Neetel Inside ニートノベル
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妖怪高校の日常
プロローグ

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ここは都会から離れた田舎の中の田舎町、八日村
この春、この地に引っ越してきた高校生山田間人こと、カントは新しい、とは言いがたい新居の洗面所で癖毛を直していた
今日から新しい高校に通いはじめるのだが、制服も存在しないような田舎の高校である
おそらく授業なども都会のものと遅れているような場所なのではないかと考える
どうしてこんなことになってしまったのか
思い返せば中学生活最後の冬の終わり、宝くじを当てた両親が「前から田舎で暮らしたかった」とか言って、この土地を購入したのがはじまりだ
カントは賛成も反対もしなかったものの、まさかここまで田舎に引っ越すことになるとは思ってもいなかった

「よし、いくか」

試験も受けずには入れたその高校へ向かい、自転車を走らせるカント
彼はまだ知らない。その高校は、人間のための高校ではないということを……



「じゃあ、ここが今日からカント君の通うクラスだから、しっかり覚えておいてね」

「はい」

職員は数人しかおらず、そのうちの一人猫山先生がカントの担任らしい
黒い艶がかったショートヘアの美人教師だ
内心、カントはラッキーだと思いながら木造の校舎を歩き教室のドアの前に立つ
クラスメイトはいったいどんな人間なのか
誕生日プレゼントをわくわくしながら空ける小学生のような気持ちで教室のドアを開く
ざわめく教室には白い髪の女子や黒い髪の男子、金髪の女子……そして



緑色の肌をした、うねうねと髪を動かす怪しい男がいた



「ってちょっと待って! 緑はおかしいでしょ!!!」

「おぉ、すばらしい第一声」

白いロングポニーテールの女子がカントのツッコミに拍手を送る

「緑? あぁ、俺のことか。緑色で何が悪いんだ?」

緑色の肌をした男子がカントをにらむ

「いや、普通緑色じゃねーだろ」

今度はそれを聞いた黒い髪の男子が話しに入り込む

「転校生さんが困ってますよ。そろそろ自己紹介とか、始めたほうがいいんじゃないですか?」

収拾がつかなくなるのを恐れたのか、金髪の女子が全員を止める。それにしてもトリプルテールなんて珍しい髪型だ

「はーい、ありがと、イズナちゃん。やっぱり学級委員だけはあるね」

ぱんぱんと手を叩きながら猫山先生が教室に入ってくる
そして、カントの名前を黒板に書くとキリッとした表情で振り返る

「じゃあ、まずは自己紹介! ユキノちゃんからお願いね!」

そういうと、一番廊下側に座る白いロングポニーテールの女子が立ち上がった

「白井 雪乃。16歳。種族は雪女、好きなものは夏! 嫌いなものは寒い場所! 以上!」

「え、雪女?」

混乱しているカントを無視してそのとなりの黒い髪の男子が口を開く

「次は俺か……菓子屋 骸。ガシャドクロだ。以上」

「あ、ちなみにムクロの家の駄菓子屋は町で唯一お菓子売ってるところだから覚えておけよ」

「黙れハゲ!」

緑の人が一言つけたし、それに対してムクロが切れる
あぁ、あの緑の人はそういうキャラなのか、なんて思っていると

「あ、ちなみに俺は緑川 禿夫。河童だ! あとカツラの下はハゲではなく皿だ!」

そのまま緑の人が自己紹介をした
どうやらあの動く髪の毛はカツラらしい

「私(わたくし)は九尾 いずな。九尾の狐です」

金髪の女子が立ち上がった瞬間、大きな胸がぷるんとゆれた
クラスの一部から「チッ」という舌打ちが聞こえたのはきっと気のせいである

「それと私のとなりに座っている子は厠 花子さん。トイレの花子さんですよ」

「……」

黒い髪の毛にパッツン。まさに噂の小学生トイレの花子さんである
しかしどう見ても高校生には見えない

「ボクは大神 一狼。狼男です」

あまり目立っていなかった白い髪の男子が自己紹介を終える
と、その直後天井から黒いポニーテールの女子が逆さの状態で現れる

「拙者は服部 三日月。見ての通りクノイチでござる」

真っ黒の布で素顔を隠されていて、正直覚えられそうにない

「……とりあえず、みんな変な種族名を言っていた気がするんだけど」

カントがようやくしゃべる

「あぁ、そのことね。ここは妖怪のための学校だから」

その質問に猫山先生が笑顔で答えた

「妖怪!?」

こうして、カントの妖怪高校生活がスタートしたのであった

       

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