Neetel Inside 文芸新都
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捲土重来の土地
捲土重来の二人

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その日はいつもの起床時刻の11時になるはずの目覚まし音ではなく、ラッタからの着信に起こされた。
時間を見るとまだ9時。俺にとってはまだ早朝だ。
「なんすかぁこんな早くに。いつも12時出勤じゃん。まだ寝させてよ。」
「バカヤロウ、今日はパチ屋のイベント日だろうがよ。ここんとこ負けてるんだから取り戻さねーとやべーべ。」

あ、そうだった。負け続きでボクサーレベルの減量に成功した財布をお互い見せ合って、ラッタと俺はパチ屋に復讐を誓ったことを思い出した。
低価貸し玉の台からゆらゆらと上り、最後に勝負台で一気に一花咲かす戦法、通称「陽炎」。
俺達が5時間かけて考えた作戦だ。必勝の風が俺の背中を布団から引きはがした。
よしいくぞ、今日もいくぞ!いけるぞ!




そして俺達は今、百円玉が数枚だけ入ってる財布を持って家に帰っている途中だ。
「あの時帰っていれば・・・」「確率的におかしいだろ!遠隔操作されてる!」「どっかにいい派遣バイトねーかな」
こんなことを話しながら帰っている途中だ。
今が残りのひたすらに長い人生の途中であることを考えると死にたくなった。

この時の俺たちは趣味も、夢も、恋人も、楽しいことも、夢も、何もなかったから。




       

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