Neetel Inside ニートノベル
表紙

俺は旅する勇者サマちゃん!
目が覚めたら草原で

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「・・・・んあ?」
「どーしたのよ、アルグス。あんたにしちゃ寝過ぎじゃない」
「いや、わからん。なにがあったんだろう」
 俺は起き上がった。草原のような場所に座っていた。
 見上げると、帽子をかぶった少女が俺を見下ろしていた。
「えーと、だれだっけ?」
「寝ぼけてんの? ミーナでしょ」
 そうだった。俺は彼女と冒険しているのだった。
「あんた、眠り粉を浴びて寝ちゃったのよ」
「そうだったんだ」
「ほらほら、このままじゃ村にたどり着けないでしょ? しっかりしてよ」
 俺に腕を組んで、ぐいぐい引っ張っていくミーナ。
 俺はよろけてしまう。
「もうちょっとゆっくりいこうぜ。そんなに頑張る意味ねーよ」
「いや、宿につきたいからだし」
 それもそーか。俺は歩くことにした。
「それにしても、魔王エルドランドってどこにいるんだろーな」
「それがわからないから冒険の旅してんでしょーが」
「うん」
「うんじゃないが」
 俺たちは森に出くわした。
 ミーナが茫然としている。
「おかしいなあ。こんなところに森なんてなかったのに」
「魔王の影響かね」
「そうかもしんない。ねえ、アルグス、あんたの魔法でこの森を吹き飛ばしてよ」
「無茶ゆーな。俺は確かに天才魔法使いだけど、そんなことしたら寝覚めが悪いからやらないの」
「けちんぼ」
「なにをーっ!?」
 俺はポカポカミーナを殴った。
「思い知ったか! 俺の力!」
「はいはい」
「はいはいじゃないがーっ!」
 俺はランプ魔法を唱えた。
 森の中におそるおそる。
 二人で入っていく・・・・

「へんな魔物がいたら嫌だなあ」
「誰だっていやでしょうが、そんなの」
「それもそうだなあ」
「あんたは眠気に対して抵抗がなさすぎよ」
「どうした?」
「目をあけなさい」
 俺は頑張って瞼を開けようとした。
 が、半分は閉じてしまう。
 ミーナがため息をついた。
「ほんと。あんたみたいなボンクラが天才とはね」
「うるへー。俺だって好きで神様に愛されたんじゃないやい」
「それって神様からもらった力なの?」
「うん」
 俺は昔、洗礼式で天使から神様の力をほんの少し分けてもらった。
 だから、もう誰にも負けないし、最強の勇者なのだ。
 ・・・・・・たぶん。
「よーし、頑張って魔王倒すぞー」
「おー」
 俺とミーナはピシガシグッグする。
 ちなみにミーナは赤毛の猫毛だ。
「なにみてんのよ」
「すんません」
 俺たちは腐葉土を踏みながら先へ進んだ。

「静かね」
「このあたりは昔、合戦場だったらしいよ」
「どういう意味?」
「お化けとか出るかも」
「まさかあ」
 くすくすとミーナが笑う。
「あんたも案外に子供ね、アルグス」
「うるせー」
 俺はため息をついた。
「亡霊なんて出たら困るぜ。倒し方がわからない」
「シカトしときゃいいのよ」
「そんな問題かなあ」
「そうよきっと。だってそうじゃなきゃ割に合わないじゃない」
「割って?」
「割はわりよ」
「意味わかんねーよ」
 俺たちは先へ進み続けた。

「おっ、宝箱があるぜ」
「どれどれ」
 俺とミーナは宝箱に近づいた。
「・・・・あんたがあけなさいよ」
「なんでやねん。俺はここで見てるさかい」
「だってトラップとかあったらやだし。あんたなら死なないでしょ」
「変な信頼の仕方をしやがって」
「いーから。レアアイテムなら欲しいじゃない」
「ま、それもそーか」
 俺は宝箱を開けてみた。
 すると・・・・
「うわーっ! こ、これは!」
「どうしたのアルグス!?」
「みろよこの剣を」
「・・・? 普通のロングソードじゃないの? 装飾はちょっと派手だけど」
「んばっきゃろう! こいつぁな、伝説の英雄ミッドハルトの武器なんだ。凄いんだぜ!」
「そんな! あのミッドハルトの?」
「おうよ。これさえあれば世界を掌握することも夢じゃねえ」
「そうなんだ・・・あれ? でも見て」
「なんだよ」
 ミーナが剣の刀身を指さした。
「これ・・・・レプリカって書いてある!!!!!」
「ばんなそかな!!!!!!」
 俺はよく剣を見た。
 レプリカって書いてある。
「ちくしょおおおおおおおおおおおおお!!!!」
「落ち着きなさいアルグス! 見苦しいわよ!」
「騙されたぜ・・・・」
「それが宝箱ってこともあるわよ」
「いや意味わかんねーよ」
 とりあえず俺はレプリカ剣を捨てるのももったいないので拾って装備した。

 チリリリーン

 うん。まあ悪くはない。腐っても偽物でも伝説の剣は偉大だ。
「おいミーナ」
「なによ」
「結婚しよーぜ」
「今度ね」
 今度かー。俺はそれで満足した。
 旅は続く。
「そうそう宝箱もないんだな」
「それはそうでしょ。簡単に落ちてたら困るわよ」
「なんで?」
「だって、盗賊とか出るんじゃない?」
「きっといないさ、もう盗賊なんて」
「じゃ、あたしたちはなによ」
「盗賊さ」
「意味わかんない」
「ハハハ」
 俺は後ろを振り返った。
「いまの笑い声で悪霊が去ったはずだ」
「まだ気にしてたの?」
「俺は敵には警戒するタイプだ」
「ただの臆病者じゃない」
「なにをー?」
 俺とミーナがメンチを切り合った瞬間。
 それは怒った。
「な、なんだ?」
 怒り狂ったモンスターが、俺にとびかかって来たのだ!
「くそっ、こうと決まれば反撃だぜ!」
 俺はレプリカ剣を抜き放った。
「双撃衝!」
 俺の斬撃が魔物を一体倒した。が、まだいる。
「凍てつけ塵芥、迸れ鮮血! フォーリンフォールンブリザード!!!!」

 しゅわわわわわー・・・・
 ミーナが唱えた冷血魔法が魔物を氷漬けにした。
 が、敵はいなくならない。
「ちょっと! この森、なんだか敵が多いわよ!」
「迷いの森ってやつかもしれねえ」
「そんなのんびり構えてないで倒してよ!」
「まかせろ! はああああああああ」
 俺は剣を振りかぶって、振り下ろした。
「微塵馬砕!!!!!!!!」
 どっかあああああん!!!!!
 決まった。俺の攻撃はその衝撃で氷漬けのモンスターを粉々に吹っ飛ばした。
「俺はさすがに剣の天才!」
「言ってろ! ひとりで!」
 ミーナに冷たくされて俺はひっそりとしょんぼり。
 あーあ。

「だがまだ俺の攻撃はターン継続中だぜ! ふっは、やあ、とう! おおおおおお! 暴風蓮華極!!!!!!!!」
 俺の剣技が敵を粉砕する。
「はああああああああああ!!!! 待ち針は細く、ミシンはカラクリ! 嘘と欺瞞の世界に鉄槌を! マリステッド・ニードリア!!!!!!」
 じゅばばばばばばば
 ミーナが唱えた針魔法で魔物が粉々になった。
「やったぜ!」
「油断しないで! まだ来るわよ!」
 俺たちは剣を構え直した。
 おそるべき闇と対峙する羽目になるとも知らずに・・・・・



       

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Neetsha