Neetel Inside ニートノベル
表紙

お前の命と引き換えに
束の間の休息

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前回の襲撃から一週間後。
雄二とルリの容態は良くなり退院、無事帰宅。
舞台はモテ男の家へと移る。

「いやー、脇腹刺された時はどうなるかと思ったで」

「私も手足切断されたけど、無事に生えてきたみたいで良かったわ」

と、一時の安寧。
モテ男もひとまずは安心したようだ。

そこへ今回新登場のキャラがノックしてくる。コンコン

「アニキィ、客に出すお菓子と茶を持ってきてやったぞ」

「おう、サンキュー」

彼女はモテ男の妹、最近の妹系の流行りにあやかろうという意図が隠されている。
あと姉もいるのだが、部屋に籠ってネトゲにはまってるそうな。

「お、妹はん、かわいいのー」

「は? いきなりなんだコイツ」

てな感じに団欒してる。
ここでモテ男がこれからについて話を始める。

「染川を救いに行く」

「でも、今度は死ぬかもしれないのよ」

ルリはあまり賛成ではないようだ。

「せやけど、このままだと染川はんが何されるかわからへんしな」

沈黙。

染川が捉えられている場所はルリの携帯にメールで来ていた。
だが、相手は二人以上、こちらで戦えるのは二人。
となると危険も多い。

「俺は一人でも行く」

モテ男は決心する。

「モテ男さんが行くなら、私も行くわ」

「ほんならウチも」

と、みんなモテ男に同調。

「なんかわかんねーけど頑張れ」

妹も応援してる。

「でも明日から学校やし、救出は土曜日でええか? 」

「それなら私、この家に止めて貰ってもいいかしら? 組織抜けたから帰るところが無いのよ」

「あー、親が二人とも旅行に行ってるから部屋も空いてるし、いいかな」

「私も別にかまわねーよ」

果たして大丈夫なのか。
救出開始まであと6日。

     

「ここが現場のスクールか」

月曜日、モテ男の通う高校の前に一人の刑事。
名を持薬場和(ジヤク バワー)という。

「ウチの県警は役に立たねーな、今回の山には必ず裏があるのになあ」

持薬はモテ男の通う高校で起こったクラス大半が体チョンパされた事件を調べていくうちに生き残っていたモテ男に目をつけた。

「モテ男くん......調べたら彼の周りで今回を含め3つの事件が起こっていた」

ブツブツ呟きながらモテ男を探すため事務まで行く。
校内はあの事件の後なのに静かだった、あまりに残虐な事件内容の為に情報は最小限の者しか知らなかった。

「すまない持薬場和だ、刑事をしている、モテ男くんの教室を教えてくれぇ」

警察であると証明したあと、彼はモテ男が緊急措置として雄二と共にとなりのクラスに入ったことを知った。
メモした後に階段を上り、目当てのクラスまで行く。
息を整えてから一気にドアを開いた。

「警察だ!! モテ男はどこだぁ!! 」

何故そんなに勢い良く入ったのかは知らないが、みんなシーンとしている。

「あの......授業中ですので......」

教師が小さい声で答える。
その答えに我に帰った持薬は恥ずかしそうにドアを閉めた。


チャイムが鳴る。
すぐさま持薬はモテ男の教室に入った。
座席表を確認してモテ男の席へ向かう。

「貴様がモテ男か」

「そうだけど? 」

先ほどの持薬の行動にモテ男は彼を不信人物だと確信していた。

「おっさんさ、刑事だかなんだか知らねーけどさ、授業中入ってくんのはねーよ」

「うるさぁい、貴様が今回の事件に関与していることは明白なんだぞ」

これにはモテ男、少しドキッとする。
実際モテ男のせいで今回の事件が起こったようなものだし。
しかし証拠も無いだろうとモテ男は平常心を取り戻す。

「なんや、モテ男、万引きでもしたんか」

ここで雄二が首を突っ込んでくる。

「貴様......もう一人の生存者か、貴様も知っているのか、事件の真相を」

「事件? 事件言うたらアレか、蜘蛛のおっさんやらが来た奴かいの、何なら犯人のアジト教えたるわ」

そう言って携帯にメモっていたブラックドロップスのアジトの住所を見せる。
これにはモテ男も呆れて知らんぷりする。

「な、やはり知っていたか。 ふふふ、俺の読みは当たっていたぁあああ、待ってろぉおお犯人よぉおお」

そう言って持薬は窓から飛び出て行った。
ここは二階なので特別な心配は要らないだろう。

「なんや熱心な刑事やったのー」

「ったく、今回は相手が馬鹿だから良かったものの、次からは安易にそういう情報流すなよ」

モテ男は帰る準備をしながら注意する。
これに雄二は笑いながら「まぁええやん」とか言ってた。


「あ、あの、モテ男くん、雄二くん、何かあったの」

そこには前にあった鍋パーティーのメンバーの音無の姿があった。
彼女は元からこのクラスにいて二人が今日自分のクラスに入ってきたことを喜んでいた、大人しく。

「あー音無はん、いやなんでもないんよ」

「そうそう、また雄二が馬鹿やっただけ」

そんな冗談を言いながらやりすごす。
音無は首を傾げながらも無理やり納得した。

     

「さて、帰るか」

モテ男はそう言って鞄を背負う。

「そんならウチも一緒にー」
「あー、わりぃ、一人乗りなんだ......」

一人乗りという言葉に首を傾げる雄二。
そのまま雄二を置いて昇降口へ向かったモテ男。

「なんやアイツ、バイクでも乗るんかいの? 」


雄二を置いて来て昇降口から出たモテ男は校門を出てアレを待つ。
少しして公道を走ってきたのは一匹のタコでした。

「遅かったな」

「ごめんなさい、ちょっと混んでて」

そう、正体はルリ。
どうせ住まわせて貰うのだから送り向かいくらいしようという考えのようで。

「じゃあ頼むわ」

そう言ってルリに乗るモテ男。
ヌルヌル感は相変わらずだった、また学生服がヌルヌルになる。

「てかタコって公道走っていいのか」

「まぁいいんじゃないかしら」

そんな事を言いながら自宅へ向かう。
道路もヌルヌルになるので後ろは大変な迷惑なのだが。

「ふぅ、わりとスピード出るな」

「今は大体50キロかしら」

タコのくせに早いな、とかモテ男が考えていると後ろの車からパッシングが。
気になったモテ男が振り向く。

「豆腐屋......?」

後ろにいたのは古い車に乗った豆腐屋だった。
しかしその技術力は凄まじく、ルリのスピードに追いついている(地面がヌルヌルにも関わらず)。

「なかなかやるじゃないあの豆腐屋」

そういって少しずつスピードを増すルリ。
ちなみにこのとき豆腐屋はタコで走るなと注意したくてパッシングしただけだったという。

「ちょ、この先カーブだぞ、スピード落とせ! 」

モテ男が叫ぶが、ルリの目には勝利しか見えていない。
凄まじいスピードのままガードレールへと向かうルリ。
ギリギリまでスピードを落とさない。

「くっ、ここまでか......」

モテ男が目を瞑る。
瞬間、激しいブレーキ音とともに車体、いや蛸体をドリフトさせる。
曲がり切ると同時に心地のいい加速。
これにはモテ男も唖然。

「さすがについて来れなかったかしら」

そう言って勝ち誇るルリ、しかし。

「おいおい、嘘だろ」

後ろには豆腐屋のライトが。
そう、奴もまたドリフトをかましてきたのだ。

「なんてドライブテクニックだっ」

緊張が走る。
次のカーブが決め手となるだろう。

ドドドド

さっきよりも凄いスピードでカーブへと向かうルリ。
ドリフトのタイミングをはかる。

ギリギリまで、さっきよりももっと。

「おい、ぶつかるぞ! 」

本当にギリギリまで、もうぶつかる1mmくらい前まで。
0.1mm
0.01mm

あれ、曲がらない。

ズドーン!!

ガードレールぶち抜いた。
そのまま崖へ落ちていく。

「って、おーーーい」

モテ男は叫ぶ。
しかし空しくも落下。

ドン。

鈍い音。

「い、いきてる......?」

モテ男は運よくルリを下敷きにして助かった。

「おい、ルリ、大丈夫か? 」

返事がない。

「おい、嘘だよな、こんな事で......」

手を握りしめる。

「返事しろよ、なんで、なんで、こんな......」

涙がこぼれ落ちる。
するとタコ足がピクり。

「モテ男さん......なんで泣いているのです」

ルリの返事に少し安堵するモテ男。

「バカ、おめぇのせいだろぅが」

「そうなのですか、すみません......」

そうは言いながらも瀕死なルリ。

「私はもう......」

「なんかないのか、回復する方法は」

「水が......あれば」

タコだから水、なんて安易な。
さっき涙に反応したのもこのせい。

そこへさっきの豆腐屋が来る。

「なんて無茶な運転しやがる」

そう言いながら車から出てくる。
さすがに崖から落ちたのが気になって降りてきてくれたらしい。

「あの、豆腐ありますか」

モテ男が問う。

「おう、そりゃ腐る程あるよ、ってもう腐ってるか、アハハ」

そう言って豆腐を持ってきた豆腐屋。
そこには豆腐が浸かっている水が。

「豆腐全部ください」

「あぁ、いいよ、締めて1980円だ、おまけで厚揚げも付けてやるよ」

豆腐を受けとるとすぐさま豆腐の水をルリにかけるモテ男。
少しして目を覚ますルリ。

「もうそのタコは走れんだろ、おじさんが送ってってやるよ」

と、好意に甘えて乗せてもらう。

「しかし、タコは入りきるかどうか」

豆腐屋が思案し始める。

「あー、問題ないですよ、ルリ」

と言ってルリを人間モードに変身させる。

「こりゃたまげた」

豆腐屋も驚いている。
これに対してルリは頬を染めながら恥ずかしがっている。


しかしこれで問題解決。
豆腐屋に乗せてもらって自宅へ向かうモテ男とルリだった。



※この作品はフィクションです。
道路は規定された乗り物で制限速度を守って正しい方法で走りましょう。

       

表紙

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Neetsha