Neetel Inside 文芸新都
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第三話


レジの奥で、震えて泣いている彼女に、ガングロ男は言う。
『俺はさぁー。チカちゃんを困らしたくは、ほんとないんだぜ?ほんとマジで。マジで。デートしてくれるって約束貰えたら、ほんとに帰るからさー。ダメー??』
恐怖と困惑の表情の彼女は、座り込み泣き始めてしまった。
その泣き声を聞いたドクロ男は、イラつきながら、ガムを吐き捨てる。
吐き捨てられたガムは、落ちているジャムパンにくっついた。
『もー。マジで、だりぃなー!ほんとマジでさぁー…。なぁ、ここじゃ話なんねぇし。そいつ、こっから連れ出したら、いいんじゃね??』
ドクロ男の誘拐拉致宣言に、ガングロ男は。
(お前、賢い!それ、いただき!)
みたいな感じで、指を鳴らして、ウインクをする。
そして、ガングロ男はレジ横の出入り口に手をかけた。

(このままでは、彼女が攫われる!)
本当に危機感を感じ。
(なんとかしないと!男達を殴ってでも止めないと!!)
そう思う僕の足は震えていて、立っていることすら、やっとだった。
(情けない!動け、動けよ!僕の足!!)
自分の勇気のなさに、歯ぎしりし涙が出そうになった。

『いやっ!離してよっ!?』
叫ぶ彼女の声。
『別に虐めたりなんかしないってー。大丈夫大丈夫ー』
言いながら、下卑た笑みを浮かべるガングロ男。
涙が溢れた彼女と目が合った。
怖くて、無意識に目を逸らしてしまった。
もう一度彼女を見る。
(助けて…)
声にならない彼女の声が聞こえる。
ギュッと奥歯を噛み締めて。そして、その後、大きく息を吸って吐いた。
(アンパンマンは…、僕だっ!彼女を助けるのは、僕だっ!!)
心の中で僕は叫んだ。
僕は走り出した。本当のアンパンマンみたいに、愛と勇気を持って。
レジ内から彼女を引っ張り、連れ去ろうとするガングロ男の前に、僕は飛び出した。
『やめろっ!!彼女を離せっ!』
僕は仁王立ちして、叫んだ。


第三話。
助けてっ!アンパンマンー!!
終わり。第四話へ続く。

       

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