Neetel Inside ニートノベル
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「お話があります。アレン様」アレンを呼び止めたのは教会付きの女性兵士ミレアだった。女性兵士にしては、素朴ではあるが美しくそれのおかげでここに配置されたと聞く。彼女には冗談は通じない。それくらい真面目人間だ。
「なんでしょうかミレアさん」
「はい、まずはこれを受け取ってください」
渡されたのは袋一杯に入った金貨であった。
「この中にはあなたの家の借金を完済するだけの金が入っています」
   冗談ではないだろう
「で?教会は俺に何を頼むんだ。」
「察しがいいですね、では言いましょう。アニスお嬢様を魔女として告発してほしいのです」
もし、この相手が彼女でなかったら、聞き返していたであろう。
「拒否すれば……」
どうなる?といいかけたところで後ろから人の気配がした。
「残念ですがここであなたの人生は終わるだけでなく、あなたの一族を魔女の一味として告発します」
「……落ちたな、教会も」
「申し訳ないですが選択権はありません。大丈夫です。あなたの今後は私たちが保証します」
正直、この選択は人としてはやっちゃいけない選択だ。だが……
「で?俺はどうすればいいんだ?」
    これで言い逃れも後戻りもできなくなった。

「クレア様。確かにアレン様にお伝えしてきました」
教会の一角でミレアはクレアに報告する。
「そう、ありがとうこれで明日には邪魔者が消えるわね」
(この人は自分がやろうとしてることの重大さがわかっているのだろうか?)
    まるで他人事のように、興味を示さない女に疑問を抱く。なぜ彼女はこんなことを?思わず聞いてしまう。
「失礼ですがクレア様、なぜアニス様を魔女に仕立てようと?」
    帰ってきたのは驚くべき答えだった。
「あの小娘にアレン様を取られるのが気にくわなかったからよ」
    なんとそんなことで、たった一人の女の嫉妬のためだけに無実の犠牲が出されるなんて。
「それに一家ごと滅ぼしてあげたほうがよろこぶ人は多いと思うわよ。あそこのいえ無駄に財産溜め込んでるから」
    貴族の足の引っ張りあい、どっちに転んでも得をする教会、本来であればこういう時こそ、正しい判断をするのが聖職者の仕事であるが、生憎この教会には聖職者はいなかった。いるのは利権に飢えた豚のみ。
「それとミレア」
「はい!なんでしょうか?」
「この話は誰にもしゃべらずそのまま墓場に持っていってちょうだいね。たとえ他の町にいったとしても」
「……はい、仰せのままに」

ミレアはクレアと別れたあとすぐ、教会の中にある自分の部屋に戻った。あと少しだけここを勤めたら辞めよう。そう思いペンと紙をとり、母親に向け手紙を書き始める。

       

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