫で下ろす。
「あああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」

持ち前の狂暴性を発揮し、テレビを顔面で叩き潰した。

「よーし!行こうぜフンドシ!一位は俺達のものだ!」
「各の如き珍妙なる漢の元、糞尿を餌に捧ぐも良い哉。良い哉」

テリーとフンドシは勢いよくトイレに飛び込み、下水道へと流されていく。

マンホール大会には、テリーを陥れる大きな罠があるとは、今の彼らには知るよしもなかった……。

     

下水道を流れるショックでフンドシは死んだが、テリーは辛くも会場にたどり着いた。
いずれもイカ臭い猛者ばかり、1人にいたっては全裸で回転しながら空中浮遊するものまでいる。
「ふふ……面白いじゃねぇか、俺様が必ず一位を取ってみせるぜ!」
「左様。貴殿なら一位を得る等容易き芸当で在ろうと存ずる」
意気揚々と鼻くそを食べるテリーに、フンドシ二世(輪廻転生済み)も自慢の肉体美にプロテインをほうばり、もはや会場のイカ臭い空気を飲み込んでしまう始末だ。
ウンチパク道路にて、幾多もの強者達は整列にならび、進行者の話を聞き出した。

「皆さんはこのマンホールを意気高々と放り投げ、歩行者の頭をトマトの様に叩き潰してもらいます」
この段階で既に不満者が続出したようだ。凡そ8割が会場を後にする。
「安全に全く問題はありません。マンホールが当たった瞬間その歩行者は人権を剥奪され、ウミウシと同等の扱いを受けるため、人間に危害が及ぶことはないのです」
フンドシ二世は嘔吐しながら糞をぶちまけ、にんまりと微笑み、この世を後にする。

「また、私達はこの大会で発生した事件について全く責任を負いません。よろしくチンチーン!」
「よろしくチンチーン!」
司会者の挨拶が終了した。
この時点で会場に残っているのは僅か二人。精鋭化した真の修羅達だ。

「正々堂々闘おう。僕はロドリゲス。ロドリーって呼んでくれ」
「ああ、僕はテリー。君はロドリゲスだから、ゲス人間と呼ぶことにするよ」

両者の間に飛び散る火花。
フンドシ三世(輪廻転生済み)はテリーに注意を投げ掛ける。

「ヘイテリー、この男を侮るんじゃないぜ。この顔つきはメキシコマフィアより肝が座ってやがる」
「わかってるさフンドシ。この男は一筋縄ではいかない」
「ふふ……。理解してるなら話ははやい。お互い正々堂々と勝負しようじゃないか」

ロドリゲスが言葉を終え、背後を向ける。その刹那、
「ああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
テリーはロドリゲスの頭を鉄バットで叩き潰した。

     

「なにをするだーっ」
「バカヤロー敵に背を向けたのが運の尽きや」
テリーは汗だくになりながらバットを振り回し、ロドリゲスをイカの塩辛の様に変貌させた。
驚いたのは審査員である。
抗議の為自分の糞を放り投げながら、テリーを叱責する。
「どうするんだ!これじゃ大会は成り立たないじゃないか!」
「心配はない。僕の相手は僕だ……」
力尽きたフンコロガシの様に地べたを這いつくばるロドリゲスを前に、テリーは言葉を続ける。
「いつの時代でも……なんか言います……自分の敵は自分だって」
「テリーさん……」
「僕は修羅です……例えロドリゲスがこのまま息途絶えても、ワイが闘うことは……止められへんのです」
会場の審査員は皆涙を流し、フンドシ三世は涙を流しすぎた結果、急性結膜炎で逝去する。
「審査員さん……僕にやらせてくれませんか。必ずロドリゲスの意思を継いでみせます」
そう言いながらテリーは膨らむ自分の股関を研磨していた。

審査員はテリーの威光を褒め称えた。
「漢である。真の修羅である。江田島平八にも劣らぬであろう」
審査員はテリーに告げる。
「続けたまえ、テリーくん。君なら必ずや大会の最高点を超えるだろう」
「感謝感激です」
テリーは鬼の形相で、マンホールを放り投げ始めた。

寂。
そして、瞬。
曲線美は跳ねる鹿であった。
強靭は鷹の爪の如くであった。

テリーの放つマンホールは通行人の頭を次々割っていく。
辺りは鮮血で彩られた。それは、寒さに伴い、凝固しかかるゼリーのようであった。
精液のように華麗に跳ねるマンホールは、吸い込まれるように頭を狙い定めて、向かっていく。
審査員も漏らす。
「美しい」と。

テリーは全てのマンホールを投げ終えた。
「見事で御座る。我が相棒に相応しき働きで候」
フンドシが労いの言葉をかける。
だが、テリーの様子が、息荒くおかしい。
「テリー?」
「へばぶ!」
吐血するテリーは地面に倒れ込んだ。

     

「妊娠してる…?」
テリー井上は搬送先の病院でそう告げられた。
顔はわななき、手はかすかに震えている。
「そうです。どうやら妊娠9か月のようですね。ただちに出産の準備をしてください」
「相手は…相手は誰なんです!?」
「フンドシさんです」

テリーが振り向くと、黒柳徹子のような神妙な面持ちのフンドシが毛玉を吐き散らかしながら、テリーを見つめていた。
「フンドシ……あなたまさか……」
「夜這いしたで候う」
「通りで最近酸っぱいものが食べたいと思ったら……」
「元気な子を産むんだ。テリー、話はそれからだ」
「もう……強引なのね。だから好き!」
テリーはフライパンでフンドシを叩き潰すと、すぐさま出産の準備にはいった。

強烈な陣痛に襲われながら、波紋の呼吸を練る案配でヒーフーするテリー。
すると突如、股関から大量の汁が溢れ出してきた。

「あっ、破水だ!」

破水ではなかった。
汁に触るものは、皆ことごとく溶けていく。

「ぎゃあああああーッ、なんだこれはッ!」
「さ……酸だッ、酸を巻き散らかしているぞ!」

病室は地獄絵図となった。
テリーが力めば汁が飛び出し、そのたびに看護婦の体が溶けて腐っていくのである。

「ふんぬらば!ふんぬらば!」
「ぎゃあーッ!ああああああーッ」

テリーは地獄の閻魔のような形相を浮かべると、こう叫んだ。
「儂をこの部屋に連れこんだのが運の尽きよ……、皆殺しにしてやるわーッ!」

     

テリーのご乱心に驚愕したのは産婦人科医長、金玉蹴るの助である。
このままだと看護師が全滅する、全滅すれば病院が潰れる、病院が潰れれば無職まっしぐらである。
蹴るの助は恐怖心を払拭し、スパイクを履き、胸にチェーンソーを抱いてテリーの前に躍り出た。
「貴様ぁ!私の病院でナニをしている!?」
「私の病院だと?思い上がるなよ、人間!」
「なに!?」
「子供とは天から授かりし命……つまり、神である私が貴様ら人間に授けたものである」
テリーは血涙を流しながら、言葉を続ける。
「しかし今はどうだ!?人間は子供を作ったなどと形容し、神への感謝など微塵も見せぬ。俺は…そんな人間を成敗するためにきたんだーッ!」
テリーの背に巨大な羽が生える。テリーの形相は人智を超越する威厳に満ちた顔で、周りの人間を畏怖の感情で満たした。

そんなテリーも金玉は弱かった。
金玉を数回本気で蹴られたテリーは「けばふ!」などと絶叫しながら、泣きわめき医長に土下座する。
「もう二度と悪いことしないから、金玉蹴らないでください」
「本当か?本当だな!?」

フンドシもカルテルを煽りながら、フッと息を漏らす。
「烈々成る戦いで御座ったな、テリー。帰宅しよう」
「ふふ……。俺も大きくなったら、医長みたいな金玉を蹴るのが上手い男になりたいな」
医長ははにかみ、照れ笑いする。
「また来たまえよテリー君。今度は君に金玉の簡単な潰しかたを伝授しよう」
「蹴るの助。君との再会を心待ちにして、今日は帰るよ」

二人は握手し、帰路についた。
だがその翌日、蹴るの助は死んだ。
肥溜めに尻だけ浮かばせながら、アナルに「マンコを司る男、我らが始末する也」と書いたメッセージカードを嵌め込み。

テリーは驚愕し、悲嘆に暮れた。
あまりの悲しみにFC2動画に自分のオナニーシーンを投稿するほどだったが、再生数は伸びず、唯一ついたコメントは「粗チン乙w」だったので、テリーの負の感情は溜まる一方であった。

第二章 完

       

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