「もう!アレンったら何にもわかってない!」
「申し訳ありません……」
「普通レディーに花を贈るときは花束って相場が決まってるのよ」
「勉強になりました」
渋そうに頭を掻くアレンに、文句を垂れながらも嬉しそうに一輪のアネモネが咲いている植木鉢を抱えている
しばらく歩くと屋敷が見える。アニスの住む家だ。門まで近づくと衛兵二人が出迎えてくれた。
「疲れちゃった、門を開けて!」
アニスそういうと、門は開き、衛兵は直立不動の姿勢となり二人を見送った。
「アニス様、荷物を持ちます」
アレンはアニスに言うが、当のアニスは聞く気にならないようだ。
「いいの、これは部屋に飾るから」
仕方なく歩き続ける。玄関につくと再び衛兵二人が出迎えてくれた。
彼らは玄関を開け、深く頭を垂れた。 屋敷に入ると、アニスは自分の部屋へアレンは屋敷の主人に、つまりアニスの父に帰りの報告に行った。
「アレンよ、娘の相手をご苦労。」
アニスの父が労いの言葉をかける
「いえ、私が受けた恩に比べればそんな……」
「その話は別に良いと言ったであろう。まあ良い実はお前に大事な話がある」
大事な話という言葉にアレンは固くなる
「アレン、そんなに固くなるな。まぁ、大切な話というのはな、娘のことだ」
「アニス様のことですか……」
「ああ、単刀直入に言おう。アレン、お前に娘をやろうと思う」
無理です、と口を挟む前にアニスの父は続ける。
「私はお前の知力、剣技そして貴族としての立ち振舞いや教養を高く評価している」
「しかし、私は!」
「お前の家の借金は私が何とかしよう。なぁ、頼むアレン。一応考えておいてくれ」
アレンは一旦部屋に戻るが落ち着かず、そのまま外に飛び出してしまった。一人で喫茶店に入り、気休めに茶を飲んでいると、聞き慣れた声がするので振り替える。そこには、クリーム色の髪にボブヘアーの女性が立っていた。
「まぁ、アレン様。一人で珍しい」
「やぁ、クリス。」
「何かお悩みですか?わたくしでよろしければお話を伺いますわ」
好意に甘えて先程のことと今の自分の現状、考えを話した。
「まぁ、アニス様と結婚……」
「まだ決まった訳じゃない。ただ、考えてくれと言われたんだ」
「わたくし、アレン様がアニス様のものになるのはいやですわ」
しばらくクリスと話すが結局問題は解決しないまま屋敷に戻ることになってしまった。