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学者が助走をつけて殴るレベルの「古事記」
第三章「三兄弟編-スサノオの場合」‐その1

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 岩戸隠れの伝説でアマテラス周辺がてんやわんやだったその頃、スサノオは、そんな事は露知らず、神々の世界を追放されるに辺り色々と準備をしていました。
 これから、神々の世界を追い出されて地上の世界に降り立ちます。しかし、地上の世界には地上の世界の神々がいて、その神々達に何の手土産も無しなのはどうなのかな、と考えたのです。あとついでに、自分も腹が減ってました。
 そこでスサノオは、穀物と食物の神である大気都比売神(おほげつひめのかみ 以下:オホゲツヒメ)に頼んで、食物を出してもらう事にしました。
「とりあえず何でもいいから渡せるような食べ物出してよ」
「ああ^~もう食物が出るう~~」
 オホゲツヒメは、尻の穴とか鼻の穴とかから、やたら美味しそうな食べ物を沢山出しました。どう見てもマジキチです、本当にありがとうございました。
「やったぜ。」
「ふざけんな!(声も気持ちも迫真)」
 ブチ切れたスサノオが、オホゲツヒメを斬り捨てました。哀れ、オホゲツヒメは死んでしまいました。当たり前だよなぁ?

 そんなこんなしている間に、いよいよスサノオが神々の世界を追放される時が来ます。結局何も食べられなかったスサノオは、空腹を抱えながら、あてもなく歩き続けます。
「焦るんじゃない。俺は腹が減っているだけなんだ」
 そんな事を思いながら、ふらふらと地上の世界を歩くスサノオ。すると、川の流れに乗って、ご飯を食べる箸が流れていくのを見つけました。
「箸が流れて来るって事は、この川の流れに逆らって歩けば、いずれは人里に辿り着くんじゃね?」
 珍しく頭の冴えを見せたスサノオが、箸の流れて来た方向を辿って歩き続けます。すると、予想は正しく、そこには一件の民家がありました。
 そこに住んでいたのは、足名椎命(あしなづち 以下:アシナヅチ)と手名椎命(てなづち 以下:テナヅチ)と呼ばれる神様夫婦です。スサノオは、とりあえず何か食べさせてもらおうと思いましたが、どうにもこの夫婦の顔色が優れないように見えます。
「どうしたの? 何か悲しい事でもあったの?」
 スサノオは夫婦に問い掛けます。すると夫婦は、スサノオに語り始めました。
「実は、うちには八人の娘がいたのじゃが、毎年この季節になると姿を現す八俣遠呂智(やまたのおろち 以下:ヤマタノオロチ)に、一人を残してみんな生贄として食べられてしまったんじゃ。その一人も、今年の生贄に差し出さないといかん」
「どげんかせんといかん!」
 普段は暴虐武人のジャイアンなスサノオですが、ここでは劇場版になりました。すると、奥の間から、ススス、と、今年生贄になる予定だった娘が姿を現しました。この娘、名を櫛名田比売(くしなだひめ 以下:クシナダヒメ)と言いました。
 クシナダヒメの姿を見たスサノオは驚きました。超タイプの娘だったからです。
「カワイイヤッター! ヤマタノオロチ倒してあげるから結婚してくんろ! あと何か食わして!」
「だめよ、今年に生贄の稽古があるの」
「今年は休め。一口では言えん、とにかく俺を信じろ」
「無理よそんなの、知り合ってまだ五分と経ってないのよ?」
 正論を言われてぐぅの音も出ないスサノオでした。そこで、まずは自己紹介をする事にします。
「俺はスサノオ! 須佐之男命! アマテラスの弟だ!」
「えっ、アマテラス様の弟? 神々の世界の超お偉いさんだ! 結婚しますよーするする」
 こうして、元祖・玉の輿が成立しました。
 かと思えば、クシナダヒメは、スサノオの力で、頭に差すクシの姿に変えられてしまいました。そして、スサノオは、そのクシを頭に差し、アシナヅチとテナヅチに指示を出します。
「まず、垣根を作りなさい。そして、でっかい酒槽に、強いお酒をたっぷり入れたのを八つ造りなさい」
「自分からはやっていかないのか……(困惑)」
「娘がクシに変えられたら本末転倒なんですが、それは……」
「こまけぇこたぁいいんだよ」
 こうしてアシナヅチとテナヅチは、垣根を作り、強いお酒をたっぷり入れた酒槽を八つ用意して、えっちらおっちらと運びます。スサノオは「ウェーイ、チンタラやってんじゃねーぞー」とかほざきながら高みの見物です。まさに下衆の極み。

 全ての準備が整い、遂にヤマタノオロチを迎え撃つ日が来ました。そして、ヤマタノオロチが現れます。ヤマタノオロチの正体は、首が八つある大きな大きな蛇でした。
 ヤマタノオロチは、大きな酒槽にお酒がたっぷりと注がれているのを見つけました。
「あ、お酒だー!」
「何これ、飲んでいいの?」
「八つあるって事は、八つ首がある俺達の為に用意されたのじゃね?」
「お前天才じゃね? INT20000くらいあるんじゃね?」
 各々言いながら、グビグビと酒を飲み始めるヤマタノオロチ。しかし考えてみれば、首は八つあっても、体は一つです。つまり、肝臓も一つです。ウコンも飲んでません。にもかかわらず、八つの口で同時に、それも相当強いお酒を、しかもグビグビと飲むのです。
 あっという間に、ヤマタノオロチは酔い潰れてしまいました。そして、バタンと倒れて、グースカと眠り始めてしまいました。
 この一連の間、スサノオは一切何もしません。小屋に隠れてコロコロコミックを読んでいました。ちなみに筆者はボンボン→サンデー→チャンピオン→少年エースのエリートコース派です。
「スサノオ様、ヤマタノオロチが眠りました!」
「あ、寝た? おkおk。んじゃ、おっぱじめっかー」
 スサノオが、十拳剣を手に取り、小屋を出て、ヤマタノオロチと対峙します。対峙といっても、ヤマタノオロチは絶賛爆睡中です。
 スサノオは、爆睡してるヤマタノオロチを十拳剣でフルボッコにしました。アシナヅチとテナヅチも後ろで「ねながらきずついてる(笑)」「こんなん絶対草生えますやん」と傍観していました。なお、ドラクエ3のボスキャラ「やまたのおろち」にラリホーが普通にバシバシ通るのは、これに由来する。(民明書房刊「僕はキングヒドラ4回行って全部ゴールドストーンでした(全ギレ)」より抜粋)
 そして遂に、スサノオは、ヤマタノオロチをやっつけました。そして最後に、ヤマタノオロチの尻尾を、十拳剣でスパン! と斬り落とします。
 すると、何という事でしょう。斬り落とされたヤマタノオロチの尻尾が、みるみる内に一振りの剣に変わっていくではありませんか!
 この剣こそが、後に草那芸之大刀(くさなぎのつるぎ)と呼ばれる剣です。
「わぁっ、綺麗な剣だなー! これはアマテラスお姉ちゃんへのお土産にしよう!」
 そう言って、シスコンのスサノオは、草那芸之大刀をパクりました。
 かくして、アシナヅチとテナヅチ夫婦の生活に平和が戻りました。しかし、娘であるクシナダヒメはクシのままでした。

       

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