エピローグ Part4
誰もいない部屋の中、俺は独り、深いため息を吐いた。
終わった──、のだ。
いや、終わってしまった、か。
自分の時とは違う展開で何度かパニックになりかけたが、結果的には、同様の結末に落ち着いた。
──ずっと、こんな事を繰り返しているのだろうか。
そして、俺は、これからどうなるのだろうか。
これでゲームはおしまい?
もう、自由にして良いのか?
本当に?
それとも──。
立ち上がり、戸棚からウイスキーのボトルとグラスを取り出す。普段はあまり飲まない方だが、何だか飲みたい気分だ。
グラスに焦げ茶の液体を注ぐ。『何だか麦茶みたいだな』と思って、少し懐かしくなる。
ストレートのまま一気に飲み干すと、喉が、胃が焼けるように熱い。
──こんなになっても自分は生きているのだな、と思う。
この五年間、ハッピーエンドを求めて奔走してきた。
誰にも悟られないように。
それが正解だったのかはわからない。
誰かに助けを求めても良かったかも知れないし、あるいはキシダ一家を保護しても良かったのかも知れない。ある意味『二週目のプレイ』だったとはいえ、マルチエンディングで攻略法も調べられないのなら、闇雲に動くわけにもいかない。誤ったフラグを立ててしまったら、リセットは出来ないのだ。
しかし、慎重になり過ぎてしまった部分も否めない。
あの時点で、自分が『173』に襲われる事は無いと知っていたら……。
一分一秒が戦いだった。
それこそ、うっかりまばたきをしている間に死んでしまうような緊張感の連続だった。
そうだ、俺は必死にやった。
決して悪い結末じゃないさ。
決して……。
──やめよう。
こんなのは無駄な感傷だ。
このゲームに三週目は無い。
俺のエンディングは──、これ、なのだ。
引き出しを開ける。
そこには懐かしい、家族写真が入っている。
俺はそれをシュレッダーにかけ、顎に手をやった。
まだ慣れない。
しかし、慣れなくてはいけない。
自分だって、少しくらいは──、
幸せに──。
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