Neetel Inside 文芸新都
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クソ小説アンソロジー
無情の国

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ある国の、ある政治家が議会で失言をしてしまいました。

他の議員との口論の際に、ほんの心の隙を突かれた様に、自分の大切な物について愚弄されました。
耐えられず、その場限りの衝動的な感情に頼り、いわゆる「口が滑って」しまいました。

後日、彼は
「大変な事をした。
国を動かす立場である私が言ったのだから、相手だけでなく国民をも傷つけてしまった!」
と深くふかく反省し、三日三晩寝込んでしまいました。
二度と同じようなことを言わないよう誓い、本人に心底謝って謝罪会見もしました。
しかし、世間は彼の謝罪など信じませんでした。

「謝罪で済むと思うか」
「一度失言したような奴は再々するぞ」
「君の公約は信用できない」
「反省する気持ちがあるなら始めからしない」
「政治家やめろ」

それらの言葉に、彼は反論しました。

―今までに私は一度だって国民の皆様を裏切った事は無いじゃないか。
同じ過ちは二度としないと、深く反省し心に誓ったんだ。自分の、国への想いは変わらない。
肝に銘じて、今後は更に気を引き締めるから、国の事で働かせてくれ!      ―と。

それに対して声は、無表情に





「政治家辞めろ」






彼が気付かない内に、いつしか人は「言葉」だけでは簡単に信じてくれない時代となっていました。
「一度だって、やり直しをさせてくれないと言うのか・・・・・・?
 いちどだって・・・・・
 一度も反省を許してはくれないのか・・・・?」
やがて世論は広まり、あらぬ誤解まで挙げられて社会問題へと発展しました。

それでも、

それでも彼は己の信念を、国を守る正義感の意地で辞職は決して考えませんでした。
彼は、自身の主張を今度こそ正すために、再び会見に臨みました。
その言葉を聞いた国民の反応は




「政治家辞めろ」




変わりませんでした。

数日後、彼は殺されました。


       

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