Neetel Inside ニートノベル
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「遅すぎる」ポレスは部屋のなかをうろうろしていた。椅子に座れば貧乏揺すり、とにかく落ち着きがなかった。近くにいたユニも同じだった。
「もしかしてナルゲンさん……」
「それ以上言うんじゃない!」
ナルゲンが熊退治に行くと言って今日で5日目、普段は、長くても3日で帰ってくる男が今回は帰ってこない。回りの人たちは、「ナルゲンに限ってそんなことは」と口を揃えるも、ポレスとユニは気が気じゃなかった。

日が落ち、夜を迎える。ポレスはもう我慢の限界だった。
「明日調査隊をだす」その言葉と同時に玄関の扉がノックされる。や否やポレスとユニは玄関に急いで向かっていった。ポレスは鍵を明け、扉を開く、そこにたっていたのは……
無傷のナルゲンであった。若干血生臭く、服は雨と血でびしょびしょである。
「良かった!無事に帰ってきてくれて。お風呂、沸いてるわよ!はやくはやく!」
ユニはナルゲンの手を引っ張り、風呂場にに連れていく。その間ナルゲンはユニにたいして「靴をちゃんと脱がせろ」だの、「ゆっくりさせてくれ」だの、「風呂場までついてくるな」だの不平不満を垂れている。

「では、熊退治の成功、ナルゲンの帰還を祝って、乾杯!」ポレスの乾杯の音頭と共に3つのグラスが音をならす。テーブルにはほどほどの酒と、3人の食事にしてはすこしばかり多すぎる量の食べ物が並べられていた。
「これ全部ユニが作ったのか?」
食事にがっつきながら、ナルゲンは聞く。
「ええ、そうよ。」ユニは答えるもナルゲンはうまい、うまい、といいながら食事に夢中である。
「喜んでくれて嬉しいわ」
「さすがはわしの娘じゃ」ポレスは図体、顔に似合わず、品よく、肉をナイフで一口サイズに切るとそれを口に入れた。

ほとんどの皿が空になり、ユニは後片付けを始める、酔ったナルゲンは武勇伝をポレスに聞かせていた。
「まぁ危なかったですよ、下手してたら今回死んでたかも」「そんなに危険だったのか?」
熊は手強かったらしい、ナルゲンの話の内容はほとんどが苦労話である。
「まぁそれに今回は雨が降っていたんで」
「向こうでは雨が降っていたのか?」その時、ナルゲンはしまったと言わんばかりの顔をしたと思ったら、
「いや、あはは」とごまかす。
「ほら、足場が悪くなるじゃないですか?それで……」急にナルゲンの歯切れが悪くなる。ポレスは怪訝そうにナルゲンを見つめる。恐らく雨が降ったのは本当のことであろう。服は確かに雨と血で濡れていた。熊の討伐が嘘というのもあり得ない。ナルゲンはそう言うせこいことをしない人物であることをポレスは知っていたからだ。なら何を隠している?ナルゲンは思い出したかのように喋り出す
「ほら、雨だと薬の効果が落ちちゃって、それにちょっと熊の肉が食べたくて……」
「ならば解体してこっちに持ってくれば良かったであろう」「あの、いや駄目なんですよ、たまたま袋を……証拠用の1つしかもって来てなかったんです、調味料を忘れたから保存もきかないですし」
「熊の肉を調味料なしで食ったのか?」
「そ、そうですね」
「調査隊を呼べば良かったであろう。」
「いや、もう火葬しちゃったんで……」
「火葬だと?」そう、口にしたとたんナルゲンはしまったとばかりに青ざめる。
「あの、ほら!熊の死肉にハイエナが集まるじゃないですか。それでまた変なのよんだら不味いじゃないですか」
「ここら辺にハイエナがいたなんて初耳だぞ?」
「え?あぁ念のためですよ、やだなぁ」
ナルゲンの言動や態度は怪しいものがあるが、嘘はついていないようである。まぁ明日になれば何かわかるだろう。

       

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