Neetel Inside ニートノベル
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ここはシンセイの国、シャーケイ。トキマの国と比べ晴れの日が多いのが特徴である。
シンセイの国は、西側に人間が、大陸最大の河川、ナガエ川を挟んで東側に魚人が多く住み、魔人は東西の地域に人間、魚人と共に暮らしている。
「さあよってくアル、見ていくアル、今しか買えないものがアルヨ!」市場では多くの商人がひしめきあっているが、通り行く人々は一人の魔人に注目してしまう。顔は人そのものだが、肌は紫色で一目で人間ではないことがわかり、独特の訛りに甲高い声、体は山のように大きく、とてもではないが喧嘩を売ればただでは返してもらえなくなるであろう。しかし顔立ちはふくよかで人が良さそうであり、頭にはターバンを巻いている。
「すいません、通ります」ナルゲンは人ごみをかき分けて、商品の前に出た。売っているものは様々で、この地域では珍しいバナナやパインなどの果実、高価な宝石が埋め込まれているネックレスや指輪などの装飾品。誰が書いたのかわからない詩集や研究書、剣や槍、盾といった装備品など、様々なものが置いてあった。その中から、魔法の研究書をひとつとっては開き、読んで戻す。またひとつとっては読んでまた戻す。
「いい本は見つかったアルか?」主人の一言にはっとなってナルゲンは周りを見渡す。さっきまでは自分の真上にあったはずの太陽はすでに傾き初め、商店を囲んでいた群衆は姿を消していた。
「あの……すんません」夢中になっていたとはいえ、さすがに申し訳なかった。置いてあった本は七冊、うちの四冊はかなり古いものであったため軽く読み流し、二冊は最近のものであったため気になるところだけを読み、一冊はちょうど今読み初めたところだった。
ナルゲンの謝罪に対し、主人は笑顔で「いいアル、気にすることないヨ」と返した。
主人は続ける。
「気になるならこの本売るヨ。値段は十ケイン。どうある?」
「十ケインですか……」本としては高すぎるというのがナルゲンの本音であった。
ちなみに十ケインがあれば、一週間、贅沢をしなければ三食の飯には困らない。関係ないが女であれば15ケインで買える。
悩んでいると主人はこうきりだした
「お金困ってるならいい考えアルヨ、ちょっと体張るケド」
「いや、それは……」体を張る仕事……何をされるかわかったもんじゃない。
「大丈夫、変な仕事じゃないヨ。ただ、しばらくの間護衛してもらいたいだけダヨ」
「あぁ、そういうことですか」

店の主人はヒーヘンという名前で、聞くところによると、東にある人魚の集落、トン村へ商売をするつもりだったらしいが、その途中にある道で、魚人に襲われ、護衛と少しの食糧を失いながら このシャーケイの町に戻ってきたらしい。
「とりあえず、トン村で商売をして、こっちに戻ってくるまでが俺の仕事ですね」
「そうある、引き受けてくれるアルか?」
「まぁ、給料がいいんでやりますよ」
「なら、契約成立アル」
このときの条件は契約金五十ケイン、任務達成でさらに五十ケインの合計百ケインプラスアルファ。職業無職、肩書研究家のナルゲンが断る理由はなかった。
「なら、早速装備を整えて出発アル」
こうして、二人は東へ向かって出発するのであった。

       

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