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サンタクロースはいるんだ
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サンタクロースはいるんだ
Yes, Virginia, There is a Santa Claus

翻訳:大久保ゆう
http://www.alz.jp/221b/aozora/there_is_a_santa_claus.html

編集:さねゆき


ニューヨーク・サン新聞
西暦1897年9月21日 社説欄

 本紙は、以下に掲載される投書に対してただちにお答え申し上げるとともに、このようにまっすぐな方が読者におられることを、心から嬉しく思います。

「こんにちは、しんぶんのおじさん。わたしは8さいのおんなのこです。じつは、ともだちがサンタクロースはいないというのです。パパは、わからないことがあったら、サンしんぶん、というので、ほんとうのことをおしえてください。サンタクロースはいるのですか?
ヴァージニア・オハンロン」

 ヴァージニア、それは友だちの方が間違っているよ。きっと、何でも疑いたがる年ごろで、見たことがないと、信じられないんだね。自分のわかることだけが、全部だと思ってるんだろう。でもね、ヴァージニア、大人でも子どもでも、何もかもわかるわけじゃない。この広い宇宙では、人間って小さな小さなものなんだ。ぼくたちには、この世界のほんの少しのことしかわからないし、本当のことを全部わかろうとするには、まだまだなんだ。

 実はね、ヴァージニア、サンタクロースはいるんだ。愛とか思いやりとかいたわりとかがちゃんとあるように、サンタクロースもちゃんといるし、そういうものが溢れているおかげで、ひとの毎日は、癒されたり潤ったりする。もしサンタクロースがいなかったら、ものすごく寂しい世の中になってしまう。ヴァージニアみたいな子がこの世にいなくなるくらい、ものすごく寂しいことなんだ。サンタクロースがいないってことは、子どもの素直な心も、物語を楽しむ心も、ひとを好きって思う心も、みんなないってことになる。見たり聞いたりさわったりすることでしか楽しめなくなるし、世界をいつもあたたかくしてくれる子どもたちの輝きも、消えてなくなってしまうだろう。

 サンタクロースがいないだなんていうのなら、妖精もいないっていうんだろうね。だったら、パパに頼んで、クリスマスイブの日、煙突という煙突を全部見はらせて、サンタクロースを待ち伏せしてごらん。サンタクロースが入ってくるのが見られずに終わっても、なんにも変わらない。そもそもサンタクロースはひとの目に見えないものだし、それでサンタクロースがいないってことにもならない。本当の本当っていうのは、子どもにも大人にも、だれの目にも見えないものなんだよ。妖精が原っぱで遊んでいるところ、だれか見たひとっているかな? うん、いないよね、でもそれで、ないって決まるわけじゃない。世界でだれも見たことがない、見ることができない不思議なことって、だれにもはっきりとはつかめないんだ。

 あのガラガラっておもちゃ、中をあければ、玉が音を鳴らしてるってことがわかるよね。でも、目に見えない世界には、どんなに力があっても、どれだけたばになってかかっても、こじあけることのできないカーテンみたいなものがかかってるんだ。素直な心や、よりそう気もちや、だれかを好きになる心だけが、そのカーテンを開けることができて、その向こうのすごく綺麗で素敵なものを、見たり描いたりすることができる。嘘じゃないかって? ヴァージニア、いつでもどこでも、これだけは本当のことなんだよ。

 サンタクロースはいない? いいや、今このときも、これからもずっといる。ヴァージニア、何千年、いやあと十万年たっても、サンタクロースはいつまでも、子どもたちの心を、わくわくさせてくれると思うよ。


※ その後、ヴァージニアはニューヨークの学校の先生になって、47年間子どもたちを教えつづけたそうです。

       

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