Neetel Inside 文芸新都
表紙

少女鬱々
それから

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「彼女が何故、自殺したのか、わかるか?」
僕はわからない。しかし僕は適当に答えた。
「きっと、気でも違ったんじゃないですか?」と、あくまであり得る程度に嘘をついた。
少しこちらを鋭く、それこそ穴が空きそうなほどに見つめた男はその後で「そうか」と言って息をついた目の前の堅苦しいスーツ姿の男は続けて「もういい」と言った。
僕は一言、失礼しますとだけ言って外に出た。

     



ああ、数時間ぶりに見た青い空と人混みに僕は大きな安心感を憶えた。
二度と警察署のような場所に関わることはないように、と心の中で願い、僕はその場を後にした。
しかし僕も驚いた。まさか彼女が僕の腹を刺すとは思わなかったからだ。
三ヶ月も経った、今では僕は気の違った少女から彼女の母親を助けようとしたところあと一歩で助けられなかった悲劇の英雄となっている。
しかし、僕はそんな間抜けじゃない。
本来なら僕は彼女の母親を殺し、いずれは彼女と結婚しようと考えていた。そしてそのあとは取れるだけ搾り取って捨てるつもりだった。
もしも彼女はどうやらあの後、自殺したらしい。
僕が彼女の母親を殺した、という事実はおかげで誰も気づかないし、彼女が自殺したおかげで僕が人殺しの汚名を被ることもない。
僕は服の裾を手袋の代わりにして彼女の母親の腹部に刺さった包丁を抜いたあと、それで喉と顔を数回切った。
しかしそれだけでは怪しまれるだろうと思い、自分の腕や心臓ギリギリの位置に深い傷をつけたのだ。
おかげで僕は確定無罪、そして母親が死んだその隙に盗った金で多少は裕福に過ごせる。
ああ、しかし彼女の跡を追うべきだったかな。結局一度もできなかったし。
きっと彼女を犯せば、いい声で泣くと思ったのにな。
ああ、しかし彼女は死んだが、それでも僕は生きている。平然と生きている。それでいいじゃないか。最高のハッピーエンドだ。
きっと僕が生きるのは他の人の人生を狂わせるためだろう。だから僕はこれからも、きっと多くの人を狂わせ、壊していくだろう。
何故ならそれが、僕の生きている意味だからだ。

       

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