Neetel Inside ニートノベル
表紙

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「何から話せばいいですか?」
ナルゲンは困ったようにポレスにきく。
「できれば全部だ。どのような経緯で魔法を使えるようになったか、どうすれば魔法を使えるようになるのか、最後に、なぜお前は村をでて放浪の旅をしていたのかだ。」
ここはポレスの家、現在ユニは庁舎で治療を受けている。代わりにユニの席に気まずそうに座っているのがボッツである。
「あのぅ、僕は関係ないんじゃ……」
「仕事サボって狩りに行ってた奴が何をほざく!」
「ヒィ!すいません」
「……が今回は娘の件で許してやろう」フゥっとボッツの安堵のため息もつかのま、ポレスの眼光に気を張り直す。
「とりあえず、これまでのいきさつを話します」というとナルゲンは自信について語り出した。ポレスの菓子を盗んだ時に見つけた魔法の資料に心を引かれたこと、戦争が終わり、自身も、農業をしながらも、趣味の農薬開発と共に魔法の研究をしたこと
「ポレスさんの論文には、魔法を使うのには、そのために必要なエネルギーが必要と書いてありましたね?」
「そうじゃが?」ポレスの考えはこうだ、人、または異人には魔力というものがあってその魔力を消費して魔法を使う。数字に置き換えると、自分の魔力が2だとするそして火の玉を出すのに魔力が3必要である。その場合は自分の魔力より、火の玉を出す魔力(必要な魔力)のほうが大きいため魔法を使うことができない。元々人間は異人に比べ魔力が圧倒的に少ない。だから、異人は魔法をバンバン使えるし、人間は全く使えない。というのがポレスの意見。というよりは現在の魔法学の主論となっている。そのため、魔力のある魔物、異人を食して魔力を得ようとする試みを試したものもいる。
「あれ、嘘です」ポレスは何も言葉に出来なかった。自分やその回りが長年信じていたことが否定されたからだ。
「ポレスさんの今の気持ち、100年前の科学者と同じ気持ちだと思いますよ」ナルゲンはこう続ける。
「まず前提として俺は異人、魔物といった魔力を持つもの、あるいは可能性のあるものは食していません。まぁ現時点での話ですけど」
「次に俺は人間であること、祖先に異人がいないこと、回りに俺以外魔法に興味を示していた人物がいなかったことここ数年、魔物や異人との交流、接触がなかったことがあげられます。これにより、周辺環境から魔力を得たという仮定は消えます。」
ナルゲンは魔物や異人を見たのは(親玉は人でカウント、異人は鳥人の死体のみ)今回が初めてである。
「次に俺が魔法を使えるようになった経緯なんですけど……」ポレスは生唾を飲み込み真剣に聞いている。ボッツは気持ち良さそうに眠っていた。
「なんとなく雷落とせるかな?て思ったらホントに落とせたことがきっかけです」なんだと!というポレスの大声にナルゲンは耳を抑え、ボッツは椅子から転げ落ちる。
「そんなに興奮しないでください。そのあともなんとなく火の玉出せるかなぁとか、風おこしできそうだなとか、氷の槍作れそうとか、なんとなくの感覚でした」
「あ!それ今日の僕の感覚見たいですね!なんとなくこのタイミングだったら当てられそうだなぁ的な!」嬉しそうにボッツが言う。
「貴様はなんとなくで人質を、わしの娘の近くにいたあいつを射ったのか?」ヒィ!っとボッツは怯える。
「まぁいい続けろ」ポレスに促されナルゲンは話を続ける
「そのあと色々試しました。その結果わかったことがあります」
「それはなんだ?」
「それは……魔法は天候の力を借りて、一つのエネルギー体に凝縮し、発生させるということ。ある程度であれば強さを変えられるということです」さらにナルゲンは続ける
「さっき天候の力を借りて魔法を使うと言いましたね?まずはそこから説明します」ナルゲンの行った実験はこうだ、暑い、そしてくもひとつない快晴の日に涼もうと思って氷の魔法を使おうと思ったが不発、なら炎の魔法ならばと使うと
「好きなところから人一人は呑み込める火柱を出すことができました」恐ろしさにポレスはいきをのんだ。
「逆もまたしかりで、吹雪の日に暖まろうと思っても火の玉は出せないその代わり」
「好きなところに氷柱を落とせるようになったんじゃろ?」
「……まぁそんな感じです。」ポレスはまとめる「つまりは、魔法はその日の天候によって使えるか、使えないかが変わる。それを感じとるセンスによって魔法を使うことができる。ということか」
「概ねあってはいます、しかし魔法はその人の才能やセンスではなく、ある程度の訓練を積めば誰でも使うことができるというのが俺の仮定です」
「何故そう思う?」
「いや、そっちの方が夢があるかなって……」ある意味ナルゲンらしかった。
「あと、さっき天候の力を借り て魔法を使うっていったじゃないですか?あれには例外があるんですよ」口をはさんで来そうなポレスをなだめ、ナルゲンは続ける
「魔法はその日の天候だけでなく、次の日の天候の影響も受けるんです」ナルゲンはさらに続ける。
「というのも、熊を見つけ、討伐したのは3日目の夕方、その日は晴れだったんですが、その日の夜から雨が降るのと、それが次の日まで続いたんです。そのときは行けるかなぁなんて思ったんですけどダメでした」
「だから火の玉の代わりに氷の槍を?」
「はい、それで、結局炎の魔法が使える5目まで待ちました。その日も朝から降ってたんで、出せるのには出せるんですけど火力が弱くて……で結局帰りが遅くなったというわけです」
「次の日の天候にも気を配らなければいけないのか」
「そうです。ちなみに、次の日の天気は技術を持った天気予報士、または自分で予報しないといけないのがネックなんです。あくまで、これこれこういうわけで、ああだから、明日は晴れ!と当てないと行けません」
「なんとなくじゃダメなのか?」
「一回試したことがあります。まずは、雨の日に自分で天気予報をしつつ、間違った答えを出す。雨なのに、晴れ!って結果は、炎の魔法が使えなくなると同時に、雷の魔法の威力が落ちました。次に、そこら辺の子供に天気予報をしてもらいました。明日天気になあれってやつですその日は晴れ、次の日も晴れと出ていましたそのあと魔法を使ってもどれも効果が変わりません。そのあと自分で天気予報をして雨と予報。すると雷の魔法の威力が上がりました」 ポレスは再びまとめる
「つまり、魔法はその日の天候だけでなく次の日の天候の影響も受ける、しかしそれを予報しなければならない、理論に基づいて予報をしなければならない。外れた場合ペナルティーを負う」
「更に……」ここであわててポレスは止める
「待ってくれ、流石に頭がこんがらがる」ナルゲンは少し考え込み、次は出したい魔法の強弱の調整について喋りだした。真剣にポレスが聞くなか、ボッツは安らかな寝息をたてていた。

       

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