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学者が助走をつけて殴るレベルの「古事記」
豆知識‐その4

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豆知識その四「誓約は八百長だった?」

 アマテラスとスサノオの誓約により、スサノオの身の潔白が証明されましたが、実際これには諸説あります。
 スサノオの言い分は、「私が清らかな心を持っているから、私の持ち物からは優しい穏やかな心を持つ女が産まれたのです。ですから、この誓約は、私が正しいのです」というものです。
 それに対しアマテラスも、「この十拳剣は貴方の物です。ですから、私の口から産まれた子でも、貴方の持ち物から産まれた以上は、貴方の子供です」と認める発言をしています。
 ところが……ところが、です。
 スサノオは、アマテラスの勾玉を口に含んで産んだ男の神のうち一つに、「正勝吾勝勝速日天忍穂耳命(まさかつあかつかちはやひあめのおしほみみのみこと)」という、デタラメに長い名前をつけています。
 この名前の意味ですが、最初の「正勝吾勝」は、「まさに勝った! 私が勝ったのだ!」という意味があるのです。
 つまり、「女の子が産まれたから私の勝ちだ!」と主張していたスサノオは、その実、自分の行動から産まれたその男の子にも「まさに勝った! 私が勝ったのだ!」という名前をつけている事になりますね。
 もしかしたら、スサノオは、この結果が逆だったとしても、どうにかこうにかして自分の勝ちである事を主張していたのかもしれません。
 そしてお姉ちゃんであるアマテラスも、今回の話でもこの後の話でもわかる通り、弟であるスサノオにかなーり甘いです。なんだかんだ言い包められ、スサノオの勝ちを認めていた事でしょう。

 余談ではありますが、この一幕は、昨今で問題になっている「男尊女卑」に対する、昔の人の考え方も織り込まれていると解説する専門家の方もいらっしゃいます。
 男と女というものの差別的表現を避ける為に、史実では女の子だから勝利したという表現をしますが、男の子の名前にも「正勝吾勝」と入れた、という解釈です。
 もしかしたら、この一幕には、「男でも女でも、どっちが勝つというのはないんだよ。お互いは平等なんだよ」という思いが込められているのかもしれませんね。

       

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