Neetel Inside ニートノベル
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PSYCHIC ~守るべきモノ~
第一章

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人工30億人。
日本は過疎地がなくなるくらい人工が増えた。
いや、日本ではなく、一つの帝国になった。
クル=セルドという男が日本を支配し、神聖フレイム帝国にしたのだ。
帝国と言えどかなり平和だ。
そして、神聖フレイム帝国では世界で唯一超能力を研究している。
街の人の半分は超能力者なのだ。

ここは旧埼玉。

俺は佐藤兼続。
二次元が大好きな大学生だ。
大学をサボり気味になっていて実は単位を数個落としてしまっている。
これはやばいと思い、大学に必死に通っている。
そのため、眠い。
そしてこの7月上旬の暑さがその倦怠感をプラスしている。
神様にまで裏切られている。
薄い坊主頭に汗が垂れる。
細い目が特徴的でどことなく愛嬌的な顔は疲れを示していた。
「大学なんかやめようかなぁ」
ゲーセンを通り過ぎたところで高校生と思われる女の子を見るからに悪そうな男が囲んでいた。

「おい、俺らとあそばねぇか?」
「おごるからよ」
「良いゲーセンしってるんだ!一緒に行こうぜ」

「いい歳こいてナンパかよ。勘弁してくれ」
俺はスルーして通り過ぎた。
その瞬間。
熱を感じた。
すぐ横を赤い一本線が過ぎた。
そう、能力者だ。

「調子にのるんじゃねぇぞ嬢ちゃん」
「怪我したくねぇならおとなしくついてこいや」

発火能力を持つ男が二人、筋力増加能力を持つ男が一人だ。
発火能力者の一人が足下を爆発させて飛んだ。

「いまさら謝っても遅いからな!さぁ、ひしゃげろ!」

掌から無数の火球を弾けさせる。
その火球一つ一つが大爆発を起こす。
しかし…。

「さっきから、小バエがうっさいわねぇ」

絡まれていた人…。
金色のふた結びが特徴的な水兵服の女の子は無事だった。
火球全てを瓦礫で受け止めていたのだ。
磁気を操って寄せ集めた簡易シールドだ。
「なっ!!!!」
その瓦礫をハンマー投げのように回しながら吹き飛ばす。
「よくも俺の仲間を!」
ふた結びの女は新たに現れた男に電撃を浴びせ、動けなくする。
「アレが…無敵の電撃使い…念度8の発電能力(サンダー)…秋野文香」
念度とは、能力の強さのことだ。
0から人間にありうる最大の能力規模の10まであり、10は事実上存在せず、9もたった一人だけ、そして8でさえ5人だ。
その中の一人。
最強の電撃使い。
男の情けない悲鳴が立て続けに響く。
もう彼女は容赦しないようだ。
「た、たすけてくれぇ!」
仕方ない。
仲裁に入るとするか。
「待った」
恐怖で失禁している男とまさに今電気ショックを浴びせようとしている女の間に入った。
「どいて、そいつに電撃が当たらないじゃない」
彼女は腕と髪と足に電撃を纏う。
それを見て俺は男に待避をさせた。
「おい、今のうちに逃げろ。これに懲りたら女をナンパするのはやめろよ」
「ありがとう!恩に着るぜ!」
男共は逃げていった。
それを見て彼女は、
「なによ、急に出てきて偉そうに…。これでも手加減してあげてるのよ?」
「手加減の問題じゃねぇよ。ナンパされたくらいで能力を闇雲に放つなって事だよ」
「本当に、アンタはあああああああっ!!!」

ふた結びの髪が針のように尖る。
そして、雷をも超える稲妻の槍がぶつけられる。
しかし、兼続は腕を前に突き出しただけだった。
それだけで、電撃は食われた。
「は?」
「ったく、神様もこんな小娘にやっかいな力を授けたものだな」
兼続はそういって歩き、彼女の肩に触れる。
「なぜ…」
周囲からは違和感を感じない普通の光景に見えるが彼女にとっては異常であった。
兼続は殺人レベルの電撃を消し、肩に触れて返したのだ。
能力を吸って吐き出した。
コピー能力だ。
そんな能力などあるはずがない。
能力一覧辞典にはまったく載っていない。
そもそも彼からはまったく能力者としてのオーラが見えない。
文香はそのまま呆然とたっていた。

兼続は公園の周りを歩いていた。
「平和だな、なにかバトル漫画のように変なことはおきないかね」
「おめぇも大概危ない思考をもっているなぁ!ちょっくんよぉ!」
後ろから調子の良い声で浴衣金髪ツンツンヘアーのいかにも不審な男が肩をたたいた。
「お、勇機か」
闇崎勇機。
彼は高校からの友人である。
彼はこれから親戚の家に行くそうだ
俺もこのまま家に帰ってネットサーフィンをするつもりだ。
この瞬間までは完全に平和な日常そのものだった。

自分の家にさしかかる。
外見は大きいとも小さいともいえない普通のアパートだ。
中身はボロボロでとにかく部屋をしきつめましたと言った感じの家で、住み心地ははっきりいって良くない。
風呂とトイレは一緒でリビングと呼べる部屋はとても狭い。
洗濯機があるだけまだましと言えるほど苦しい家なのだ。
突然、空から何かが落ちてきた。
俺はとっさに受け止めた。
柔らかくて良い匂いがする。
しかし、その良い匂いは怪しい薬めいたものを漂わせていた。
とにかく柔らかい。
見た目は凄く白い。
「ううん…」
それは…人間で女の子だった。
赤い目、長いとも短いともいえないさらさらした銀髪、日本人離れした白い肌。
異常なほどに細く、もろそうな身体。
もはや健康だとしても不健康と呼べるその容姿と落ちてくるという不可解な現象で頭が混乱した。
しかし今はそんなことは問題ではない。
服を着ていないことが自分の精神衛生上危ないと感じた。
「うわああああryっ!」
見つかると危ないので家に避難した。
自分の部屋に行くまでに誰も見つからなかったのは奇跡と言えよう。
「おい!いろいろ話したいことはあるが先に服を着ろよ!」
そう言われても少女は無言で首をかしげるだけだ。
「いやだから服だよふく!」
このままではいけない。とりあえず自分の持っているTシャツを着せる。
サイズなど合うはずもなくぶかぶかだ。
スカートだけは即座に購入してきた。
近くなので5分もかからなかったがサイズが適当なのと店員の目線が痛かった。
彼女は服を気にしつつこちらを見ている。
なんなのだよ…こいつは…。
「で、君はダレなんだよ…」
「わたしのことか?G-Nと呼んでいいよ」
ドコの国の言葉なんだいったい。
日本語だが。日本語だが名前からして偽名じゃねーか!
「じゃあ、なぜ、空から落ちてきた」
この質問が俺の人生を変えた。
「逃げてきたんだよ、空を」
どういうことだってばよ。
まさかこんな露出狂が偽名を名乗る被害妄想癖だとは思っていなかった。
とりあえず110番をする準備をしなくては。
最近の警察は3分でここにつくらしいからな。
とりあえず可愛いし質問攻めを続けることにする。
「で、逃げるって誰からよ」
「魔法研究所の魔道士」
いや、魔道士って…ここは天下の科学都市…。
そんなことがあるわけない。
いくら妄想でもそこまで行くなよ…。
「なぜ逃げたんだよ?」
「逃げないと殺されるから」
「で、その証拠は?」
「今は出せない」
あきれた。これはトンデモ電波女じゃないか。
超能力者の番組でカメラがあると緊張して使えないとか言ってたインチキを思い出した。
超能力者は今でこそ珍しくないが魔法というのはありえない。
全てが科学で解明されたこの現代だ。
魑魅魍魎や悪魔天使などがうろつくレーダーやカメラの隙間など1nmも存在しないだろう。
それほどに機械文明ばかりが成長している。
突然、腹の鳴る音がなった。
彼女の腹からだ。
「…夕飯にするか…おまえも食っとけ。そんな姿じゃ外に出られないだろう」
とりあえず適当に作った豚汁を食べた。
細い身体をしているのに全部食ったよ。
魔法とやらは以外と侮れないみたいだ。
しかし食べている途中も違和感をさせていた。
まず、箸は使えず、スプーンも握り方がおかしい。
先の質問からして言葉に関する教養はなっているのに。
なぜ食事に関する教養はまったくゼロなのか。
まるで、食事をしたことがないようにも見えた。
「あの…そこの男…」
研究機関…。案外妄想などではないのかもしれない。
「そこの男…」
あまりにもうるさいので一応答える。
「そこの男じゃない、佐藤兼続だ」
「佐藤…」
「これ…」
彼女の下に臭いのある水たまりができていた。

     


     

「まったく、今日はついていないな、いろいろな意味で」
見事に下が黄色に染まったTシャツを洗濯機にぶち込んで新しいTシャツを着せた。
大惨事になりかねないのでちゃんとトイレだけは教えておいた。
俺は雑巾でその汚れた床を拭く。
臭いと戦いながら数分、床は違和感がないレベルに綺麗になった。
彼女は喜びながらテレビを見ていた。
テレビをみたのは初めてではないらしく、普通に操作もしていた(ボタンの押し間違いはあったが)
ますます不気味になるばかりだ。
風呂がわく合図がなる。
あとは風呂に入って寝るだけだ。
風呂は彼女を先に入らせる。
自力では脱げないらしく、危ない部分から目をそらしながらも脱がせた。
この生活は理性が危ない。
風呂も初めてなのか何をするのかよくわからないみたいでとりあえず浴槽にだけ入らせる。
最近の風呂は浴槽に入るだけでも身体の汚れが落ちるから安心ではあったが数年前の風呂だったら大変だっただろう。
彼女は上手く風呂に入ってるか、そう考えていたとき。

激しい爆音でその穏やかな思考が遮られた。
風呂から煙が上がる。
各所が裂かれ、血まみれになった彼女が飛んできた。
「な、なんだよこれは…G-N!!!!」
何者かが風呂ごと吹き飛ばしたのだ。
「逃げて…」
部屋の天井や壁や床に魔方陣が光る。
光が鳴る。
衝撃波で彼女は再び八つ裂きにされる。
ボテッ、と彼女の腕が自分の足下に落ちる。
その様子を見ておもわず吐いた。
彼女は途切れ途切れの息をしながら言葉を唱え、腕をつなげた。
今更驚いてはいられない。
煙が晴れて襲撃者が見えてきた。
その姿は細身の男で上半身は裸、下半身は鎖と布の塊という異装であった。
なによりも細い目と濃い髭と頬についた傷が気になる。
鎖はほとんどが金製だ。
その違和感は先ほどにも感じていた。
G-Nに会ったときと同じ。
そう、これが魔道士だ。
ガリガリと何かを引きずる。
剣。
しかしとにかく大きい。
長身の男は190cmくらいだがその剣はその1.5倍くらいある。
「さあ、そこの出来損ないを渡して貰おうか青年よ」
彼女は倒れて震えたままだ。
ここでとる選択肢はただ一つ。
「渡すわけ…ね-ぞ」
「この子は絶対、俺が守る!!!!!!!」
新たなる戦いが、今始まる。

     


       

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