Neetel Inside ニートノベル
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  好きになった人に初めて買ってもらったプレゼント。不器用で優柔不断だが、忙しい両親に変わって自分に色々なことを教えてくれた。勉強、茶の飲み方や食事のマナー、そして人を愛するということ。最初は兄ができたようだった。がみがみうるさいが、自分を守ってくれる 。彼も自分を妹のように、扱ってくれた。ただ、もう妹扱いは嫌だ。一人の女として見てほしい。彼からの贈り物、たった一輪の赤いアネモネ。何でも知ってると思っていた彼は乙女心は知らなかった。次はあたしが教える番。はかない夢、はかない恋が実りますように。少女は祈った。

「アニス様、アレンです。申し訳ありませんが部屋を出てください」
アレンが呼んでいる。嬉しさが込み上げる。勢いよく扉を開ける。そこに立っていたのは令状を自分に見せつけるアレンと、教会の神父、そしてそれを守る兵士と悲しそうに自分を見る父と母であった。
「アレン、この人達は?」
アレンは答えない。神父は自分を指差しながら言う。
「告発者の証言により、神父、アリアスはアニス=アニモーアを魔女として処分する」
   魔女?自分が?言葉が出ない。アレンを見る。あたしは違う!目で訴える。しかし、アレンから出た言葉は残酷なものであった。
「私、アレン=オーレンは神父、アリアスの命により、アニス=アニモーアを魔女であるとしこの手で処分することを、命ぜられた」冷たい言葉だった。視線は鋭く、今逃げようものなら殺される。本能でそれがわかる。
「アニス=アニモーア、処刑場まで来て貰うぞ」先程まで愛していた男に拘束され、処刑場というところにつれていかれる。
「規則ゆえ、ご両親にも来てもらいます」
    そんな声が聞こえたような気がした。

「アニス=アニモーア、再度聞こう、お前は魔女か?」
答える力はなかった。自分は魔女ではない。何度も何度も、何時間か前にも同じ質問をされ、そのたびに違うと答えた。大勢の人の目の前で服を脱がされ裸にされようが、鞭を打たれようが。両親はすでに神父によって殺された。「あなたは魔女ではない」と言った母は見せしめに焼かれ、自分が否認を続けた結果父は心臓を貫かれた。その場にはアレンもいた。ただ、アレンはその場で見ていただけであった。それが悲しくて、辛くて、憎くて。恨んでも恨みきれなかった。
「答えないのか?ならば今、お前が魔女であるということを私が証明してやる」
   神父の号令で、アレンが何かを持ってくるのがわかる。棺桶だった。恐らくその中に入るのであろう。
「よく聞け、証明の方法はこうだ、今からお前にはこの中に入って貰う。そしてそこから火をつける、もし遺体が残っていなければお前は魔女確定だ」おかしな話だった。自分が魔女でなければ焼け死んでしまうではないか。
「では、アニス=アニモーア何か言いたければ言うといい」
「……あたしが魔女なら……」
これを言ったら証明の前に殺されるかも知れない。でも、どうしてもいってやりたかった。
「お前達は悪魔だ!」


   少女は焼かれた。火をつけたのはアレンであった。棺桶が音を遮断したのか、少女が棺桶から消えたのか、それとも叫ぶ気力もなかったのか、断末魔は聞こえなかった。  

       

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