Neetel Inside 文芸新都
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Arkяound 城塞都市の冒険者
18 乱れ火の習得~発現

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   18 乱れ火の習得~発現

 具体的な方法についてフッカーからの説明があった。彼女達呪術師から見ると、魔導師はとても不自然らしい。エーテルの状態を変化させて、過程を無視して現象を再現するという手法がそうらしい。例えばエーテル操作による発火がそれで、マナに敏感な亜大陸の人間は、それを見ただけでげんなりするのだという。
「だけどそレが逆にうまイこと利用できるンだわ、アンタにはこれかラ部分的な呪術を習得してもらうンだけど、たぶンいきなり魔導師のあンたがやロうとしても無理、普通なら」
「普通じゃないやりかたを教えてくれるんだろう?」
「そう、簡易的なやり方。エーテルとマナは元々緩やカに相互干渉し合うノだけド、アンタが魔法で作った不自然ナ火カラは『不自然なマナ』が放出さレてる」
「なるほど、つまりよりエーテルと親和性の強いマナってわけだね。それを利用するならば、魔導師の俺にも『魔法寄りの呪術』を使えるわけだと言いたいんだろ。しかしこれは、冒涜的なテクニックってやつじゃないのかい」
「〈フュル=ガラ〉のヤツらはそう断言すルわね、だけどそレがなンなの? 実際アンタは七万サンをアタシに払ウわけダし」
「さっき交渉の結果五万サンにまけてくれるってことになったろ?」
「アア、そうだッたワね」
 その後フッカーは長ったるい呪文が書かれた紙片を俺に渡し、読み方を教えてくれた。カルムフォルドの古語で、ものすごく発音し辛い。意図的に声を裏返したり破裂音を使用するものが多く、なかなか大変だ。フッカーのお墨付きが出るまで二時間近くかかった。無音詠唱できればラクだが、そちらに翻訳するのにだいぶ時間がかかりそうだ。
 魔法を使用するのには触媒、エーテル、呪文の三つが必要だ。かつては詠唱時間を短くするため二つの言葉を同時に発音する技術や、舌への物理的処置などいろいろな努力が行われていた。今日では生体エーテルの流入を細かく操作することで、呪文の代用とする技術が確立されている。

 俺はまず紙屑に小さな火をつけ、次いでフッカーに習った呪文を苦心して唱え、幸いなことに一発で成功させた。
 燃えるエーテルの火が、一段階大きく爆裂し、灰が飛び散った。
「なるほど、実感できるよ。二発魔法を使うより、一発のあとで補助的にこの呪術を使うことで、容易に追撃を与えることができるわけ……」と言いながら彼女を振り返ると、両手を胸の前で組み合わせて顔を強張らせていた。
「どうかしたのかい?」
「イヤ、ただこの城壁ノ岩から得たマナで防護呪文を使ッていたダけ」
「なんだって? 失敗して爆発でもすると思ってたのか?」
「いや成功して威力ガすごクでかくなッたらヤバいから」
「おいおい、俺もヤバかったんじゃないの?」
「基本杖を前に向けレば前に行くカら大丈夫よ」
「じゃあなぜ防御を展開したわけ?」
「いや破片トか」
「城壁が吹っ飛ぶくらいの爆発が発生する恐れがあったのかよ。最大どのくらいの威力なの?」
「たぶン戦車くラい吹ッ飛ぶ」
「マジかよ、先に言えって。そんなのうかつに人に対して使えないじゃないか」
「大丈夫、暴発とカ言えば相手がバラバラになッても」
「いや魔法使用許可取り下げられるって」
 俺はそんなろくに使えないものに五万払ったことに後悔したが、まあいつか使いどころが来るかもしれない。問題は俺のあとでフッカーからこの技を習う誰かが、自分の足元ごとぶっ飛ばしてしまわないかって不安だ。それが俺の上の階とか、下の階じゃなきゃいいけど……

       

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