Neetel Inside ニートノベル
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「ねぇ、きいてんの?あんたはめんどくさいやつだよ」
  裸に正座という屈辱的な格好で黒崎は説教を受けている。一応名誉のためにいっておくが一切、黒崎には非はない。では、ここに至った経緯を見てもらおう。

「マリコでーす、よろしくぅ」
「よろしくぅ!」
  やたらハイテンションなギャルに黒崎もつられる。容姿はまずまず、髪は金髪ロング。童貞にとっては天敵だが、黒崎にとっては良い相手だった。
「俊さんだっけ?若いね!いくつ?」
「えーっ、ちょっと恥ずかしいな。当ててみてよ」
「うーん?24くらいかな」
「あー!それくらい」
「えっ!?あってたチョー嬉しい」
  一見和やか雰囲気ではある。しかしここからやく20分ずっと会話のみで終わってしまう。ちなみに今回のプレイ時間は40分。半分消えたことになる。
  さすがにそろそろまずいと思った黒崎はマリコに声をかける。
「マリちゃん、そろそろいいかな?」
その一言でマリコの機嫌が急に悪くなる。が、マリコは「まぁ、いいか、俊くん格好いいし」といって俊のズボンをおろし、息子を……手でしごき始めた。
「あの……マリちゃん。俺しゃぶって欲しいな」
「やだ、だってマリは今日口痛いもん」
「じゃあ、おっぱい触らせてよ」
「えっ?無理無理、あたしおっぱいさわられても感じないし」
  その間ずっと息子をしごかれるも完全に萎えてしまいちっとも気持ちよくない。それを察したのかマリコはしごくのをやめる。
「うーん、今日は駄目みたいだね」
「いや、ちょっと燃えないというか……ちょっとだけキスしようよ」
  その一言にマリコはキレた。黒崎を正座させ、説教タイム。そして最初の場面につながる訳である。

「あのぉ、今日フリーでついてくれたマリコって子なんですけど。ちょっと接客態度がですね……」
  プレイ後に黒崎はすぐ、受付のボーイに文句を言った。ボーイの方はというとなにかを察したような、それでいて予想していたかのように対応をはじめる。
「はぁ、マリコさんが……やっぱりね」
「え?やっぱりってどういうことですか?」
  ボーイは黒崎に説明する。もともとマリコは他の風俗店からこの店に移ったこと。最初のうちは真面目に働いてはいたが、最近になって客の苦情が来るようになったこと。それを本人に伝え指導したところ、涙を流しながら謝りそこからまた真面目に働くようになったこと。
「気分の浮き沈みが激しい子なんです。普段は良い子なのに……」
若干同情しつつも、黒崎は言い返す。
「でも、それ僕には全然関係ないですよね」
「……」
  しばしの沈黙。お互いが押し黙る。先に口を開いたのはボーイだった。
「本日は大変申し訳ありませんでした、今回についてはこちらでお願いします」
  渡されたのは嬢の使命料金無料券だった。
「あの、これなんですか?」
「今回のお詫びの印です。また、遊びに来る際は今回みたいなフリーではなく、ぜひ女の子を指名してみてください。そうすれば今回のようなことはないと思います」
「いや、そういうことじゃないんだけど……」
  その時、プレイを終えた男が隣で受付をしてもらっている。そして、最後にもらったのが黒崎と一緒の無料券だった。
  再び流れる不穏な空気。黒崎の胸に怒りがこみ上げる。
「あっ、その……すみません間違えました。実は……」
「いや、もう良いです。ありがとうございました」

  黒崎は店を出たあと、先程もらった無料券をビリビリに破き捨てどぶ川にばらまいた。そしてスマホを取りだし連絡用アプリに文字を打ち込む。内容はこんな感じだ「今日カラオケおごるからみんな来なよ。場所は池袋北口!鬼頭は絶対に来いよ(笑)」
  数人の返信を受け取り、スマホをポッケにしまう。興奮冷めやらぬなか、北口に向かって歩みを進めた。

       

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