Neetel Inside ニートノベル
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悪寒都市
暗い部屋

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# 暗い部屋



枕元で携帯が震えた。


その音に起こされて、携帯を手に取る。


サークルのラインにメッセージが投稿されていた。
読まなくてもわかる。どうせ試験勉強で徹夜しているだの、そんな内容だ。

時間の表示は1:37だった。

「こんな時間にライン使わないでよ……」

眠りを邪魔されて不機嫌になっていた私は携帯を電波の入らない設定にする。ディスプレイの光が寝起きの目に痛い。


寝なおそうとして、私は部屋に差し込む小さな光に気がついた。

「…………あっ」

廊下の明かりを消し忘れていたのだ。部屋のドアの下からオレンジ色の光が漏れ入ってきている。
毎晩消して寝るようにしていたが、ついつい点けっぱなしにしてしまうことが今までも何回かあった。

気にならない程度の明かりなので無視して寝てしまおうかとも思ったが「どうせ一度起こされたんだから」と思いなおして、私はベッドから起き上がる。



--パチン。



スイッチを押すと廊下の電気が消えた。シャッターの閉められた家の中は真っ暗になる。
何も見えない闇の中を、私は手探りで進み、ベッドに入った。







目を閉じる。
冷蔵庫の音が低く聞こえる。








*********************************







数日後の夜。


不意に私はベッドの上で目を覚ましていた。

「…………あれ?」

何で目が覚めたのか分からない。気が付いたら目が開いていたという感じだ。

もしかしてまた携帯が震えたのだろうかと思って枕元を探る。
通知を確認する、が、何も無い。
時刻は3:58。自然に目が覚めるには早すぎる。


(外でクラクションでも鳴ったのかな……?)


私は不思議に思って窓の方を見た。




と、



廊下に続くドアから薄明かりが漏れていた。


(あれ、また…………?)



反射的に私はベッドから出る。



その薄明かりを頼りに暗い部屋をあるいていく。
素足に触れるフローリングがいやに冷たい。

四歩。

五歩。


そして、ドアノブに手をかけて少し引いたとき、
私は明かりを見たときに持った違和感の正体に気がついた。





今晩、廊下の電気を消すのはこれで二回目なのだ。





最初はベッドに入った直後。

部屋の電気を落としたときに、廊下の電気が点けっぱなしだと気がついたのだった。
だから寝る前に一度、廊下の電気は消したはずだ。
確実に消した。


(何で?)


少し開かれたドアから明るい光が部屋に入ってくる。


本棚が、クローゼットが、自分の体が黒い影を作る。


私は思わずドアノブから手を放し、後ずさっていた。


寝起きの頭で思考が追いつかない。





そのとき、




立ちつくす私の目の前で、ドアが閉じた。




いや、





廊下から誰かがドアを引いた。







部屋の中が一気に暗くなる。



私は弾かれたようにドアから離れていた。
頭が混乱して、叫び声もでない。ただ心臓だけが狂ったように暴れている。





(何!?えっ、何なの!?)


(そうだ、警察……!!)




私は薄暗がりの中、枕元の携帯に飛びつこうとする。
そうして私がドアに背中を向けた瞬間――――







――パチン。






スイッチの音がして、廊下の明かりが消えた。
部屋が真っ暗になる。






背後でゆっくりとドアの開く音がした。





(了)

       

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