Neetel Inside 文芸新都
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Arkяound 城塞都市の冒険者
10 通行止め

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   10 通行止め

 使い走りの仕事をやってる最中、教わった通りの道を通ろうとしたら目つきの悪い少年に止められた。教団の制服を着ている。「どうしたっていうんだい」と俺が聞くと、頭の中に直接文章が送り込まれてきた。
【オレは〈銀の教団〉第二兵課のパトリックという者で好きな食い物は揚げたてのフライでフライなら中身は何でも良くて好きなんだけど流石にボルトとかたわしとかそういう食えないものが入っていたなら何でも良いってのも例外的にきつくて好きじゃないんだけどしかし世の中文明は発達したものの都市群から悪魔どもを追い出すことすらできずにオレらのような年端のいかない人員まで引っ張ってくるなぞ世知辛い世だと思うぜ。さて本日このオレがここで貴君を制止したのには以下のような理由が存在しておりそれはつまりこの先で悪魔や悪魔憑きども対オレら教団の戦いが繰り広げられているので通すわけにはいかなくてもし通して貴君が怪我したりとか死んだりした場合オレの責任になることは必至なのでなるべく必死にこうして貴君の進路を妨害しようというわけです。至極退屈な仕事なのだけどオレが所持している力はこうして人様の思念に干渉するというやつでといっても貴君もご存知と思うけどオレたち教団の人間はヤバい位の力を持つ強化人間であるからして悪魔や悪魔憑き魔女並びに魔術師そして教団の人間に対してしか危害を加えられないという条件付けをうけているから貴君の個人情報を脳内から引き出すことはできないのだけどその性質上オレは――】
 俺は多数の情報量で気持ちが悪くなってぶっ倒れそうになった。
「要約して言ってくれないかい」
【この先悪魔がいて危ないので入らないで】
 ここを通れないとすごく面倒な遠回りをしなくてはならない。
「俺は一応魔導師なので自分の身は守れると思うんだ。自己責任で通してくれたりしない?」
【無理なぜなら貴君は悪魔とかと交戦する許可証持ってないでしょ】【そういう人を現場から遠ざけとくのもオレらの仕事なもんで専門の訓練受けた人じゃなきゃ無理】
「あとどのくらいで終わる?」
【下手すっと二時間くらいでうまくいけば一時間】
「迷っても仕方ないんでここで待ってるよ」
 暇すぎるのでパトリックと話をすることにした。彼も退屈だったらしく話は弾んだ。無論、思念を細かく区切って送ってもらうようになんども念を押したのは言うまでもない。
【オレの所持している力は悪魔討伐に向かない】【悪魔憑きを倒すのには有効】【この付近の悪魔憑きは既に全員やっつけた】【残りの悪魔を倒す間こっちで見張る仕事を任された】【なぜ悪魔討伐に向かないかと言うと悪魔の思念が読めないから】【ドロドロしてる沼に首突っ込むみたいで吐きそう】【悪魔憑きはラリってる狂戦士だけど本人の意思が残ってる】【オレがその気になったら見つめるだけでそいつの精神を破壊して】【再起不能にできる】
「そりゃ危険すぎるな」
【さっきも言ったけど貴君に対してはこうして】【会話する以上のことはできないから安心してくれていいぜ】
「もし君が悪魔に憑かれたら相当ヤバいんじゃないの?」
【その場合はオレの相棒や上司の方々が瞬時に殺してくれる】【相棒のフレデリカやマーレイ先輩とかが】
「マーレイってマーリン・マーレイ? あの金髪でポニーテールで、いつも『なんとなく』って言う」
【そう。あの人はやる気がないけど結構優秀だよ】【よく分かんない人だけど】【それ言ったら教団のほとんどそうだけどさ】
「燃素ブレードを見せてくれ」
【いいよ】
 背中の冷却装置から引き抜いたそれを手渡す。ずしりと重たい。腰につけた〈タリスマン〉もそうだが、狩人達の武装は生身の人間が扱うには重すぎ、危険すぎるしろものだ。
【そっちの元栓を開けた上でその柄についてるハンドルを思いっきり引っ張ると発火する】【知ってるだろうけどオレたちの左腕以外でそれを使ったら】【腕がなくなっちゃうので注意】
「火力はどう調整するんだい?」
【調整装置はなくて常に最大。オレたちは手加減したら死ぬので】
 そのあとだらだらと会話をしていると、急にパトリックの顔つきが変わった。オレを壁際に立たせ、背を向けて立ちはだかる。左手に燃素サーベルを握り、先程の会話どおりの手順で発火させる。唸り声のような機械音とともに、銀色の刀身が赤熱化した。右手には少年には大きすぎる拳銃を握る。
【悪魔憑きが一体来てる。貴君は魔導師だったよな】【自分の身を守ることだけ考えてくれ】【オレがやつの精神をボロボロにぶっ壊すまでの間だけどな】

       

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