Neetel Inside 文芸新都
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第五話


僕は、陸に揚げられた魚のように息ができず、床の上で身もだえするしか出来なかった。
その時。
涙が溢れ、ぼんやりとした僕の視界に。
何かをひらつかせた茶色て大くて人影が見えた。
『アンパンマン』
声にならない声で僕は言った。

涙を拭う。
コンビニの入口に、茶色く日焼けした筋肉質の男が立っている。
開いたドアからの風で、腰に巻いた作業服が揺れていた。
『お前ら、何してんだよ。そいつ、離せよ』
低く大きな声、でも穏やかに彼は言った。
皆、その男が事態を好転してくれる事を期待した。
『なんだよ?!またかよ!ほんとうぜぇな!!』
ドクロ男が殴りかかる。
作業服の男は避けようともせず、ドクロ男の拳を片手で受け止める。
その手を外そうと、もがくドクロ男が何度か彼を蹴りつける。
ドクロ男の蹴りにびくともせずに、彼はドクロ男のアゴを殴りつけた。
ドクロ男はその場に倒れた。

道端に落ちてるゴミを、ひょいと避けるかのように、ドクロ男の横を彼は歩く。
僕の横も同様にして通り抜け。
そして、彼は。ガングロ男と彼女の前に立った。
ガングロ男は青ざめて固まったまま、彼を見ている。
腕を掴まれたままの彼女が、泣きながら言った。
『助けて…。あっくん…』
『おぅ』
小さく答えて、彼はガングロ男の腕を捻りあげる。
ガングロ男は悲鳴をあげた。
悲鳴をあげるガングロ男の口を、もう片方の手で塞ぎ。
彼はドスを効かせて、こう言った。
『次、俺の女に手ぇ出したら、どうなるか…、わかるよな?』
そう言った後、彼はガングロ男を離してやった。
『わかったなら。さっさと床で寝てるそいつを連れて、どっかにいけよ』
そう言われて。
ガングロ男はよろめきながらも、ドクロ男のを連れて、コンビニから出て行った。

かくして。
真打ちアンパンマンの登場により、勧善懲悪劇の幕が降りて。
コンビニから、良かった良かったと歓声が起こる。
『無事で良かった』
小さく彼の声がする。
涙を流しながらも、笑う彼女を見た。
(良かった)
僕もそう微かに言った後、意識が薄れていった。


第五話。
それいけ!僕らのアンパンマン!!
終わり。次回最終回。

       

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