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学者が助走をつけて殴るレベルの「古事記」
第六章「天孫降臨編-下衆の極み男神。」-その1 ←新しい夏。更新の夏。

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 天孫降臨の儀により、無事出雲へ降り立ったニニギは、うんと背伸びをしました。
「いやはや、聞きしに勝る豊かさだなぁ、出雲は」
「全くで御座いますね、ニニギ様」
 突然後ろから聞こえて来た声に、ニニギは「ひぇっ……!」と驚きます。気が付けば、ニニギの背後には、四の神様が立っていました。
「い、いつからそこにいたの!?」
「最初からいたんですが、それは……」
 四の神様の一人、天児屋命(あめのこやねのみこと 以下:アメノコヤネ)が、溜息をつきながら呟きます。よく見れば、彼らはニニギのよく知る神々でした。布刀玉命(ふとたまのみこと 以下:フト)、伊斯許理度売命(いしこりどめのみこと :イシコリ)、玉祖命(たまのおやのみこと 以下:タマノオヤ)という神々です。
「最初からいたんなら、話くらいしてよ!」
「偉い人に『ここではサルタヒコとアメノウズメにピント当てたいからお前ら黙ってろ』って言われたんです」
「ニニギ様だって、そんな事言いつつもすっげぇ大荷物だって気付いてます?」
「えっ? ……あっ、本当だ! 三種の神器持ってる!」
 気が付けば、ニニギの手には、三種の神器(草那芸之大刀・八尺勾玉・八咫鏡)が握られていました。まぁとにかくそういう事でした。
「ふーん……まぁいいや。んじゃ、こっからは個別行動って事で。それぞれ、テキトーに子孫でも作ってよ」
「アキバに慣れた奴らの暗黙の了解じゃあるまいし、アバウト過ぎるでしょ……」
 ブツブツ言いながら、四の神様は方々に散って行きます。ちなみに、誰とは言いませんが、一部の神様の出番はこれだけでした。

──テイク2。

 天孫降臨の儀により、三種の神器を手に無事出雲へ降り立ったニニギは、うんと背伸びをしました。
「いやはや、聞きしに勝る豊かさだなぁ、出雲は」
 初めて見る出雲の風景に惚れぼれとした溜息をつきながら、ニニギは出雲の大地をアテもなく歩き続けます。
 歩き続けてしばらくして、とても見晴しが良さそうな岬を見つけました。そしてニニギは、そこに、一人の神様の影があるのを見つけます。
「まだ出雲の事よくわかってないし、あの神様に聞いてみるか」
 そう考えたニニギは、岬まで歩く事にします。そして、岬に辿り着き、そこに立っていた神様に話しかけました。
「こんにちは。ここはどこですか?」
「あら? 貴方は、天上世界の神様ですか?」
「えっ? いやぁ……わかりますか?」
「ふふ。突然『ここはどこですか?』だなんて、この日向(現代の貨幣価値で換算すると宮崎・鹿児島である)に生きる神様の質問ではありませんから」
 その声色からして、どうやらその神様は女神のようです。
「ここは、笠沙の岬(かささのみなと)です。ここから見える出雲の景色は、とても綺麗なんですよ」
 そう言って、その女神様は振り向きます。それはそれは麗しい、この世のものとは思えぬ美貌の女神様でした。
「\カ ワ イ イ/  結婚して下さい!」
 ニニギは、神々界で由緒正しく伝わる「ソッコープロポーズ」の奥義を使います。これまで、この奥義で結婚出来なかった女神様はいません。
 しかし、その奥義の長い歴史は、遂にここで終止符を打つ事になります。
「そ、そんな……私一人では決められない事なので、お父様に相談します。どうかそれまでお待ち下さい」
「なん……だと……?」
 これまで防がれる事のなかった奥義を防がれて、ニニギは愕然とします。しかし、割と呑気に待つ事を快諾しました。そもそも、この女神もこれはこれで満更でもないところからして、五十歩百歩です。
「なら、せめて名前だけでも教えて下さい!」
「私の名前は、木花。木花之佐久夜毘売(このはなさくやびめ 以下:サクヤビメ)と言います」
 いかにも美人の、女神らしい名前です。ニニギは、すっかりこのサクヤビメに惚れ込んでしまいます。
「私の名は、ニニギです! 天上世界より降臨した、アマテラスの孫神です!」
「承知しました。それでは、お父様に相談して参りますね」
 そしてサクヤビメは、父親の許しを得る為に、一旦我が家へ帰宅しました。

       

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